先日、3月16日(土)に北陸新幹線の金沢~敦賀が延伸開業しました。
これについて様々なニュースやコラムを読みましたが、興味を引くものがありました。
「北陸新幹線開業に伴い、その沿線の貧者から金持ちへカネが動く」という説です。
北陸新幹線開業と同時に並行在来線のJR西日本北陸本線敦賀(福井県敦賀市)~大聖寺(石川県加賀市)区間は第三セクターに経営分離され、新たに「はぴラインふくい」として開業しました。
私は以前地方勤務の際に、北陸本線ではありませんがJRの地方線を利用して通勤していました。
当時の車内風景を思い浮かべると、利用者は大きく分けて以下のような分類ができたと思います。
①学生
②お年寄り、無職女性(専業主婦)
③通勤、出張
④その他
①は車も免許もない未成年、②はそのどちらかもしくは両方がない成人、③は公共交通利用を命じられている人(私はこれでした)など、④はそれらのどれにも属さない人で、移動先目的地に駐車場がないとか飲酒するためなど、その日だけ利用している成人男性が思い浮かびます。
どれくらいの田舎かのレベルにもよると思いますが、私が住んでいた地方では有職成人男性は高齢のお年寄りを除いてほぼ全員車を持っていました。
特に商業施設のない田舎に住む人は持っていないと生活が成り立たないのです。
女性も有職者はほぼ全員が持っていましたが、家に車はあるが夫が通勤に使うため日中は車をつかえないという主婦がいました。
この場合は日常的な買い物は車を必要としない地域に住んでいて、単独で遠出の場合のみ公共交通機関を使うため、利用頻度は高くありません。
①②は収入がなく別の移動方法がないため、第三セクターの高い運賃で利用せざるを得ないということになります。
③はもともと収入があるうえに、勤務先からお金が出るため運賃が高くなっても関係ありません。
「北陸新幹線開業に伴い、その沿線の貧者から金持ちへカネが動く」というロジックはこうです。
JRは赤字の地方線を切り離せて利益が上がり、会社や株主は潤う。
引き継いだ地方線は地方資本と税金からなる第三セクターで運営され、高くなった運賃で他の移動手段選択肢がない経済弱者住民を主顧客として存続する。
こういう流れをマスコミ、SNSでは「弱い者いじめ」と批判する流れが定着していますが、社会を維持するうえで一方的に間違っているとも思えません。
このやり方が正しいか間違っているかはわかりませんが、貧民は福祉で保護される一方で中途半端な貧民から吐き出させたカネが金持ちに流れる動きになってきていることは確かだと思います。
最近、業務効率化やコスト削減のため制度が金を持たない顧客に冷たくなるニュースが目に付きます。
「SBI証券がクレカ積立のポイント付与率を改悪」はSNSでずいぶん話題になっていました。
携帯電話各社が料金が安い代わりに顧客サービスを抑えたセカンドブランドを設立したのもこの流れだと思います。
企業の問い合わせ電話窓口、コールセンター縮小もよく聞きます。
ただこれらは生活必需品ではなく、消費者側に他の選択肢も残されているため、まだ影響も少ないです。
しかし、電気や公共交通などのインフラは生きていくうえで必要なので重みが違います。
そういえば「電力会社が過去最高利益で給与の賃上げをしたのに電気料金も上がる」というニュースも批判されていました。
「トリクルダウン」は「大企業や富裕層を先行して豊かにすれば、中小企業や低所得層にも富が波及し、国民全体が豊かになる」という経済理論ですが、必ずしもこうならないことがわかってきており、むしろ富裕層と貧困層の二極化が問題になっています。
今回の事例は新幹線が延伸したことで貧困層から富裕層にお金が流れる「逆トリクルダウン」となっています。
「生きていくのに最低限必要なコストまでどんどん上昇し、そのカネは弱者から富裕層に流れる」という考えさせられるニュースでした。
今後誰しも年を取るにつれ体力的弱者となることは確実ですが、生きているうちは最後まで経済的弱者にならないよう資産形成していきたいと思います。