本日は5章「RAS公開鍵暗号」について書く。

 

偶に書いている数学絡みのブログはアクセス数がガクンと落ちるのは悲しいけど、数学の世界は綺麗なので時々書いていくつもり。


(1)感想

この言葉は知っているものの、何も語れるものがない。楕円関数を使った暗号の方が普及してきているとどこかで読んで、まあいいかと思っていた程度だった。

 

「パスカルの三角形」が出てきた。数ケ月前に加藤文元「数学する精神(増補版)」で出てきたばかりだった。これが整数論に絡んでくるのは面白い。高校数学に登場したコンビネーション記号(nCk)って順列・組合せで出てきたものだが、n=素数(p)の時にpCkの値が整数になるのを改めて考えた事もなかった。

 

それともう1つ懐かしい記号が登場した。オイラー関数φ(x)だ。これも1年半ほど前に習ったのだが、受け身な状態だったのとあまりに壮大な話に展開していったので、脳震盪でも起こした勢いでスコンと忘れていた。

 

この本は4章「PCR検査」でもこの5章でも、ちょっとEXCELで手を動かして試してみたい衝動を与えてくれるのが嬉しい。

 

(2)手を動かしてピタゴラス数を探す

ピタゴラス数(a^2+b^2=c^2)の一般解の公式が載っていたので、(3:4:5)とか(5:12:13)を起点にして順に代入してみた。二乗計算を繰り返していくのであっという間に桁数が爆発的に増加していく。5回ほど繰り返していくと、EXCELの限界をオーバーして正しく計算してくれなくなった。(黄色セル)

 

(5:12:13)以外にも(239:28,560:28,561)など極めて鋭角的な直角三角形が登場するケースも目立つようだ。(太字箇所)また、一般解でaとb(a<b)が必ずしも同じ順番で導出される訳でもないと判った。(緑色セル)

 

<表1:ピタゴラス数を順繰りに探す>

 

起点となる三角形の短辺がいずれも素数になっているようで、長辺も素数っぽい数字に見えた。上の表に短辺=3,5,7が載っているので、次は11だ。そこで探してみようと思ったのだが手計算では直ぐに思い浮かばない。そこで、(11:偶数xx:もっと大きな素数)って組合せのピタゴラス数が存在するのか探してみた。真ん中の辺は常に偶数になっているのでこんなEXCEL表を作ってみた。

 

<表2:短辺=11のピタゴラス数を探す>

 

80までの偶数、79までの素数をmatrixにして洗ってみると、確かにあった。(11:60:61)だ。念のためピタゴラスの定理が成り立っているのか確かめてみると

11^2+60^2=61^2

121+3,600=3,721

なのでホントに正しい。尚、Google検索してみると、もっとロジカルにピタゴラス数を探し出しているサイトを見つけられたし些か恥ずかしくなった。

 

(3)RAS暗号は強力なのか

これはp.249に載っていた例を確認してみたもの。1桁数字の5乗は計算できても、2桁数字の77乗は計算できなかった。どうやら11の77乗をEXCELで計算すると「1.53899339938803E+80」となり、80桁になり読み上げ不能な数字になる。と言うかEXCELでは先頭15桁までが正確に表示されて、残りはゼロ表示になる。自分がIT企業で基幹業務システムに関わっていた時にも100兆円(15桁くらい)を超えると桁落ちしていたので、一般にはこれで十分強力な暗号だと思えた。

 

<表3:暗号化と復号化>

数理哲人の本「味わう数学」はなかなか面白かった。この本は5章構成になっている。これまで4回に亘って2~5章について感想を書いてきたが、1章は私の苦手な音楽とか物理の素養が要求されるのでそこはノーコメント。これでこの本の感想は終わりとする。