いかつい表情を崩さない山崎努が、8月の日経「私の履歴書」に登場した。最初に驚いたのは自分を「私」でも「俺」、「僕」でもなく「努くん」と称して文章を書かれていた事。あの顔面の個性とは全く似つかわしくないカワイイ自称だったのだ。

 

コロナ禍で東京と地方の二重生活になってしまったので、行動予定もコロコロ変わるしその度に連絡するのも億劫になって定期購読を中止してしまった。なので、リアルタイムだと旅先の列車でたまに読んだくらいで、9月のFP1級試験が終わってから一気読みしてみた。

 

<2022年8月・日経サイトより> NHK「価格破壊」かな


山崎努と言えば、山田太一・脚本のフジ「早春スケッチブック」が強烈なインパクトだった。いかにも山田太一らしいシナリオ本を読んで、あまりにもくどいキャラだったので山崎努の演技を見てみたいと思っていた。山田太一が好む男優と言えば鶴田浩二と緒形拳、杉浦直樹、そして山崎努だ。前の3人は役柄としては静かな男、それに対して山崎努は対照的にエネルギーを発散させているキャラだった。

 

<2017年7月・早稲田大学演劇博物館にて>

 

1980年代当時はリアルタイムで視聴できていない。ずっと後になってレンタルビデオで見た作品だ。「ありきたりの生き方をするんじゃない!」と言い放ってまだ新人同然だった鶴見慎吾を振り回して、岩下志麻・河原崎長一郎夫婦に対して吠えては翻弄する。樋口可南子も振り回されていた。もう我がまま放題の演技。古い洋館に一人で住んでいたけど、庭で焚火だったか焼き芋だったかしていたシーンが記憶に残っている。

 

演じている本人はきっと楽しかったんだろうな。実際「私の履歴書」にもそんな記述があった。

 

他にも、昭和の作品ではNHK「けものみち」の小滝さん役や「価格破壊」が記憶に残っている。いずれもギラギラした役どころだ。「急がなければ腐ってしまう」って和田勉のエピソードは面白かった。

 

「俳優の演技は心の動きと表現がほぼ同時に進行している。生きのいい演技ほど心の動きを『言葉』に整理する時間がない」と書かれていた。シナリオに書かれている事はあくまで芝居の一部。悩んで悩んで演じられているんだろう。

 

若い頃の芝居の話はこちらが付いていけないのが残念だった。最近ではTBS「クロサギ」とかNHK「正直不動産」くらいか。今秋にリメイクされるTBS「クロサギ」はやっぱり前作と比較してしまうな。


3.11東日本大震災の後で作られたNHK「キルトの家」は山崎努を筆頭に良い役者が揃っていたけど、あのドラマでは山田太一の脚本に入り込めなかった。年齢に相応しい役で画面に登場してもらえたら嬉しい。