不動産を用いた節税について (後編) | 趣味でやる投資 (株式/不動産/etc.)

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前回築古物件を用いた節税手法の概要を書きましたが、ポイントをまとめると、



(1) 総合課税所得税率と長期譲渡所得税率の差(最大35%)の裁定取引

(2) 土地価値を建物価値に契約書上移転して6年以内に減価償却する

(3) 修繕費を経費化しながらバリューアップを図り売却益に転嫁する

 

という所だと思います。





それでは具体例を出していこうと思います。目的が節税となると毎年確実に遂行する必要があり滅多に出ないような条件では継続が難しいため、再現性のある条件ということで極限まで安さを追求しない程度の条件とします。


かなりざっくりとした計算なので厳密に考えれば突っ込み所が多々ありますが、戦略を考える上では十分なので下記のように設定します(要点は赤字で強調します)。


○所得・住民税率:55%

○エリア:都内周辺部

○物件価格1,000万円、現金購入

耐用年数超え木造、土地価額50%・建物価額50%

4年償却6年後に売却

○賃料は購入価格の8%、定期借家契約

○空室期間、広告費は無視

○修繕は購入時100万円、売却時100万円、全て一括償却

○売却価格は1,200万円

○その他経費→固定資産税5万、購入時経費6%、売却時経費4%


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次に1年毎の収支です。利益やキャッシュが入ってくる方をプラス、出ていく方をマイナスと設定します。


[1年目]

収入:
賃料収入 +80万円

支出:
購入価格 -1,000万円

購入時経費 -60万円
建物減価償却 -125万円
修繕費 -100万円
固定資産税 -5万円

不動産所得 -210万円
税引前CF -1085万円

所得税節税額 +115万円
税引後CF -970万円


[2~4年目]

収入:
賃料収入 +80万円

支出:
固定資産税 -5万円
減価償却 -125万円

不動産所得 -50万円
税引前CF +75万円

所得税節税額 +27万円
税引後CF +102万円


[5年目]

収入:
賃料収入 +80万円

支出:
固定資産税 -5万円

不動産所得 +75万円
税引前CF +75万円

所得税節税額 -41万円
税引後CF +34万円


[6年目]

収入:
売却価格 +1,200万円
賃料収入 +80万円

支出:
修繕費 -100万円
売却時経費 -48万円
固定資産税 -5万円

支出:
不動産所得 -73万円
譲渡所得 +700万円
税引前CF +1,127万円

所得税節税額 +40万円
長期譲渡所得税 -140万円
税引後CF +1,027万円


表にまとめると・・こんな感じとなります。




6年間トータルで

税引前CF: 342万円
 

税引後CF: 397万円
 

所得税節税額: 195万円


という計算です。個人所得が最高税率で、この投資をやっていない状況と比較した場合の差では、なんと税引後CF>税引前CFとなります。


デッドクロスとなる5年目だけはCF的にネックですが、そこは時期をずらして他の物件を買うことで十分カバーできます。数を増やしたりロットを大きくすればそれだけ節税額・CFが大きくなりますので、再現性のある条件で売買さえできれば堅実に節税とキャッシュ獲得ができます


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ただある意味グレーな手法であるが故に一点大きな問題として税務調査時に建物価格(減価償却)否認のリスクがあります。



この手法では建物割合を高く設定すればするほど効率が上がりますが、固定資産税評価額の按分からの建物価格計算値から著しく外れる場合、契約書に記載してあっても否認されるリスクはゼロではありません。

 

 

例えばH20年8月6日の那覇地裁判例では築古物件を建物価格40%程度で契約・減価償却した後に税務調査否認・敗訴しています。

 

判例文には「売主である乙は、契約の際、総額で幾らで売れればよいと考えており、土地と建物の値段について考えたことはなく、甲契約書に記載されている土地と建物の値段及びその算定根拠については分からない旨申述している」と記載されています。つまり国側弁護士が売主に聞き取り調査を行っており、契約書に記載してあっても自分の意思ではないと陳述されればアウトということを意味します。

 

 

H30年5月7日の非公開裁決(F0-2-871)でも契約書上の建物価格をベースにした減価償却が固定資産税評価額の価額比からの大幅な乖離(こちらは借地権で建物価格が80%程度の事例)を理由に否認されているようです。


また個人、親族、同族会社で同じ物件をキャッチボールすれば効率良く無限に節税効果を発揮できそうに思いますが、税務調査に入られてその事実が判明してしまえばかなり厳しい結果になるでしょうから実現は難しいでしょう(例えばH20年5月8日裁決事例では同族会社など特殊な利害関係があればこのような場合不合理であると遠回しに書かれています)。


契約当事者双方の明確な意思に基づいていて、かつ契約価格が実態に即していることが求められるため論理的な裏付けと節度が必要になってくるかと思います。