中東のパレスチナ・イスラエル問題はもう70年以上もこじれたままだ。いつまでも動かない中東の構図がある。

 

これって直近では米国がイスラエル大使館を移動させたり、イスラエルとサウジ、UAEなどとの仲介を始めたり、パレスチナを孤立化せんとする動きが悪影響を与えているんじゃないか。他にも、パレスチナ強硬派のネタニヤフ首相が復権していたのも状況としてよくないし、世界の目がロシアのウクライナ侵攻に集まって中東問題が霞んでいた状況も危機感に繋がっただろう。

 

<10/17「モーニングショー」より>

 

犬が敵と向かいあった時に襲いかかっていくのかシッポを巻いて逃げるのか、それは紙一重の行動だ。カタストロフィーの例として挙げられるものでもある。NATO拡大で危機感を感じたプーチンも、イスラエルの圧迫に苦しむパレスチナ人も同じような追い詰められた状況にあるのが遠因だ。ハマスが奇襲攻撃するから悪い、それは否定できないけど、その状況に追い込んでいったのは周到に追い詰めた側のデリカシー欠如と冷淡さの積み重ねが原因では。

 

そんな事を思ったのは、イスラエル問題について昨年ちょっと読んでいたため。以下はある本をベースにサマリをまとめたもの。

 

※高橋和夫氏(国際政治学者)の文章を読んで要約した拙文

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近年ではシリア内戦で、アサド政権を支援したイランと反政府勢力に肩入れしたイスラエルで対立軸があった。また、アラブ各国で正式な外交関係があるのはエジプトとヨルダンのみであり、イラン憎しを煽る事でサウジアラビアやUAEと接近する効果も得た。

占領地を除くと、人口870万人の75%程度がユダヤ人、残りがアラブ人だが、その人口動態を意図的に変えてしまおうとしている。出生率は3.1と他国と比べて高い値だが、更にユダヤ教の超保守派に限ると7を超えているのだ。

ヨルダン川西岸地区(僅かな土地に限って自治)とガザ地区(世界最大の監獄)の占領地には、500万人のパレスチナ人が暮らしている。Totalすると、人口1370万人のうち、ユダヤ人は670万人で少数派になる。

人口動態を戦略的に捻じ曲げようとしたり、占領地にユダヤ人の入植を強引に推し進めたりしている姿は異常だ。国民もユダヤ人、二級市民(イスラエル国籍を持つパレスチナ人)、占領下のパレスチナ人と階級を付けている姿はまるでアパルトヘイト国家だ。

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過密なヨルダン川西岸地区にイスラエル人を入植させたり、出生率こそ高くて喜ばしいが人口比でユダヤ人がパレスチナ人を追い込んだり、かなり陰湿な国家だと思った。アパルトヘイト国家ってかつての南アフリカと変わらないのでは。

 

そして今回もネタニヤフ首相が事件の発生を予見できていたのに、戦端を開く口実を得るために敢えてハマスの動きを看過していたのではないかとの憶測も出ていた。

 

<死海では塩の結晶モコモコと成長していた> ※2008年ヨルダンにて

 

私はイスラエルに入国した事がないので体験的に語れるものは何もない。エジプトのヌエイバからヨルダンのアカバに船で渡った晩、国境の向こうにエイラートの街の明かりがなんだか冷たく照らされているように感じたのを覚えているだけだ。アンマンから死海に向かった時も、塩辛い湖の西岸がイスラエルだと想像すると重苦しい気分になった。

 

イスラエル人は旅先で稀に会う。写真を撮ってもらおうと頼む時、ヒトと風景をいい割合で納めてくれるのがイスラエル人だった。アンマン郊外で撮ってもらった写真がなかなかいい構図だったので、勝手にそう記憶している。