インターネット広告の目標設定における統計学の活用例:ライフタイムバリュー(LTV) | インターネット広告代理店で働くデータサイエンティストのブログ
こんにちは、岡川(TwitterID @hokagawa)です。

インターネット広告代理店でデータ分析をしているとよく質問される項目があります。

(以下文章はフィクションですが、分かり易いためにゲーム業界の場合を考えてみます。実際は、様々な業界で同様の質問を受けています。)

「ユーザーがスマートフォンからアプリをダウンロードしてから、その後数か月後までの課金総額を予測して、アプリ1ダウンロードの価値を定義したい。それに基づいて、アプリプロモーションの予算策定をしたい。」


 その場合、ユーザーの課金額を一定期間後まで集計すればよいのですが、様々な理由で、実データから課金額を集計できない場合があります。

・ゲームリリース当初でそもそもデータが無い。

・そもそもデータがダウンロード後の一定期間後までしか得られない。など

※ゲーム業界では後者のようなことはないですね。フィクションなので許してください。


この時に、ある一定期間のデータから、その後の成り行きを予測する事が必要で、今回はそのような方法を紹介します。

 私が色々な実例を見ている中で、コンバージョンの価値を半分以下に見積もっていて、広告への投資判断に弱腰になり、機会損失していると思われる例もあります。これは、広告主にとって好ましいことではありません。また、広告代理店にとっても広告予算が減るので、好ましいことではありませんねw

色々な背景がありますが、しっかり目標設定することが大切です。


以下、ダウンロードから90日分のデータしかない状態で、その後1年間の課金額を予測したい場合を想定して、説明します。


ダウンロードから課金までの経過日数と、課金総額をプロット下図が次の図になります。



これを見ると、60日(くらい?)以降は殆ど課金額がゼロになっているように見えるので、せいぜい90日分だけで、1ダウンロードの価値を定義すればよい、90日以降は評価に入れなくてもよいと思われるかもしれません。

実はそれは間違いです。

「ロングテール」という言葉がありますが、実際のデータでは経過日数が大きくなっても、課金額がさざ波のようにタラタラ続く場合があります。


試に、両軸を対数に(logを取って、スケール変換)してみます。




すると、きれいな直線になっています。これは、エクセルなどの近似曲線を引いた時に、累乗近似として出てくる直線になっている事を示しています。



p, qは回帰分析のより推定される数値です。エクセルを使えば、ぴしっと出ます。

こんなにうまく直線が引けるわけですから、1年後までこの直線が続くと仮定する事もそれほど、おかしなことではないと思われます。(もちろん、市場環境も変わりますので、注意は必要です。)



これを近似式を活用して、1日から1年までの各予測値を足し上げれば、1日から1年までの課金額の総額、つまり1ダウンロード当たりの1年間の「ライフタイムバリュー」が定義できます。

足し上げは、数学的には積分をすることに対応します。



A日からB日までの期間のCVを足し算しています。例えば、1年分の評価であれば、A=0、B=365です。


このようにライフタイムバリューを計算することにより、従来の設定値よりも、数倍大きなライフタイムバリューの推定値が出ることもあります。


今回は、短い記事でしたが、

「適正な投資判断のために、時系列データまで考慮してライフタイムバリューを考えましょう!」

「すると、投資判断全然違ってきますよ!」

という話でした。


以上

終わり