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cuprosklodowskite

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書く事が、無い。

さて、写真機の事で見て下さる方もそこそこ居らっしゃると思うのですが、現在は内部構造の精密なデータ収集を行っているので、ある程度まとまってから小出しにしようかと考えています。HD動画導入したりして記録環境の近代化も進みました。繰り返して見れるお陰で、莫迦な私でも構造が分かります。
今年も振り返ってみると随分あらゆる所に行ったものです。残り二カ月弱でまた無理して飛びますが。中でも一番多く訪れたのが静岡でした。被写体も充実している上、食べ物も美味しく宿も安くて快適。居心地は最高です。画像は浜名湖。

そういえば、最近カフェに行けないのでストレスが溜まり気味なのが難点です。仕事やら何やらで全く動けないのが原因ですから、こればかりは仕方ないですね。来週行う大規模な真空管実験でテンション上げようかと思います。

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季節が緩やかに壊れてゆく。
四月。気付かれる事無く、空が春を拒んでいる。
降るのは雪ではなく、温かく冷たい灰だった。
灰の中に挫するのは、鉛色の痛んだ人型。
不釣り合いな大砲に縛られる様は、大罪を犯した咎人のよう。
遥か後ろの街を護る為に、ただ此処に在る。

「よーく狙えよ。弾には限りがあるんだ。」
茶色を纏う機械の人型の主の声は、通信の悪さが祟って音割れが酷い。内容によっては、つい笑い出しそうになる。
「分かってる」
照準器は寄せ集め。投影される眠いイメージは、残念ながら弾道の標になりそうにない。
「ヘッ、本当に分かってんのか?対艦用は汚染度が高いんだよ。下手に使ったら辺りが熱い湖みたいになんぞ!」

熱い湖。

近づく者に不揃いな死を与え続ける原子の湖。
不愉快な同僚の言葉は、ある村の事を思い出させた。
白樺の林と、小さな川。
牧歌的な風景とは裏腹にその場に一日居ると、人の年間線量限度を超える放射線を浴びる事になる、彼の場所。村はほぼ廃村と化した後だったが、残された老夫婦と話した。防護服の向こう側の現実は、余りに残酷だった。
“遠い昔、棄てられた船”
それが血のように垂れ流す放射性物質は、湖の周囲一帯の街と人を壊死させたのだという。船とされるものが、一体何であったのかは聞けなかった。けれども、あれから十一年後の今の状況から察するに、ろくでもない代物だった事位は解る。
分厚い硝子の向こうで、老夫婦は訴えかけ、泣いていた。
「子供の出来ない体になったので、養子を授かり我が子のように育て上げた。あの子が死地と化した故郷へは帰らず、自身の道を生き抜いて欲しい」



-電探に反応。
前方に楔を形作る味方の反応が途絶えた。忽然と。
「お出なすった!長物は切り札だ。俺達前衛が擦り潰されても気にするなよ。タイミングは任せたぜ。」
相変わらずの割れた音を寄越す、命知らずの同僚。
茶色を纏う人型達が、忌まわしい灰を巻き上げて前進する。その先には得体の知れない異形の影が浮かんでいた。
識別信号無し、該当データも見当たらず。

それは、喩える言葉が有るならば、崩れかけた未完の心臓。決して空に馴染もうとしない、鉄の錆色。
同僚は、仮称“キシュテム-40”と名付けた。



はっとして、外気の線量を計った。カウンターは無情にも、人が確実に死ぬ世界が広がっている事を知らせた。
厭な、汗。
死の恐怖から逃れるには、元凶を止めなければ。
キシュテム-40の破壊という選択もまた、積んでいるであろう原子炉の核爆発で、生きて帰る事は出来ない事を意味した。
…どうすれば、どうすればいい?
逡巡する間にも味方の反応は、一つまた一つと消えていった。
犠牲は重なりゆく。
もう時間は無い。決断し、切り札のトリガーを引き絞る。頼りな気な照準器を目と経験で補正し、眠いラインの上に、悠然と浮かぶ錆色の目標を捉えた。
狙うは直撃ではなく近接信管による兵装破壊。
「支援する。当該範囲機は下がれ!」
初弾発射の衝撃は余りに重く、老朽機と自分を痛めつけた。爆音と衝撃波は、柔らかい灰に妙に綺麗な円を描く。直後に、放たれた青白い曳光弾を見届けた。
軈て橙の光が、目標のすぐ横で煌めき、それは分厚い雲にまで反射した。
数秒間の空白の後、確実な効果が現れた。キシュテム-40の攻撃の手が明らかに鈍くなったのだ。光学兵器の照射部に罅か歪みが入ったのだろう。
「射手…助かった。いいタイミングだ。」
同僚は通信機の向こう側で、安堵の溜息を吐いた様だった。
ざわつく空気。
灰の舞う向こうには機能不全に陥りながらも、なお暴れまわる殺意があった。
状況は未だ最悪。生き残った光学兵器が、接近戦を挑む仲間の機を次々と鉄屑に変えた。
意を決して、次弾装填。キシュテム-40の未だ無傷の側面を狙う。しかし、相手も同じ手を易々とは許さなかった。
長距離光学兵器の射程圏に入った事を知らせる、耳障りなアラートが響く。
トリガーを引いた。此方の動作がやけに緩慢に感じられるのが、酷くもどかしい。機体を痛めつける衝撃が、今は心地良い。
同時に、致命的な光の束は此方へ吸い込まれる様に伸びた。
「………!」
この時だけは、撃った弾さえ届けば死んでもそれで良いとすら思えた。
一瞬の判断。弾倉を棄てて大柄な盾を構える。
凄まじい閃光が辺りを包んだ。眩い青白い死の世界。
一秒にも満たない時間が、永遠に自分を焼き殺し続けるという、自虐的な錯覚。
武骨なる大柄な盾が、唯一の頼り。目の前で熱線に焼かれ、飴のように歪み始めた。
此を支える頼りない機械の腕は、ケーブルが次々と破断する。
装甲表面は危険温度に達し、コックピット内はあらゆるアラートがせわしく喚いていた。

目を開ける。
長い一瞬は、何時の間にか終わっていた。
生き残った安堵感よりも、キシュテム-40の状況が気掛かりだった。急いでテレスコープを回し、眠い映像を凝視した。
此方を狙った長距離光学兵器は、照射部を含む大部分は損壊していた。他の兵器も沈黙し、武装稼働率は半減していた。
辛くも、攻撃には成功したのだ。
「ったく、無茶しやがって。だが、此で何とかなる筈だ。…感謝する。」
同僚の割れた通信。生きている実感が突然戻ってきた感覚に襲われる。
「何とか、な。しかし、機体は兎も角、砲身が損傷した。次弾は撃てない」
生き残ったのは、同僚と自分のみ。此方はもう有力な攻撃が不可能。キシュテム-40を止めるには、もう-

「射手、お前の言いたい事は解る。先に行くから後は巧くやれよ。」
「止めろ!それじゃ助からない!」
「ヘッ、馬鹿言え。俺は負ける勝負はしないさ。…まあ、見てな。」
手持ちの機関砲を乱射し、茶色い人型は光の雨に突入する。
被弾するも老練な同僚の技術は致命的な直撃を避け続けた。
だが、次第にまるで削り取られるかの様に
盾を
矛を
右腕を
そして左脚を
茶色い人型は光の束に失っていった。
しかし、尚も同僚は迷う事無く茶色い人型を突進させる。蹌踉となりながらも、あの心臓に喰らいつくかの如く舞い飛ぶ姿は、強く脳裏に焼き付いた。

「へへッ、取り…付いた…」
割れた音。
命知らずの同僚は、ただ満足げに。
光学兵器の洗礼を受け、人型の面影を失わせる程の満身創痍になりながらも、遂にキシュテム-40の懐に入ったのだ。



-俺の故郷はな。どうしようも無い土地だった。放射性物質に汚染され尽くし、母もそれで死んだ。独りになった俺を助けてくれたのは、隣の村のお人好しの夫婦だった。軈て汚染は拡大し、その村まで危険になった。その夫婦はなけなしのお金を使い、更に俺を逃がしてくれた。本来ならあの時母と共に壊死していたというのに、有難過ぎる話だ。俺は故郷を、母を、そして育ての両親に容赦なく牙を剥いたあの技術が赦せない。放射線を無尽蔵に撒き散らす、あの船の技術がな。何らかの形で、一矢報いる迄は死ねんさ。



キシュテム-40に取り付いた、満身創痍の茶色い人型。
推進器を最大に吹かし、金属片を無数に撒き散らしながら、キシュテム-40にめり込んで行った。 残された左腕は、派手な火花を散らし装甲を無理やりに捲り、憎き相手のあるブロックを剥き出しにした。
原子炉制御系。
「お前の事は、よく知ってんだ。この日の為の取って置きを受け取りな!」
茶色い人型は、残された左腕からケーブルを伸ばし、剥き出しになった原子炉制御系のハッチに接続した。

鉛色の空に静止した二者は、軈てゆっくりと、音も無く灰に墜ちていった。強烈な放射線を浴びながらも相手の原子炉制御系に直接接続し、停止措置プログラムを入力するという荒業をやってのけた同僚からは、此方に割れた声を寄越す事は二度と無かった。

戦いは、静かに終結した。
生き残ったのは、自分ただ一人。残りは皆、あのキシュテム-40に殺されてしまった。彼の街を護る為に払った犠牲は大きい。
焼けて損壊した盾と、役目を終えた切り札をその場に遺棄し、自分は老朽の人型を労りながら、ゆっくり歩かせた。



汚れた雨が降り出す。
心のあちこちに溜まった淀みまでは洗い流し切れないけども、眠いモニターに映るそれは、ほんの少しだけ気持ちを和らげた。



ごめんなさい。自分はあなた方の願いを叶えられなかった。何れこうなってしまうと、分かっていながらも。
此は罪。償い切れない罪を背負うのは、甘んじて受け入れなければならない。

あの村にはもう誰も居なかった。花束とあの同僚の好きだった酒を、廃屋と化した老夫婦の家に置いて、死んだ土地を後にした。
あの時と変わらないのは、防護服を着なければならないという現実だけ。
四月。沈黙の春と手を繋いで、澱んだ時を紡いでゆく。



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ライカマウントのゾナー。
5cm/1.5ながら、初見の鏡銅です。ゾンネに付けたのは洒落ではなく、ライカを持っていないので。
曰く付きの世界です。戦後の混乱期に、余った軍用の特殊用途品を何者かが転用して作られた物とされていますが、詳細は分かりません。
しかし、分かりやすい共通点は有ります。

・独特のアルミニウム鏡銅。
・コーティングがされている。
・ゾナータイプ。
・1.5の解放値。
・刻印はツァイス・イエナのものより粗雑。
・m表記。
・5.8cm.6cm.5cmが確認され、何れも“140”から始まる番号帯。桁は時折変化。

49年頃の日本国内写真関連誌にてこのゾナーが“偽物”として記事に掲載されている事から、それ以前から製造されていた事が分かります。また、当時のアメリカの広告にこの“偽物”が掲載され販売した記録がある事から、ドイツ国内に蔓延る此に目を付けたアメリカ人が、安価で纏めて購入し、本国で売りさばいたと考えられます。故にアメリカ国内での出現は、現在でもそれなりに多い様です。f1.5のゾナータイプですから当時は売れた事でしょう。
この話をややこしくしているのは、5.8cm等の数値のゾナーをツァイスが実際に極少数製造した事に有るでしょう。しかし“偽物”の製造目的は恐らく本家とは全く違うものです。

ちょうどコンタックス用の戦時ストック戦後組み立て仕様の5cm/1.5が有るので、機会を作って比較検討する事にします。