体調が悪くて動けない時にTVerの過去ドラマに救われている。今回は今年のドラマで活躍している俳優を中心に感想を書く。

 

●日テレ「知らなくていいコト」(1-3、8-10話)

脚本:大石静、主演:吉高由里子、共演:柄本佑と佐々木蔵之介。まさに今年の大河ドラマ「光る君へ」と同じ顔合わせなので見たいと思っていた。

 

<日テレHPより>

 

TVerでは既に4~7話が消えていたので見られたのは前半と終盤のみ。第3話のラストを見ていると、吉高由里子と母親役を演じた秋吉久美子がなるほど似ているのにビックリ。大河ドラマで平安時代の恰好をしている姿はちょっとな、と思うけど、このドラマで改めて美人だと分かった。

 

ストーリーはしっかり練られていて、かなり面白かった。ドラマのタイトルを命名するのって難しいのだろうが、この「知らなくていいコト」ってタイトルはドンピシャで嵌っている。週刊誌はなんでも真実を暴くのが仕事で、そのためならえげつない取材もする。主人公のケイト(吉高)はそのイメージ通りの敏腕美人ライターだった。1話ずつそれぞれに見せ場があって、さらに父親を巡る疑惑が全話を通じて彼女を悩ませる。

 

ケイトは全ての真実を探り当ててドイツ・ローデンブルクまで飛ぶ。プライバシーに関わる部分は伏せつつも父親の無罪記事を書きあげる。出版社の都合で記事はお蔵入りになったものの、親子の穏やかな対面がなされ、心地よい最終回だった。

 

科白で「タイミングが悪い」と喋っていたとおり、尾高(柄本佑)のプロポ―スは2度も空振りに終わった。だけど、精神的な繋がりは保たれたし、大河ドラマでも共演しているんだからいいんじゃないか。

 

あと、余計な事だけど、マスコミ関係でかつ冤罪事件が絡む点など1990年代後半のフジ「タブロイド」(主演:常盤貴子、脚本:井上由美子)と似ていると感じた。大石静ってTBS「長男の嫁」、TBS「私の運命」、NHK「ふたりっ子」などどちらかというとホームドラマの印象が強かったけど、同じく1990年代後半にフジ「アフリカの夜」も書いていたのか。

 

●TBS「MOZU」(season1&2全話)

西島秀俊らメイン3名のほか、生瀬勝久、池松壮亮、吉田鋼太郎、長谷川博己とみんなギラギラしていてアクが強い。しかもタバコ臭くて、総じて暗っぽい映像で重苦しい。公安の真木よう子は鉄面皮を貫く。イカレているって表現が正しい。

 

小日向さんは一見すると柔和に見えるが公安の組織人として「あなたはそれを知る立場にない」とキッパリ壁を作ってしまう。電車男(伊藤淳史)がアクセントになっているくらい。

 

百舌(MOZU)の早贄に理由はなくて、衝動に駆られただけだ。そうだとしてもその言葉を映像化していくとあまりにエグイ。とりわけ残虐なシーンがジリジリと続くseason1の第6話は勘弁して欲しかった。これって映画の領域であって、地上波で放送したらダメでしょ。

 

それでも面白かったのはホント。あの重苦しい映像を全15話を一気に見たのだから、作品としては丁寧に作り込まれている。普通は犯人を追い詰めることに1点に集中していくストーリーだけど、この作品は複層的に複数の敵を追っていくので緊迫感がある。タバコ臭い雰囲気は嫌いだけど、この作品に限っては煙を燻らせているシーンもサマになっていた。できればsession1もsession2もそれぞれで完結させて欲しかった。

 

ずっと緊張が張りつめたシーンが続く。ダークな奴らも警察も同じように怪しい。そんな中で香川照之夫婦の会話が笑えた。

 

香「オマエ、……」

妻「私の名前はオマエじゃない!」

香「ケイコ、……」

妻「名前で呼ばないで!」

 

あと、「大江戸捜査網」の瑳川哲郎や、かつて吉田松陰を演じていた篠田三郎など20年くらいはお目にかかっていない俳優が登場したのにビックリ。懐かしいのを通り越して瑳川哲郎の変わりように驚いた。

 

西島の妻(石田ゆり子)が1人だけ解放された理由は分かったけど、2人の娘が風呂場で亡くなっていた理由はハッキリしない。これは映画でスッキリするものなのか?

 

●TBS「ブラックペアン」(1-5話、後半も継続予定)

この作品の存在を知らなかった。きっと残業でムチャクチャ忙しかった頃なんだろう。7月からパート2が始まるし、医療ドラマは好きなのでTVerで見始めた。

 

「邪魔だ」、「どけ」、「手術はバクチ」、「1000万円」などなど。この主人公(二宮和也)はTBS「アンチーヒーロー」の弁護士と同じくなかなかにダークだ。「私、失敗しないので」と啖呵を切る他局の女医(米倉涼子)より傲慢じゃないか。弁護士のドラマは真意が分かりにくくて共感しにくい。それに対してドラマで描かれる医師は急性期の切迫した患者を救う使命があるので、分かりやすい。

 

オペを交代する代わりに金銭を要求する医者ってどんなにクズでもヒーローには違いない。TBS「ブラックジャックによろしく」に出演していた加藤浩次がスーツ姿で登場するとあのドラマの重苦しい空気感を思い出した。ついでに言えば、研修医の竹内涼真が「ブラックジャックによろしく」の妻夫木聡のように見えてくる。

 

画面いっぱいの夕陽が映し出されたので福澤さんの演出だと分かった。これが2023年のノコル(TBS「VIVANT」)役に繋がっていったのか。どちらも科白が少なくて役者の存在感で魅せる役柄だ。私にとっての二宮和也って、1990年代後半のTBS「二十六夜参り」で特攻隊員を演じていたのが今でも記憶に残っている。あれは良かった。

 

あと、NHK「ブギウギ」の趣里がオペ看役で出演しているのを発見。