たとえば、上司と部下との面接場面や、
クライエント支援の場面など、様々な面接のシーンの演習を想定してみます。
「目の前の人の力を信じる」
「気づきを待つ」
「伝わる問いかけをする」
といったニュアンスの表現に出会うことは多いものです。
その響きは、
あたかもそれが支援者のあるべき姿のように映し出されることがあるかもしれません。
目の前の人の主体性を信じて任せている、
委ねていると言いながら、
実際には、自分の期待する通りに動いてくれるのを待っていることになっていたり、
人の可能性を信じると言いながら、
自分の理想を満たしてくれることを求めていたりする…
そんな状態に気づくこともあるのではないでしょうか。
思いとして
「信じている」「待っている」「留まる」
といった意識を大切にしたいと考えている。
一方で、
「相手が変化すること」「気づくこと」
を期待して、相手にそれを求めていることもあるかもしれません。
その場合、本来の意味での信じるや待つ、
留まるとは異なるもののように思うこともあります。
その根底について考えてみることも大事な学びだと考えます。
目の前の人のことを信じて待つ、
その人のペースを尊重してそこに留まる、
このような表現は、公認心理師の勉強会などでもよく出てきます。
なんだかいいことを言ってるような…
知らず知らずのうちに、
相手に対する無言の要求や、
意図したプレッシャーとして働いてしまう側面もあるかもしれません。
これはキャリア形成支援者同士の事例指導やスーパービジョン等でも、
同じことが起きているように思うことがあります。
キャリアコンサルタントが集まる学びの場でも、
「相手が自ら気づきを得られるような関わり」
「内省を促すよい問いかけ」
「目の前の相手の力を信じる」
といった言葉が頻繁に、
そしてわりとどこでも取り上げられています。
私自身も研修や講座の場でそうした言葉を発することがあります。
気がついたこととして、
多くの方がそうした講師の言葉に注意を向けて、
(もっと相手の力を信じなければ、相手は気づけない)
といったような解釈をしていることがあるということ。
この解釈と意味の認識には、
概ね、大きくふた通りあるように考えています。
ひとつ目はあまりよろしくない例ですが、
支援者自身(事例指導の場面では事例指導者自身)が面接の中で、
「相手が自ら気づきを得てくれるはずだ」
と期待し、ただそれを待っている、
相手を信じているという認識が、
相手が変化すべきという意味合いにとどまっているとしたら…
それは、面接支援の本来の意図とはまるで反対を向いているような気がします。
支援のあり方を表しているような言葉の裏側で、
実は支援者側が「気づき」や「変化」を相手に求めているだけになっていないか。
「よい問いかけ」のつもりが、
支援者側の思惑や正解の押し付けになっていないか。
対人支援の現場で耳触りのよい言葉が使われるときほど、
その言葉が形骸化していないかと考えることも大事なのかもしれません。
単に相手に求めているだけの状態に陥っていないかと…
実践と同時進行的に自らに問いかけてみることが、
意味深い自己成長につながることもあると思います。
ふたつ目は、肯定的な側面から考えます。
「相手の力を信じる」ということや「待つ」ということを、
相手に対して特定の変化や結果への期待としてではなく、
目の前の相手の振り返りプロセスそのものへの信頼として受け止めるあり方です。
相手が今迷っていたり、
答えを出せずに立ち止まっていたり、
あるいは後退しているように観えたとしても、
その状態をまずはそのまま受け止められること。
またあたかもその人の立場からそれを味わっていくような、今ここでの集中力を途切らせないこと。
間違っても
「いつか(こちらが望むような)気づきを得てくれるだろう」
と結果を求めて待つのではなく、
この過程を大切にできるということです。
「相手なりの歩みを進めていく力が備わっている」と、
指導者自身が腹を括って共にその場に留まることがそうしようとしなくてもできていることなのかもしれません。
そこから生まれる問いかけは、
決して支援者側の思惑でどこかに導くためのものではなく、
相手が今観ている景色を一緒にみようとする伴走の中で、
自然と立ち現れるものになるように思います。
こちらの期待する方向へ相手を動かそうとするのではなく、
相手の中にある力を信じて、ただ共にあり間を大切にしながら考え抜き、
微妙なズレさえもお互いに豊かに感じる関係の場を創る。
そうしたスタンスに立つためにも、
常に立ち止まって自らのあり方を省察していくことが大切なのだと感じています。
今夜は、オンラインで、
CVCLAB主催1級キャリアコンサルティング技能検定試験対策講座を開催します。
今回は前編と題して、
第14回1級論述過去問の問1から問3までを活用し、
実際の事例指導と照らし合わせながら、
受講者の皆様と一緒に考えを深めてまいりたいと存じます。
プログラム内容は、この記事の内容と連動するところもありますので、
ブログを読んでいただいた方は、上記の点などにも触れながら、
講座の時間を豊かに楽しんでいただけたらと願っています。