「笑わない数学2」ブログの後半。終盤の3話について感想を書く。

 

●ケプラー予想(11/15放送)

3次元の空間充填問題がケプラー予想。空間充填問題って実験すればそれで済むのでは、と思うのであまり興味なかった。ただ、この議論の起源が砲弾の詰め込み方にあると知ると数学って現実的な問題を精緻に議論するツールなんだなって思い知る。

 

2次元のランダム充填に関するフェイエシュ=トートの「平面に敷き詰められた円と円のちょうど真ん中に線を引き、円を含んだ多角形を作るという手法」は、細胞核と細胞壁の関係を示しているみたい。

 

番組の最後に8次元や24次元の充填が出てくる。4次元以上はあくまでも線形代数の世界だけでしょ、と割り切っていたのでもう理解できない。パンク!

 

ネット検索すると以下pdfをみつけたけど、キッシング数(kissing数、接吻数)って何だろう。2次元でk=6となっているので1つの球に接する球の数のようだ。3次元のk=12上中下の4層で3個ずつ接する感覚のようだ。8次元のk=240って一体何なのか、次元を理解できていないのでキッシング数は及びもつかない。E8格子とかリーチ格子ってサッパリだ。

 

※参考サイト

https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/charm.annex/07/Kanai180311.pdf

https://tsujimotter.hatenablog.com/entry/kissing-problem-and-leech-lattice

 

●自然数の無限和が-1/12になる(11/29放送)

これは有名な話だけど、ゼータ関数ζ(s)と解析接続を読んでは忘れることの繰り返し。確か2つの式の定義域が一致していないためにズレが生じたような記憶があるけど、スッキリできていないネタなのでこの回はありがたかった。

 

単純増加していく「1+1/2+1/4+……」は2となる。それに対して振動する「1-2+4-8+……」は一般式で表現できるけど答はなく、「1-1+1-1+……」も同様の扱いになるとか。この番組では振動も発散って言葉で括っていたのはどうしてだろうか? まあ「1-2+4-8+……」は振動しながら振れ幅が拡大していくんだけど。

 

ここまでならクイズもどきの数字遊びだが、数学者は一般化しないと気が済まない。一般化で何かとギャップを感じるのだけど、新しい発見や効率化に繋げるためにはなくてはならないプロセスなんだろう。

 

そこで、オイラーの式:1+x+x^2+……=1/(1-x)が登場する。

x=1/2: 1+1/2+1/4+……

x=-1 : 1-1+1-1+……

x=2 : 1-2+4-8+……

 

で、番組では表題の「1+2+3+4+……」の無限和について、-1/12(固定項)+積分(発散する変動値)で記述できると続けてくる。で、その発散する値を切り落とすと妙な等式が現れてくるのだとか。えっ、解析接続はどこに行ったの?

 

物理学は全く興味ないので、ピュアな数学でもうちょっと補足して欲しかった。

 

ちなみに番組HPにある以下の文章が自分の感性で理解できないのが悲しい。かつて小山信也先生のトークを聞いた時にも和と乗の違いに触れていた気がするけど、もう思い出せない。確か素数の逆数の和を考えていて、オイラー積の発見に繋がっていったんじゃないか。

 

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発散するはずの無限和の値の存在は,和に参加する数の集合が持つ完ぺきな「バランス」や「調和」によって実現します.「すべての自然数の和」には,無数の自然数がちょうど1回ずつ平等に参加するという,奇跡に近いバランスがあり,これが「足し算」の概念と見事に調和しています.これに対し,たとえば「すべての素数の和」はどうやっても求められず,無限大になります.掛け算的な概念である「素数」が,足し算的な概念である「和」と調和しないからです.

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※出典

数学ノート 1+2+3+4+…=-1/12(シーズン2) - 笑わない数学 - NHK

 

●BSD予想(12/6放送)

これが面白かったのは有理数の分布が曲線によって極端だった事。


半径√2の円(x^2+y^2=2)において整数になるのは(±1,±1)の4点で、例えば(1,1)を通る直線の交点が必ず有理点になっており、有理数の座標は無限に見つかるとか。HPにこう書かれていた。

 

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もし円の上に整数の点(有理点でもいい)が1つでも見つかっているならば、じつはそれ以外にも無限個の有理点が存在する、ってことなんです。(円の方程式の右辺が整数なら必ずそうなります)……(中略)……こうなる理由は、円の方程式と直線の方程式の2つを連立方程式にして計算すれば、割とすぐに納得できます。

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※出典は後述

 

他方で、半径√3の円(x^2+y^2=3)の円周においては有理点が1つも存在しないとか。これって当たり前のように連続した円周を描いているけど、実数ではなく有理数(Q)の世界で離散的なグラフを全く描けない事を意味する。確かに有理数と実数では包含関係が成り立つけど、関数によってこんなに極端な落差があるものか。ただ、以下に抜粋した証明のくだりは理解できていない。

 

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素数を経由することで、本来、無限の可能性を調べなくてはいけなかった元の問題を、候補が絞り込まれた有限の問題に焼き直せる、ということです。こういう考え方を発展させたのが、難しい言葉でいうと、数論という分野の「局所-大域原理」と呼ばれる、とても深ーいものなんだそうです。

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※出典は後述

 

議論は楕円関数に及ぶ。楕円関数って反時計回りに90°回転させた上で、係数を微妙に変化させると大きな水滴がこぼれ落ちてくるアニメーションができそう。そんな動的なイメージが思い浮かぶ。たまに学ぼうと思っては挫折している分野だ。

 

<いろいろな楕円関数の模様> ※番組HPより

 

確か暗号理論でも楕円関数が出てくるけど、ある有理点における接線と楕円曲線の交点がまた有理点になっているなんて摂理も初めて知った。

 

楕円関数の有理点が無限個あって、それが関数によって2セットとか4セットあるとか、もう付いていけない。で、BSD予想はこんな意味があるらしい。

 

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予想1はオイラー積の中心点における収束性(解析的予想),予想2は中心点における零点の位数と楕円曲線の階数の関係(代数幾何的予想)でした.……(中略)……2012年頃に東京工業大学名誉教授の黒川信重氏により予想1の重要性が再発見され,予想1は「深リーマン予想」として新たに定式化されました.これによってBSD予想は,リーマン予想をも含む壮大な問題であることがわかりました.

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※出典は後述

 

と言うことでBSD予想(深リーマン予想に関係するとか)はサッパリだけど、有理点の分布を知れただけで満足な最終回だった。なんか嬉しい!

 

<無限個が複数セットあるのか> ※TV映像より

 

●最後に一言

数学の分野によって濃淡はあるけど、NHKの「笑わない数学」に賭ける思いは十分に伝わってきた。ありがとうございました!

 

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わらすうのモットーは、誰でもアートを楽しめたり思わず感動できるのと同じように、数学だって楽しんで感動できるはずだ、だって天才たちが人生を賭けてしまうほどの魅力があるんだから、っていうものです。

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※後半4つの出典はいずれも「BSD予想」の回

https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/blog/bl/pmg0p5PX8L/bp/pMW6Wb5vak/