緊急事態宣言中にコロナすごもり生活している頃、書店で「ロマンティック数学ナイト」本を見つけた。パラパラとめくってみると、数学をテーマに明るいイベントを開いている事、そもそもそんなイベントを開催する団体が存在する事に驚いた。

 

<表紙>

 

(1)この本の感想

15くらいの章に分かれていて、これまでの発表が載っていた。どうやら1人8分程度のスピーチが元になっているようでそのレベルは初心者向けもプロ向けも混在しているようだ。いくつか読んでみたけど、素数の話とか明らかに話者が楽しんでいるのが判る。ゼータ関数の模型を作った人とか、関数を愛しているのが伝わってくる。巨大数って言葉は初めて知ったが、ここは想像が及ばず何ともコメントしようがないな。

 

同書の後半に「クロネッカーの青春の夢」章があった。ここにx^n-1(xのn乗マイナス1)の因数分解が載っていた。nは自然数で1~10の解が書かれていた。子供の頃に習ったものだと、例えば

x^2―1=(x+1)(x―1)

がある。

 

面白かったのはn=9と10の場合でそれぞれ2通りに因数分解できると言う。それってアリなのか?

 

これまで4次方程式くらいまでは見た事があったけど、それらは必ず1通りにしか因数分解できなかったと思う。例えば

x^2―5x+6=0

であれば、それを因数分解するには

(x―2)(x―3)=0

しか考えられず、その解はx=2と3と一意に決まっていた筈だ。

 

自分で手を動かして確かめていないので不用意に記述できないけど、xの次数が低くなっている因数分解の方が正解であって、まさかバラバラの解が求まる訳ではないだろう。

 

(2)線形代数のZoom

さて、この本をキッカケにして無料のオンライン・セミナーを1つ受講してみた。私の苦手な線形代数である。ちょうど線形代数のimageを持てなくてモヤモヤしている時だったのでありがたい機会だった。そこで講師が「行列は比例関係」、「線形代数は比例の多変数版」って優しくに語ってくれた。

 

行列の先に固有値があってAx=λxって式が出てくる。確かに固有値λなら1つの数なので比例と言われてスンナリ伝わるのだが、行列だとそこまで想像を膨らます事はできていなかった。確かに変数aを使ったy=axと行列Aに対するy=Axは同じような形式をしているのだから、広い意味で同義と言えるのはやっぱり感性なんだな。

 

これまで「連立方程式をシンプルに記述したのが行列」って導入部から始まると、なんとも近づききれない隔たりを感じてしまい、どうしても後の話が耳に入って来なかった。1つの連立方程式で個数と金額を求められるとかヤケに具体的な導入部から始まると、だからなんなの! と斜に構えてしまうのだ。ここが自分にとって線形代数の躓きだったように思う。固有値とか対角化もテクニックとして判るけど、ずっと精神的な距離を感じていた。なので、講師の「比例」って言葉はこちらをとてもラクにしてくれた。

 

ちなみにこのZoom講義はイントロダクションであって、本講義は8~10回ほど用意されていた。しかも、現役の京都大学の院生が少人数制で教えてくれるってチャンスはなかなかないし、説明がハッキリして分かりやすかったので心が揺れた。