前年に引き続き2023年秋にもNHKで「笑わない数学2」を放送していた。このパート2で面白かったのは「結び目理論」と「超越数」、「BSD予想」の回だった。もう半年経過しているので今さら感はあるけれども、数学の世界が好きなので2回に分けて感想を書いておきたい。まずは前半の5話。

 

●非ユークリッド幾何学(10/4放送)

某所で微分幾何のイントロを学んだ際、地球の断面を捉えて三角形の内角の和が180°じゃないのは新鮮だった。ただ、今回の放送は捉えどころがなかった。

 

●コラッツ予想(10/11放送)

奇数なら3倍して+1、偶数なら1/2にする。そのルールに従って100咳(ホントの漢字は土へんながら正しく漢字変換できなかった)の桁まで調べて1に還元できるならそれでいいじゃないか、と思うのだが数学は証明が大事なんだな。

 

個人的にはコラッツさんがどうしてそのロジックを思いついたのか、そっちの方が気になる。生物の繁殖とか普通は数が発散していく方向を発想するものじゃないか。エントロピーは単純現象だろうし、敢えて1に減縮していくルールって自然界のどんな現象に着目して思い付いたんだろうか?

 

番組HPの画像を見ていると戦前のいってこい相場の株価チャートとか仕手株の一瞬の輝きのようにも見えるから不思議だ。

 

あと、この回でウラムの螺旋(半時計回りの自然数で素数を黒塗り)が出てきたのは付いていけなかった。以下サイトのn+40と図も斜線上に黒塗りが並んでくるのが面白い。

※参考サイト

暇な会議で大発見!?素数が描く不思議な模様 | 数学・統計教室の和から株式会社 (wakara.co.jp)

 

●1+1=2(10/18放送)

(基礎論は苦手なのでパス)

 

●10/25:結び目理論(10/25放送)

トポロジーのイントロを聞いては挫折する、またまたそのパターンにハマってしまった。特異点を解消する話とかトーラスの方がまだ馴染みやすいけど、結び目は図をみてもイライラしてしまうから困ったものだ。

 

交点の数  パターン数

  1    なし

  2    なし

  3    2種類

  4    1種類

  5    2種類

  6    3種類

  7    7種類

 

番組HPにも「多項式が結び目の指紋になる」って言葉が載っていた。結び目の絵から多項式に展開できる数学者のセンス&スキルは尊敬する。

 

ただ、この多項式を解く意味はなく、結び目が3つの図形なら3×3行列のdetを表現したものだと言う。こんな所にも私の嫌いな線形代数が顔を出すのか。

 

<結び目理論の回(2)> ※TV映像より

 

 

確かに「不変量」より「指紋」の方が文学的で視聴者の共感を得やすい言葉だ。あるセミナーで初めて「不変量」ってワードを聞いた時にイメージが湧かなかったけど、別の場面で図形であれば点の数や辺の長さ、トポロジーであればオイラー数や穴の数(genus)だと補足してくれてスッキリしたのを想い出した。

 

どこかでトーラスやクラインの壺などの分類記事を読んで分かりやすかったのだけど、それについてもどこかで頭の整理をしておきたい。

 

●超越数(11/8放送)

この回は新鮮な議論で面白かった!

 

数学で数の包含関係を定義するのに「N<Z<Q<R<C」がある。Nが自然数、Cが複素数だ。もうこの分類が当たり前だと思っていたのに別の切り口が提示された。

 

この番組では「作図できる数<代数的な数<超越数」のベン図を示してきたのだ。ここで、作図できるとは方程式の解になっている事を意味しており、代数的な数とは四則演算と整数で定義できる数だと言う。

 

今更ながらに、ルート2(√2)は作図できるけど、πは半径1の円として領域で示す事はできてもπの長さを作図できないのだと知った。

 

<ルートの作図、πとeは別カテゴリなのか> ※番組HPより

 

 

で、外縁部にある「超越数」に関しても2つに分類できるとか。

 

その1つが「周期」なるワードで、log2やπのように積分で定義できるもの。関数1/xを1から2まで積分すればlog2になるし、√(1-x^2)を-1から1まで積分して2倍する(半径1の円の面積)とπになる。ちなみに周期ってワードがスッキリしなかったのでネット検索してみた。

 

======

有理数係数の多項式で定義された境界で囲まれるユークリッド空間 R領域 D上の積分で表わせる時にaは周期(Period)と呼ばれます.……(中略)……この周期の定義は,古くから色々な数学の分野に現れていた周期の概念を,数学的に明確にした定義になっています.

======

※出典

https://www2.kobe-u.ac.jp/~mhsaito/documents/0808saito-period.pdf

 

これを読んでもまだピンと来ない。積分には不定積分とか広義積分、閉区間を一周する複素積分などあるけど、一番シンプルなのは高校の面積計算問題で習うaからbまでの区間積分(=定積分)だ。Periodの訳語としては「周期」より「区間(区間定義できる数)」の方が相応しい気がする。

 

もう1つがe(自然対数)やリウヴィル数(0.11……でそれ以降に時々1が現れる無限級数)。これら積分で定義できない数はもっとブッ飛んだ超越数になるのだとか。

 

なにか新しい世界に一歩踏み出した予感はあるのだけど、そこにどんな世界が広がっているのか何も想像できないのが悲しい。