(1)単発ドラマ
●TBS「スロウトレイン」
脚本は野木亜希子。松たか子、多部未華子、松坂桃李、星野源が出演。
3人姉弟の物語。親を早くに失った姉弟の絆のありがたさと煩わしさを上手く描いていた。弟が江ノ電で保線の仕事に就いたのはきっと葬式の帰りに乗った電車のリズムが心地よかったからじゃないか。100万円の封筒を渡していた妹のことは視聴者も気になっているし、心配になった姉弟がわざわざ韓国に様子を見に行くのは優しい。韓国にも江ノ電と似た風景があるんだな。
「(人生)のゆき先は分からないけど次の駅は判っている」って科白があった。目標を掲げてガムシャラに生きる人もいるだろうけど、生き方は人それぞれなので大きな目標でなくても目先の1つ1つを確かめながら生きていくことで構わないと思うのだ。「鎌倉だけど渋谷家」の正月料理・ちらし寿司もキチンと姉から弟に伝わって、ラストシーンで正月の食卓を華やかに彩る。こたつで寛ぎながらゆっくり見られる正月ドラマだった。
星野源はTBS「コウノドリ」でもこのドラマでも芝居中に共演者と目線が合わない。そういうキャラ設定なんだろうけど、冷たい印象を与える。他に、スムーズと言わずに「すべらかなレール」って表現がちょっと不自然に聞こえたけど、それは拘りなんだろう。
<TBSサイトより(3)>
●TBS「グランメゾン東京」
連ドラのスペシャルなのでドラマとしては新鮮味ない。魚の鱗焼きのパリパリした触感が良さそうで食べてみたい。
●フジ「監察医・朝顔」
このスペシャルは2~3回目か。このドラマを見るたびに3.11東日本大震災を思い起こし、時任三郎の老いを見せつけられる。今回は時任三郎が再現シーンで登場しただけでなんとも寂しい。
家族のその後を追うドラマは「朝顔」や「PICU」などフジが巧い。ただ、いずれも人の死や老いと無関係ではいられないのでドラマの色調がかなり暗めになっている。その点、このドラマでは山口智子の明るさがありがたい。
●NHK「眩 ―北斎の娘―」
2017年の作品を1/4に再放送していた。主人公は宮崎あおい、その父を長塚京三が演じていた。滝沢馬琴がどうやら野田秀樹っぽいけど微妙(エンドロールで確認できた)、医師に麿赤児など。「やうつり(引越し)」、「じゆれ(地震)」など江戸後期の言葉遣いは独特だった。色彩感覚がないので主人公の思いに全くついてけないけど、「べらぼう」と同時代なのでその宣伝を兼ねて再放送していたのだろう。
(2)NHK「べらぼう」
この時代のドラマって珍しいので期待。なにより綾瀬はるかがナレーションしてくれるのが嬉しい。これから毎週、あの鼻からスコンと抜けた声が聞けるのはありがたい。綾瀬はるかのTBS作品で何度も脚本を書いている森下佳子との繋がりか。
タイトルの「ありがた山の寒ガラス」は「合点承知の助」と同様、江戸っ子らしい小粋な言い回しなんだろう。ただ、ありがたい事と吉原の裏面が寒々しいのと合わないように思う。まあ、そんな屁理屈を言うだけ野暮なのか。
(3)NHK「あたらしいテレビ」
数年前にテリー伊藤や千原ジュニア、テレ東のプロデューサーなどが出演していた番組だったと思う。今年の元日はかなり若手の出演者で固められていた。もう1つのトークグループもかなり若めの制作陣を集めていた。
TVドラマに限定することなく映像作品について語っていた。驚いたのは殆どの作品を自分が見ていないこと、そして出演者10名が挙げる作品も殆ど被っていないことだった。それだけ作品も視聴者も多様化しているってこと。
私が良かったと思ったドラマでリストアップされていたのはNHK「ケの日のケケケ」、NHK「舟を編む」だけだった。確かに「舟を編む」はかなり良かったしあの世界観は好き。ただ、個人的に2024年のベストはTBS「不適切にもホドがある」とNHK「団地のふたり」だった。たまたまだろうけど、いずれも小泉今日子が出演(「ふてほど」ではポスターがメインで本人の登場はワンカットのみ)していた作品。