ハート・ロッカー 85点
アメリカでは公開当初4館ほどでの上映だったが、口コミで話題が広がり全米に公開が拡大されたという本作品。
見事アカデミー賞作品賞を受賞した。(他監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響編集賞、音響調整賞 計6冠)
2004年のイラク・バグダッド郊外における、爆発物処理班の任務を通し、中でも主人公ウィリアム・ジェームズ一等軍曹(ジェレミー・レナー)の戦争中毒になった一兵士の心理を描いた作品だ。
本作のアカデミー賞本命対抗馬として見られていた、アバターのような超ハリウッド映画とは反対に、目に見える起承転結の物語ではない。
主人公が任期を終えるまでの戦地での出来事を淡々と綴っていく人間ドラマである。
そのため激しいドンパチが繰り広げられるわけでもなく、アメリカ礼賛によるアメリカ側がピンチを救うことができるわけでもない。
死を恐れず、そしてルールも守らずに突き進む主人公に、我々は従来のヒーロー像を重ねようとするが、
ラスト直前にして、その期待は裏切られるだろう。
その出来事に、おそらく我々は落胆せざるを得ないが、それこそがこの映画が”今”アカデミー賞を受賞した最大の理由であるだろう。
しかし、誰が敵か味方かも分からない(ともすれば全員怪しいとさえ思える)戦地での爆発物を処理するシーンを始め、いつどこで攻撃されるか分からない緊迫感は、
よくわからない線をつけて青い巨体となって、鳥なのか恐竜なのか分からない生物に乗りながら、文明の利器である戦闘機と戦うシーンよりも、現実的で、はるかに手に汗を握ることは間違いない。
とにかく主人公が大量の爆弾を解除するシーンは圧巻だから観ていただきたい!
アカデミー賞受賞作品というだけで、さも面白いんでしょう?と受け身で観賞する人にとっては
少々退屈で、せいぜい「スリリングだった」程度の映画にしかならないかもしれないが、
この映画が何を伝えようとしているのか?と考えて映画を楽しめる人にとっては、大変面白い一本だ。
しかし、「スリリングだった」と思っただけの人でも、もしもまた「スリリングな映画を見たいな」と思うのであれば、
それは主人公の心理と重なり合っているということに気付いたら、
よりこの映画が面白いものとなるだろう。
