12月14日の1級キャリアコンサルティング技能検定試験に向けて受検準備を進めている方、

まだほとんど試験に向けてはなにもしていないという方、

個々のご事情などから様々な状況があると思います。


日頃から他のキャリア形成支援者の事例の相談を受けている場合は、

特に試験に向けた準備に焦りはないのかもしれません。

そしてそうした実践場面に乏しい、経験値が少ないという場合には、

キャリアコンサルティングと事例指導面接の違いを体得までいかずとも、

会得できている水準には整えておきたいところです。


例えば、1級の論述試験では、相談者と事例相談者の関係性の中にある複雑な構造を読み解きながら、

事例指導者としてどのように関わっていくかを考えることが求められます。


事例を読むとき、

まず目に入るのは相談者の状況や語りかもしれません。

その記述されている言葉には、表面的な問題や課題だけでなく、

それを語っている人の感情や価値観、

そして時には言葉にならない思いなどが潜んでいるかもしれません。

※「それを語っている」といっても記録に記述しているのは事例相談者であることから、

それを記述している事例相談者の感情や価値観、考えや思いなども文字に含まれていることでしょう。


記述されている言葉を丁寧に拾い上げることが、

事例の理解につながることがあります。

同時に、記録をまとめた事例相談者が、

どのようにその言葉や語りに向き合っているのか、支援の意図や配慮、あるいは可能性や限界などにも目を向けていく必要があります。


ただ、試験時間は80分間と限られていますよね。

丁寧に拾い上げていくといっても、その場でできることにはそれぞれで異なりがあるかと思います。


論述試験では、事例相談者の支援を評価・指摘するような視点に陥りがちですが、

事例指導で目指すのは「指導」というよりは一貫して「支援」の姿勢が必要です。


事例相談者がどのような思いでその関わりをしているのかを理解し、

その人がより善い支援を行えるよう、伴走していくような姿勢が大切なのだと思います。


事例相談者の支援の持ち味を理解して、

成長的な課題を共に探り、その達成に向けて方向性を共有していく。

この対話プロセスの中で、事例相談者自身が気づき、自ら成長していけることが、

事例指導者としての関わりの本質なのだと思います。


理論や知識は、そうした支援の言語化を助けてくれる道具。

相談者の状況を整理したり、事例相談者の支援の意図を補強したり、

事例指導者としての関わりを裏付けたりするために使うものだと思います。


事例には、唯一の正解があるわけではなく、

だからこそ、事例相談者のその事例に誠実に向き合い、

事例相談者が実際にそこにいるかの如く、

事例相談者の視点と言葉、そして自分の視点や言葉を合わせて考えていく必要があります。


記録に描かれた相談者の語りにどう耳を傾けるか、

事例相談者の支援のあり方にどう向き合うのか、

事例指導者として目の前の事例相談者とどんな関係性を築いていけそうか。


そのすべてが、事例指導者の実践力と人間性に根ざした営みになるのだと考えます。


試験まであと1ヶ月強。

論述過去問を解くというよりも、事例を味わうように読んでみる時間を持ってみてはいかがでしょうか。

仲間同士で事例の読書会を行うことも意味深い時間と場を創ることになるかもしれません。


記録をまとめたキャリアコンサルタントの営みを丁寧に読み解きながら自身のあり方を問い直す…

そんな時間が、試験本番の論述にも、

そしてその先の実践にもつながっていくのではないかと思います。