先日、台風19号の事でTBSドラマ「岸辺のアルバム」を思い出したばかりだった。その主役が八千草薫なのだ。


※中央が八千草薫と杉浦直樹。両端は国広富之と中田喜子。山田太一脚本

それから半月も経たない内に訃報なんて悲しい。最近は、健康食品のCM等で品の良さそうな人柄がそのままに感じられていたのに。

2006年頃のTBS「白夜行」では、和服姿でワルな綾瀬はるかのお婆ちゃん役をされていたなあ。

でも、私にとっての極め付けは、1970年代末のNHK「阿修羅のごとく」だった。脚本・向田邦子、演出・和田勉の重厚な土曜ドラマだった。テーマ曲からして重苦しかった。加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュンの4姉妹でしっかり者の次女役を演じていた。旦那役はたしか緒形拳だったと思う。2000年以降に製作された映画版(見ていない)があったけど、全然格が違う。

優しくてしっかり者でも、全ての事にそんな聖人のように接する事が出来る訳じゃない。心の葛藤はあるのだ。母親役の女優(新珠三千代?)も、八千草薫も、阿修羅のようなドロドロした一面を隠し切れずに顔を覗かせる瞬間がある。

具体的なシーンを思い出せないけど、やり切れない思いをぶつけるようにバキッと箸をヘシ折る様な衝撃的なシーンがあったと記憶している。

鶴田浩二の遺作NHK「シャツの店」では夫婦役だった。ガンコな旦那に優しく付き従っていた姿を思い出す。でも、そんな穏やかな一面だけではない。ドラマの終盤で八千草さんが怒って家出してしまった。最後は確か、鶴田浩二が平田満(記憶に自信なし)に促されて頭を下げに行ったんじゃなかったか。

※どちらも山田太一脚本作品
上:NHK「シャツの店」
下:TBS東芝日曜劇場が連続ドラマに変わった記念すべき第1作目「丘の上の向日葵」

※写真の出典はいずれもこの展示会。
※冒頭の新聞切り抜きは日経。

八千草薫も鶴田浩二も山田太一が好んで繰り返し出演してもらった俳優さんだ。私が川崎で山田太一さんとお会いできたのは1985年くらいなのでもう遠い昔だ。

70〜80年代には未だに色褪せないドラマがあり、記憶に残る俳優さんがいた。

いつも柔和な表情で優しい声。なんとも惜しい。