前からこの鉄道のお堅い名前は何なのか、と疑問に思っていた。でも、この沿線にマタギの里が在ると云うし、そういう昔ながらの領域を走っているからこそ、案外こんな昔かたぎの名前が似合っているのかも知れない。乗ってみて、この名前が良いと思った。
<車両(2)>
車両は一両編成。沿線はずっと田園風景と谷合いの森が続いている。所々は阿仁川が平行して流れていて、車窓から澄んだ水面を見られる。かなり高い位置に鉄橋を構えていたみたいで、覗き込むように真下を見下ろした箇所もある。見ていると、飯山線の車窓の雰囲気と似ているようにも思った。あの路線も雪道を延々と走るし、ゆったりした千曲川沿いの線路である。
<雪国の景色、阿仁川は澄んでいる(2)>
車内には吊り広告があったと思うけど、左右の天井傍の丸みを帯びたスペースには広告はゼロ。その代わりに、秋田犬の写真がズラッと並んでいるのがなかなか珍しい。ワンコ好きの人にはいいかも。
<秋田犬の写真(3)>
元々、南端の角館から松葉駅までの国鉄・角館線、北端の鷹ノ巣から比立内駅までの国鉄・阿仁合線がそれぞれ分かれて通っていたとか。鷹角線として1本に繋ぐ計画はあったものの、その2路線が分断された時期に国鉄分割民営化で秋田内陸縦貫鉄道として再スタートし、その後角館~鷹ノ巣を結ぶ路線になったとの事。
駅に置かれたパンフレットで平成30年のこの鉄道の歩みを見ると、金銭的にはかなり辛い道のりだった事が分かる。これだけ右肩下がりが続く棒グラフを見る事はなかなか珍しい。利用者減少が続く現実がある以上は、如何ともし難いものがある。ここに限らず、インバウンド需要に期待したい街は沢山あるなあ。次は新緑の季節か、森吉山の夏道を登る時に訪れてみたい。
<平成30年の歩みは厳しい(2)>
でもこの鉄道スタッフは明るい。角館駅や阿仁マタギ駅では駅員さんが笑顔で見送ってくれたり、急行列車にはattendantが同乗して記念撮影に座席を回ったりされていた。他に、特別列車では限定グッズを販売したり、長いトンネルの中で照明を消すと天井に秋田犬のデザインや星が浮き立つ仕掛けを施したり、経営努力を続けられている。
<4人席の窓際のミニテーブルに路線案内、特別列車ではソファー型の座席も(2)>
あとattendantさんの話を聞いていて面白い事も知った。この沿線に笑内(オカシナイ)という駅名がある。当て字だ。元々アイヌ語で「鮭取り漁師の小屋」って意味らしい。そうか、阿仁合の村も元々はアイヌが棲んでいた所なのか。ちょうど昨年6月に北海道・阿寒町に行ってアイヌコタンを彷徨ったばかりだったので気になった。
【参考】旅のHP:アイヌコタン
https://ystaf.net/2019/09/28/雨の阿寒湖、阿寒町/
<笑内の菓子、秋田駒ケ岳>

森吉山スノーシューを終えて列車が角館駅に近づいてくると、左側の車窓には真っ白いヤマが見えた。急行列車のattendantさんも「これだけ綺麗に秋田駒が見られるのは今シーズン初めて」と言っていた。秋田駒ケ岳、冬は道路が閉鎖されているので雪山登山も難しいらしいが、ここもいつか夏に登りたい山だ。