『輝く日々
それが過ぎ去ったことを泣くのはやめよう
その代わりに、かつてそれがあったことを思い出してほほえもう』
これはヴィクトール・フランクルがとても気に入っていた詩で、旅先で泊まったへやの壁掛けに刻まれていたそうです。
ポジティブなフランクルが好みそうなコトバです。
10年経って、ようやくMがいたこと、たくさんわたしを笑わせてくれたことの幸せを実感できるようになりました。Mよ、ほんとうにありがとう!
彼といるとき始終笑っていました。一時期を除いては。
きっと、一生分笑ったのかもしれない、と思うほど。
でも最近こんなこともありました。
土用の丑の日の頃、スーパーでうなぎを買ってきて、お重に入れ替えて、夫とふたりで、さぁいただきましょう、と
おはしを付けた瞬間、
いなづまが走ったようにある光景がよみがえり、号泣しました。
Mは地方都市の大学の医学部に行っていたのですが、
診断のつかない難病に見舞われ、その大学の医者に勧められ、
電気ショック療法を受けに行っていたときのこと、
治療の合間に近くで見つけた老舗のうなぎ屋さんで食べることにしてお店で待ち合わせました。
私が着くと既にMは広いお部屋の真ん中に置かれたテーブルの一方に座って、「もう頼んでおいたよ」と、
その姿が時代劇にでも出てきそうな遊び人の若旦那風で思わず笑ってしまいました。
うなぎはおいしかったけれど、辛い治療と結びついている記憶です。
こんな風に突如、記憶に苦しめられることもありますが、
その回数は激減しました。
これを書いている今はもう、Mの姿に「くすっ」ですから。
食べ損ねたうな重は翌日、どんぶりに移し替えて、おいしくいただきました。
※次回の『星めぐりのうた』は、お部屋の都合上、
8月25日(日)になります。
よろしくお願いします。