予告編を見ていたら阿部サダヲが出演していたので、ずっと気になっていた作品。3月になってようやく時間が合ったので、ガラガラの映画館で鑑賞してきた。
<主役の人> ※映画サイトより
血管内キャスト: 永野芽郁、佐藤健、仲里依紗、山本耕史など
等身大キャスト: 阿部サダヲ、芦田愛菜
血管内コンビはNHK朝ドラ「半分、青い」の2人。等身大コンビはフジ「マルモのおきて」の親子。他にTBS「不適切にもほどがある!」のキャストが目立っていた。
文句なしに面白い! 個々の場面を切り取ると子供向け怪獣ドラマと言えなくもない。被り物もしている役者も多く、佐藤健も麦田のパン屋に白塗りした殺し屋姿で分かりにくい。声だけで分からない役者もいたけど、黄色ブドウ球菌が狂気を帯びた特徴ある声だったのですぐに小沢真珠だと分かった。
人体に対するいろいろな刺激に対してカラダの中でどんな事が起きているのか分かりやすく解説してくれる。高校生が生物とか学んだ後で復習として見るととても沁みてくるのでは。そもそも血管内の様子をちゃっちぃアニメで表現するのではなく、擬人化してストーリーに乗せてくれたのが画期的。
【外からの刺激】
飲酒(アルコール分が血管に沁みてきて肝臓の美女に代謝してもらう)
献血(血液成分が体外に吸い出されていく)
抗がん剤(人体に対するロケット攻撃で戦場のように痛めつける)
放射線治療(人体に対するオーロラ攻撃で草原が荒地になる)
【生体反応】
不調(赤血球から居酒屋に対して酸素ボンベの納品が不足)
くしゃみ(異物を体内からロケット発射)
アテローム(ゴミ袋が積み重なっている)
排便(括約筋が締めすぎると赤血球にも不幸が襲う)
突然変異(白血球が異種に化ける)
擬人化して表現しているからこそ、赤血球にも気持ちが入ってくる。自分達はどうして肺包と毛細血管を往復してばかりなんだろうと、虚しく嘆く場面が描かれていた。しかも解毒が必要な赤血球は肝臓で喰われてしまう、ずっと働き続けていても老化すれば脾臓送りされる悲しい結末が待っているのだ。
<人体の中でいろんなキャラが活躍している> ※映画サイトより
ここまでは生物のにわか勉強で分からなくもない。特にイメージが掴みやすくて感心したのが2つある。
1つは誰がどう攻撃するか。白血球(佐藤健)、ヘルパーT細胞(染谷)、キラーT細胞(山本耕史)、NK細胞(仲里依紗)、マクロファージ(松本若菜)のキャラと役割分担がストレートに伝わってくる。これがNHK「ヒューマニエンス」で高校生3名が演じていたのより格段にいい。マクロファージは貪食細胞とか表現されているので攻撃の前線に立っているのかと思っていたが、普通レベルの危機なら後ろに控えている存在のようだ。
もう1つが、創傷に対して血小板(子供たち)がフィブリンで傷口に網を張る。そこに赤血球や白血球がベタッと倒れ込んで壁を作り、かさぶたになるまで耐えるとか。ネット検索して「二次止血」を読んで理解するより断然スッキリ。ここは絵としてもユニークだった。
体調が悪い時に自己治癒力でガンバっているのを軽く「気合」と片付けるんじゃなくて、こうした細胞たちの活躍を映像で訴えてくれたのはとても意味がある。オススメの映画。