この本には特別の思い入れがあります。
というのは、最初の出会いは友人から、いい本だから読んでみたら、と教えてもらい、手に取ったのが始めですが、
なぜか昔からタイトルだけは知っていたような、懐かしい感覚がありました。
読み終わったときは、このなんとも捉えどころのないテーマについて完璧に書き尽くされていることに感動を覚えました。
あるときは喪失感におおわれていた自分に重ねて、あるときはそこから一筋の光に導かれるように貪るように読んでいたかもしれません。
神谷さんが精神科医という科学者であり、全章にわたり納得感も得やすかったというのも惹かれていく一因だったと思います。
そして、この本から読書の幅が飛躍的に広がっていきました。
前後に『100分de名著』で取り上げられてその指南役の若松英輔さん、石牟礼道子さん、美智子さま、パールバック、ヴァージニアウルフなどなど枚挙にいとまがありません。
この書の特徴として日本内外を問わない優れた引用が多くされているので、それらにも触手がのびていきました。
そしてこの本の読書会がやりたくて、読書会も立ち上げたのでした。
あれから数年たった今、再び取り上げたいとも思うのです。
当然、彼女の他の著作も読んで、
彼女の才能もさることながら、なんと言っても人間性に強く惹かれて、半世紀以上前に亡くなってはいますが、私の中では永遠に生き続けています。
そんな読書経験を経て、数年たった一年前くらいのあるとき、
ずっと開かずの間になっていた、亡き人の部屋の本棚(正確には本棚の隣にある出窓スペース)でこの本が目にとびこんできたのです。
それまでまったく気付かず、まるでその瞬間にどこからかやってきたようでした。
あのときの衝撃は忘れられません。
この本で息子とつながったと思いました。
あの世にいったときに、もし彼が読んでいたら、読後感を話し合えるという楽しみが増えました。