木村拓哉と綾瀬はるかの映画。1月下旬は、映画「Legend&Butterfly」の宣伝で主役の2人を各局のバラエティ番組で毎日のように登場していた。綾瀬はるかファンにとっては見逃せない。
以下ネタバレあり。
織田信長ってもう十分いろんなドラマで描かれている。それぞれの視聴者にとって強烈な印象を持った俳優がいる筈。私の場合だと、むかしの大河ドラマで見た役所広司だった。大声で威圧的で勢いがあって、どれも同じ人物像だった。
でもこの映画に登場する木村拓哉の信長はちょっと違う。天下統一の夢に衝き動かされて突進したキャラではない。むしろ、マムシの娘・綾瀬はるか(濃姫)の野望にそそのかされて乗せられちゃった。乗った末に半ば狂気に陥り、でも四国攻めを最後に天下布武の実行部隊は家来に任せて自分としては戦も終わりにしたい、そんな苦悩がハッキリと伝わってくる内容だった。これが史実と合っているのか分からないが正しかった可能性も否定できない。なので、とかく新鮮だった。
桶狭間の前夜に策を決めきれない姿、僧兵の抵抗に苛立って半ばやけっぱちに「焼き払え!」と吐き捨ててしまう姿など従来の信長像と異なる。キムタク・ファンにとってはカッコイイだけの役柄じゃないので物足りない向きもあるかも知れないけど、私は面白かった。
<映画館にて>
綾瀬はるかは濃姫の局面ごとにキリリとして強い姫(鷹狩りでも夫婦ゲンカでも勝ち)、悩む妻、弱い女性と変化に富んだ人生を演じており、役者としてやりがいがあったんじゃないか。信長と京の町をお忍びでそぞろ歩いているシーンがあった。自分に興味のない信長、僧兵にまで狂気で迫る信長に嫌気がさした濃姫に、そんな幸せな瞬間があってもいい。そんな場面だった。
何年か前に綾瀬はるかが演じる事を前提にアテ書きした脚本で映画「本能寺ホテル」があった。現代に生きる綾瀬はるかが同ホテルのエレベーターに乗ると戦国時代にワープして、信長(豊川悦司)と会うストーリーだった。あれはあれで、綾瀬のほんわかしたムードで天下人・信長をマイルドに丸めていた。それと比べると濃姫は言葉もキツかったので、信長の尻を叩くのにはうってつけの役だった。
時代劇に欠かせない安土城での光秀による家康(どうしてあんなカッコ悪い変装させるのか?)への饗応と、その不始末に怒る信長。ここの解釈が旧来のものと異なっていた。そうなると、本能寺の変に繋がるロジックはどうなるのかと疑問に思ったがラストに向けた光秀の科白も一貫しておりスッキリ。
本能寺の変で炎上した場面から一気に場面がワープする。炎に包まれた本能寺の床板を剥がして、血染めの恰好で安土城に戻って綾瀬はるかと一緒に南蛮船に乗り込む……。
そうか、時代劇でこういう造りをして構わないんだ。全然いいと思う。夢の中ではもう戦なんかしなくたっていい。過剰な遊びがなくて良かった。もうちょっとで映画「タイタニック」のマネをやりかねない雰囲気だったのだ。
<映画館で配っていたポチ袋3種>
あと、劇場でこの映画ロケ地として滋賀県のパンフレットが置いてあった。稲葉山城を岐阜城と改める場面で、信長と濃姫が山城に立っていた。それは彦根で撮影したと書いてあった。去年、滋賀県に初めて足を踏み入れて雪の小谷城や雪の賤ケ岳を歩いたばかり。今年も滋賀を探検してみたい。