【註】出血している写真が含まれているため、苦手な方は前半でストップして下さい!!!

 

まずはこの1枚。2023年の1月某日、八ヶ岳で怪我して膝下を11針縫った日の夜に撮った写真。

 

<縫った後なのに血が滲んできた>


包帯の奥から血が滲んできて何とも不安な夜だった。幸いな事に麻酔の注射は痛かったものの、まだアドレナリンが分泌されていたので痛みは全く感じていなかった。

 

何があったかと言えば、八ヶ岳の小屋泊まりで2日目の初動で転倒した。前日は根石岳に登ってミッション完了して根石岳山荘に泊まった。翌日はいつものように硫黄岳に登る予定だった。この小屋は過去にも2度泊まっておりよく眠れている。むしろ私のイビキで周囲に迷惑をかけたと云われて恥かしかったくらいだ。ところが、この晩はひどい暴風雪で小屋がずっと揺れていた。

 

<この音で想像できるかも>

 

翌朝起きたら、根石岳も箕冠山も吹雪で見えない。視界ほぼゼロだった。モノクロの世界でもなく、まっしろモノトーンの中に踏み出す感じだった。以前、森吉山でホワイトアウトのためすぐに撤収した事があるが、この日はここを抜け出さないことには下山できない。


先ずはアイゼンを装着する。小屋の前の外階段をいつもなら慎重にアイゼン歩行するのだが、暴風に気をとられていたのでついアイゼンの爪を階段に引っ掛けて転倒してしまったのだ。

 

根石岳山荘の辺りは吹きっさらしなので、本来ならば樹林帯に入る地点でアイゼン装着するのが正解。それは分かっていたけど、トロトロ手作業していると冷えてしまうので小屋でアイゼンを付けた。歩き始めに冷静さを失っていたのも本当だ。失敗だった。

 

11針縫った日の深夜、トイレに起きようとしてようやく「痛い!」って自覚があった。眠っている時には副交感神経が優位だからアドレナリンが欠乏していたのだ。

 

翌日、消毒のため通院する。おおー、ホントに縫ってあるのをここで初めて目視確認した。そんなに出血している感じでもない。

 

<怪我翌日の処置室にて>

 

怪我したのが膝下だったので、立つ/座る/寝転ぶ、どんな動作をするにも常に動きを伴うので、傷口が引っ張られて痛い、痛い。なので、縫合翌日には綺麗だった傷口も次第に黒ずんだカサブタが広がってきた。動くたびに少しずつ出血していたのだろう。動きが激しい場所なので抜糸も遅れた。13日後に3針を抜糸、その翌々日に全て抜糸した。

 

<怪我から19日後>

 

ところが、その後も足を動かすたびに皮膚が突っ張る。傷口が痛むのかハッキリしなかった。ようやくカサブタが剥がれてくると、なんとまだ糸が1本残っているのが見つかった。だから突っ張っていたのか……

 

改めて通院してみると「おお、確かに残っている。でも私が縫ったわけじゃないし……」とボソッと呟く医師だった。ただ、それも当然。縫ったのは旅先で処置してくれた救急外来の医師で、それ以降の消毒と抜糸をお願いしたのは地元の医師だったのでそれは仕方ない事。しかもカサブタと黒い糸がひとかたまりになっていて識別できなかったのだ……。最後の1本を抜糸した時には怪我から丸1ケ月が経過していた。

 

こんな事情もあって、40日間ほど雪山を自粛する事になりフカフカの雪山シーズンがほぼほぼ終わってしまった。2月末になんとか北横岳でリハビリ登山できたのだった。

 

尚、もうすぐ1年になるので傷跡はもうすっかり綺麗になっている。

 

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ここで、時間を逆回して3枚ほど写真を紹介。


転倒した時点で怪我したのはすぐに分かった。ただ、そこでズボンを下ろして確認する訳にもいかない。小屋に戻る選択肢もあったけど、先ずは先を急いだ方がいい。とにかく吹雪の中を抜けてしまおう。

 

樹林帯に入れば風を遮ってくれるので箕冠山まで登るのが先決、もうそれだけだった。山頂でズボンを下ろしてみた。うっ、皮膚が10数cmほどズリ剥けている。膝のサポーターを付けていたので余計に傷口が広がったのか、それとも逆に傷が深くならなくて済んだのか、この辺りの事情はなんとも分からない。

 

<ズボンを下ろしたら膝下がパックリ>

 

ガーゼや包帯は持っていない。ティッシュで拭いても血は止まらない。ただ、ゆっくり留まっていても体が冷えるだけなので、傷口にハンカチを当てて肌色の筋肉補正テープで固定して下山した。

 

オーレン小屋で小休止。傷口を確認しても変化ない。ちょうど同室だった登山者が夏沢峠から下りてきて「風がひどくて硫黄岳は諦めた」と話してくれた。まあここまでショートカットできたと思えばまあいいか。

 

<とにかく自分で応急処置>

 

夏沢鉱泉まで痛みもなく下山できた。アドレナリンのパワーって凄い。歯の治療をするたびに痛くて怖いのに、難なく下山できたのはある意味で不思議だった。

 

<夏沢鉱泉で消毒&包帯処置して頂いた>

 

幸い夏沢鉱泉で消毒と包帯など応急処置をしていただき事なきを得た。その後、下界の病院で11針縫ったのだった。お世話になった方々、本当にありがとうございました!

 

そろそろ今年も雪山シーズン。お礼参りに出掛けよう。もし吹雪でホワイトアウトであってもアイゼン歩行は慎重に、今年の冬はそう自分に言い聞かせて登ろう。