コロンボの街に着いたらどうしても済ませておきたい事があった。シギリヤのリバー・カヤックで水没したデジカメの復旧だ。幸いな事に撮影できる状態までデジカメは乾いていた。でも、水没したバッテリーは機能不全で動かない。もう1つのバッテリーは既に5日ほど使って残量が僅かなのでいつバッテリー切れに陥ってもおかしくない。

 

なので、とにかくどこかで充電しておきたかった。でも、コロンボに量販店があるとは思えない。駅前から続く小さな商店をずっと目で追っていった。街の電気屋さんとかカメラ屋さんがないものか。見つけた!

 

店に入って「充電して欲しい」と頼む。家族経営でやっている小さなお店だったが、30~40代の店主が「分かった」と応じてくれる。カウンター裏の引出しをガサゴソとかき回して、キャノン製の充電器を見つけてくれた。

 

「これで大丈夫だ。充電しておくよ」

この言葉に救われた。確かに自分が日本に置いてきたのと同じキャノンの充電器だった。こちらとしてもデジカメなしでは観光できないので「1時間だけ充電して欲しい」と頼む。

 

「それじゃあ完全に充電できないよ。それでもいいんだね」

「うん」

話が早かった。しかも、タダで構わないと言う。

 

チップとして少額のルピー紙幣を渡そうとしたのだが、なかなか受け取ってくれない。アジア人として共通の感覚で、こうした謙虚なやりとりは嬉しい。でも最後には無理やりルピー札を置いて店を出た。ありがとう。

 

この辺りの金銭感覚はヨーロッパとは違うな。私がスイスのWengenで同じ事を頼んだ時には5CHF(約450円)、北イタリアのBolzanoかどこかでは4EUR(約480円)を無表情で要求された。

 

充電できたので、安心して下町のペターを歩く。ザクロとかマンゴスチンってなかなか見かけない果物だな。

 

<下町のマーケット(2)>

 

 

<ザクロ売りの兄ちゃん、コロニアルな建物>

 

 

旅のはじめ、2日目には西海岸のニゴンボ・ビーチで沢山のスリランカ人が水辺で戯れていた。あの時は大人が多かった。それに対してコロンボのタージ・サムドラ・ホテル前に広がるビーチでは、波打ち際で足首あたりまで海水に浸かるくらいでスリランカの人達が戯れていた。

 

夕暮れ時だった。地元の子供たちが水辺でキャッキャと騒いで賑やかだった。凧を上げている子供もいた。露天商もビーチに並んで出店して、海産物を焼いていた。

 

<ビーチの露天(2)>

 

 

思えばこのスリランカ旅は総じて穏やかなものだった。平和な夕景色をボーッと眺めつつ、もうこれでスリランカ旅も終わってしまうのかと思い返すと、ふと淋しくなる。

 

<タージ・ホテルはビーチ沿い、ホンモノの桟橋なのか>

 

 

かつてボンベイでは空港行きのタクシーに乗ってから、思わぬ展開が待っていた。タクシーが赤信号で止まった時、車窓が5cmくらい開いていて、そこから若いインド人女性の手がヌーッと伸びてきたのだ。そして笑顔で一言。

「バクシーシ(お金ちょうだい!)」

 

喜捨に関してはその時の気分、相手の状況に応じて渡したり、断ったり様々だ。その時はあまりに突発的な申し出に意表を突かれたので反射的に「ノー」と拒絶してしまった。でも彼女は悲しい表情を浮かべる訳でもなく、笑顔でスーッと手を引いた。日本人にここまでの余裕はないんだな。

 

今回の旅はやすらかなるスリランカの大地だったので、同じようなドラマを期待するには無理がある。もちろんハプニングを望む気分でもなかった。穏やかに空港行きのタクシーに乗り、これで今年の夏休みが終わったんだと自分に言い聞かせた。

 

【2023.4.22追記】延べ13回に分けて書いたスリランカ旅行記を再編成して弊HPにまとめました。宜しければご参照下さい。