ノルディック・ノワール、デンマークの人狼モノです。最近、ちょいちょいありますね、「僕のエリ、200歳の少女」(この邦題、ホント嫌なんだけど)とか。
おフランスのスプラッターは別として、ヨーロッパのこのテの映画は静かな作品が多いですね。如何にも「ホラーだぞおおおおうっ!!」みたいなのは見た事ないです。この映画、とにかく画面が美しいです、ちょっとスモーキーな色彩で、アンドリュー・ワイエスの絵画を思い出す感じ。
聞けば、監督のヨナス・アレクサンダー・アーンビーは、ラース・フォン・トリアー監督の元で、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「奇跡の海」などの美術アシスタントをやっていたとか。
主人公のマリーは、デンマークの田舎の漁村に両親と共に住んでいます。母親は病気で車椅子生活、身体が余り動かせないので、介護が必要なようです。それなのに、村の人々は彼女を忌み嫌っているのです。
「お前の母親は美しいが村人に恐れられている。」
どう言う病気で何故嫌われているのかわかりません。しかし、どうもその病気はマリーにも遺伝しているようです。
謎の発疹が出来、そこから金色の毛が生えて来ます。
マリー役は、ソニア・ズー。これがデビュー作だそうですが、これが北欧的美少女なのかな、何となく薄幸そうな消え入りそうな雰囲気。
魚の加工工場に勤め始めますが、彼女もまた嫌がらせを受けるんですね。魚の工場で嫌がらせですから、当然魚が使われます。もうね見てても生臭い匂いが漂って来そうで、これ絶対吐くわ。魚の頭が大量に捨ててあるプールに突き落とされるわ、ロッカー開けたら魚のモツが雪崩出てくるわ、勘弁してくださいよ、全くもう
そんなこんなですが、工場に出入りしている青年ダニエルとはひと目でお互いに好意を持ちます。
人狼と言うと、狼男なんて言うだけあって男性の場合が多いのですが、「ブライアン・シンガーのトリック・オア・トリート」で
もあったように、最近は女性の人狼も増えて来てるようですね。肉食系女子かあ。
マリーもその雰囲気とは違い「獣になる前に抱かれたいの」などと大胆なことを言いながらガンガン押して行くタイプのようです。
「ノルディック・ノワール」は、日照時間が短く、鬱病を発症する人が多い、と言うような北欧の影の部分を表した映画を指しま
す。この映画も一応、ホラーとジャンルづけられていますが、まあ、人狼なのでね。作品自体はあんまりホラーっ気はありません。
アーンビー監督は「少女が大人に変わって行く姿をよりリアルに描いた。」と語っていますが、これ自体は今までもよくあった題
材で(「ナスターシャ・キンスキーのキャット・ピープル」とか)新鮮味はありませんが、獣とは特定の人ではなく、誰の中にも住
んでいるもので、その度合いが多かれ少なかれ、その自分の中の獣とうまく付き合って行けるようになることが大人になると言う事なのかも知れません。
母親が自殺し、ある事件が原因で村を出て行くマリーに父親が「綺麗だ」と言うんです。口の周りの血を残したまま逃げる様に村を出て行く娘に対してこの言葉は不思議に感じますが、先に書いたように考えると、そう不思議でも無いですね。。
もちろん、その時、マリーにはダニエルが寄り添っています。
普通の人狼ものを期待して観た人は多分ガッカリするんじゃ無いかな〜?そんなに派手なシーンはありませんし、人狼と化したマリーが人を襲うシーンも大体一瞬で終わっちゃいます。つまりそう言う事を見せたい映画では無いって事なのでお気をつけ下さいw
†††
ヨナス・アレクサンダー・アーンビー監督作品
マリー:ソニア・ズー
マリーの父:ラース・ミケルセン
マリーの母:ソニア・リヒター
ダニエル:ヤーコブ・オフテプロ
†††2014年 デンマーク・フランス