CVV的おすすめ本:『反貧困 ―すべり台社会からの脱出』 | CVVのブログ

CVV的おすすめ本:『反貧困 ―すべり台社会からの脱出』

舫<もやい>:NPO法人 自立生活サポートセンター という活動を知ったのは、昨年、日向ぼっこ に訪問した際に市川太郎さんがサロンにあるパンフレットをくださって「面白い活動をしているんだよ」と教えてくださったことが最初だ。その後、『ビッグイシュー 』やNHKの福祉ネットワークなどさまざまなメディアで詳しく<もやい>の活動を知ることになった。「舫(もやい)」という言葉のもともとの意味は、嵐が来た時に小さな漁船同士を結び合わせて転覆しないようつながりをもつことを指す。そんなふうに現代日本において支えあう仕組みをつくろうとしているのだ。 


今回のおすすめ本である『反貧困』は、この<もやい>の代表である湯浅誠さんがすべり台のように一度失敗したらすべり落ちてしまう社会になりつつある日本社会の現状を、これまでの実践で出会った貧困状態にある人を紹介するなかで自己責任論に対して丁寧に応答し(第1部貧困問題の現場から)、貧困問題にチャレンジする<もやい>の実践および反貧困の社会をつくるために重要なこと(第2部「反貧困」の現場から)という構成でまとめたものだ。


第1部の貧困状態に陥ることは、「五重の排除」であるという整理が頭に残った(pp.59-62)。教育課程からの排除、企業福祉からの排除(雇用のネットからはじき出されること)、家族福祉からの排除(親や子どもに頼れないこと)、公的福祉からの排除、そして五番目が自分自身からの排除(上記の四つの排除により、自暴自棄になり自分を否定し、最終的には自殺にまで追い込んでしまう、自己責任の内面化)である。


<もやい>の活動は、住所不定状態にある人たちに対するアパート入居時の連帯保証人提供と生活困窮者に対する生活相談を二本柱としている。湯浅さんが伝えてくれる概念のなかで「溜め」というものがある。“溜め”とは溜池の「溜め」であり、「大きな溜池を持っている地域は、多少雨が少なくても慌てることない。その水は田畑を潤し作物を育てることができる。逆に溜池が小さければ、少々日照りが続くだけで田畑が干上がり深刻なダメージを受ける。このように“溜め”は外界からの衝撃を吸収してくれるクッションの役割を果たすとともに、そこからエネルギーを汲み出す能力の源泉となる」(p.79)湯浅さんは、この有形無形の“溜め”をつくることが貧困やホームレス状態にある人達にとって重要だと考えている。頼れる家族・友人・親族がいることは人間関係の“溜め”があること、また自分に自信があること、自分を大切にできることは精神的な“溜め”があることだという。


<もやい>の活動の二本柱のひとつ、生活相談で重要な意味をもっているのが、居場所作りであるという。そして、<もやい>では当事者間の相互交流や居場所作りに力を入れている(pp.136-141)。居場所そのものが、人間関係の“溜め”をつくる場でもあるからだ。自分自身の排除状態になっている人が、「たとえ生活保護を受けて最低限の生活基盤を確保したからといって、翌日から『二四時間戦えます』と変貌することはあり得ない。人間は機械ではない」のである。


本書のp.140にある図は、「反貧困」の活動を支える両輪の図である。図における当事者のエンパワーメントのなかに書かれている言葉を見て驚いた。「居場所」の確保、自信を持つ、受け入れられる場、技能を活用できる場、自分が尊重される、友人ができる、情報を増やす…。これらの言葉は、これまでCVVメンバー&スタッフが、みんなの会等のイベントを企画する際に、その目的や方法を話し合いながら決めていく過程で繰り返し出てきた言葉だったからだ。この図を見て、現代の日本において確かに必要な新しいチャレンジをされている湯浅さんから励ましをいただいた気持ちになった。貧困がなくなる社会に!と闘うときにも居場所は必要だという。「闘うためには、闘わなくていい場所が必要だ」という言葉は、もっともだと思う。


児童養護施設で生活する子どもたち、退所した若者たちは、“溜め”を持ちづらい状況で生きている。居場所というのは、“溜め”を回復する場所なのだと自分たちの活動をふりかえり、思いをはせる機会となった。 


(ぴぴこ、CVVニュースレター第7号 2008年6月発行より)

               

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書 新赤版 1124)/湯浅 誠

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