翌日、サチコさんのゲストハウスの共同経営者・ニサンガの運転で、有名なスリランカ人建築家・ジェフリー・バワ(1919~2003年)のホテル「ヘリタンス・カンダラマ」を見に行く。

 

ジェフリー・バワが建造したホテルはいくつかある。その中でどこか1つシギリヤ周辺で見たいと思っていた。トロピカル・モダニズムってどんなものなのか、折角のスリランカなのでリアルに触れてみたかったのだ。

 

途中、ダンブッラの街に寄って石窟寺院を見学した。ここも世界遺産に認定されている。黄金ブッダ像の下にある怪獣みたいな造作はなんともユーモラス。左手に伸びている緩い坂を登って石窟寺院を見学した。石窟の中に建てられた小さな尖塔はミャンマーで見たパゴダと同じ形だったな。ただ、ダンブッラの事はこれ以外に全く印象に残っていない。

 

夕方、ヘリタンス・カンダラマに到着。人工湖があったり、開放的な空間で眺望は素晴らしい。「歩き方」にはジャングルの中って形容詞があったけど、草原の中に佇むホテルと称するのが相応しい。

 

<ヘリタンス・カンダラマ(3)>

 

 

 

あわよくばこの高級ホテルに1泊しようと狙っていたのだが、あまりに値段が高い。1泊220ドル前後だった。

 

泊まるのを止めたのにはもう1つ理由があった。一般にコンクリート打ちっぱなしの建物は無機的だけど、曲線がカーブを描いているとか、螺旋階段に惹き込まれれるなど幾何学的に綺麗なデザインだと癒される。そういう建物は好き。例えば、代々木のオリンピック・プールだ。

 

四角四面のビルでもセンスが良いのはある。例えば今はなき銀座ソニービル(設計:芦原義信)は回廊型でわざわざ1つ上のフロアに上がるって手間を感じさせない構造が好きだった。同じく、1991年に建替えられた銀座の王子製紙ビル(Kajima-Design)も高層ビルなのに銀座4丁目の交差点から敢えて視界に入らないように静かに立てられており、センスを感じる。

 

勿論、四角四面でもユニークな造形を生み出す事はできる。吉阪隆正が設計した八王子の大学セミナーハウスがその好例だ。あの楔形のビルって一体どんな発想で生まれたんだろうか、あれは写真を見ただけで強烈なインパクトを与えてくれた。

 

<ヘリタンス・カンダラマ(+3)>

 

 

 

実は、最近個人的に気になっているユニークな建築家がもう1人いる。茅野市や近江八幡市に作品がある藤森照信の建物だ。2021年に浜松市天竜区にある秋野不矩美術館に知人の個展を見に行ったのだが、いかにもアジアな建物の方が気になってしまい、肝心の写真展の印象が薄くなってしまったほどだ。久々に「ゲゲゲの鬼太郎」の家みたいなツリーハウス(マレーシアのブンブン・ハウスも似ている)に泊まってみたい、そんな欲望を想い出した。

 

さて話を戻そう。この「ヘリタンス・カンダラマ」は屋外空間が開放的で美しい。でも、なんだか建物そのものは四角四面で美しさを感じなかったし、もう朽ち始めているように感じてしまったのだ。

 

日本でも、吉阪隆正が設計した立山の某山小屋のように建てたばかりはどんなに美しかっただろうコンクリート建築でも、時が経てば中の鉄筋が錆びたり、コンクリが腐食して表面が剥がれてくると厄介だ。

 

なので、この日はシギリヤに撤収して、サチコさんの宿にもう1泊お世話になる事とした。スリランカ・スタイルのカレーがまたまた食べられるのだから絶対にこちらがオトク。

 

【註】カヌーが水没して私のデジカメが動かなかったため、ダンブッラの写真は撮れていない。ネットで「ダンブッラの黄金寺院」の画像をチェックして欲しい。また、ヘリタンス・カンダラマの写真もサチコさんに撮って頂いたものである。

 

【参考】吉阪隆正