だいぶ前にこのブログで話題にしたことですが、

改めて、ここにひとつの表現を用いて、事例指導者の指導力における

思考・行動特性というものを考えてみます。

 

事例指導において、重要なキーワードともなる

「事例相談者の気づきを促すこと」について…

 

読者の皆様とご一緒に考えてみたいと思います。

 

実際の指導場面や試験のロールプレイの中で「気づきを促す」と言ったとき、

指導者の役割を担う人は、どのような関わりをイメージしてするでしょうか。

 

あえて言葉に表現するなら、

大きく二つのアプローチがあるように感じています。

 

ひとつは、事例指導者側が

(ここが問題・課題だな)(こうすればいいのに…)と見立てたポイントへ、

事例相談者の視線を誘導していくような関わり。

言い換えれば、

「指導者が気づいたことに事例相談者を気づかせる」

という思考処理と言えるかもしれません。

 

もうひとつは事例相談者がそもそも気になっている点、

この事例で引っかかっている点を中心に話を深めていく関わりがあります。

これは事例指導者の気づきに気づかせるのではありません。

 

事例相談者自身が本来持っている気づきから、

仮説を膨らませていく、または視点を増やしていく力を発揮できるよう伴走し、

本人の内側から気づきが立ち上がるプロセスを支援していくようなイメージ。

 

1級の実技試験(論述もロールプレイも口頭試問も含む)が

指導者のスキルや思考・行動特性を測る場だとしたら、

上記の二つのアプローチ、どちらのあり方がより相応しいと考えられそうか。

 

これは別にキャリア形成支援の業界での話にとどまりません。

 

指導者を養成する様々なプログラムの中で、

本当に重要なポイントとなるはずです。

 

恐らく分野を超えて、

多くの方が後者のアプローチの大切さを実感されていらっしゃるのではないでしょうか。

 

前者のような関わりは、事案をスピーディに処理する、

緊急的な事態を解決、回避するためには有効な場面もあるかもしれません。

 

一方で、前者のあり方は、

どうしても指導者側の持っている正解らしきものに、

相手を当てはめようとしがち、押し付けてしまいがちです。

 

これでは、事例相談者自身の考える力や、

現場で未知のケースに出会った時の対応力を育むことには、

実際に繋がりにくいという見方もあるのではないでしょうか。

 

後者の関わりは、

(事例相談者は今、どんな景色を見ているのだろうか)

(どんな前提を持っているから、このケースに難しさを感じているのだろうか)

と、相手の言葉の意味世界を深く理解しようとする姿勢から始まるのかもしれません。

 

試験で測定されている思考・行動特性とは、

単に適切なアドバイスが言えたか…という表面的なスキルではないのでしょう。

「事例相談者が自ら気づきを得られるような対話空間を、どうやって共に創り上げようとしているか」という、

事例指導者としての前提や姿勢そのものが観られているのではないでしょうか。

 

そもそも、試験官に観られているからといって、

そのように振る舞うわけではありませんが。。。苦笑

 

実際の面接の場でこれを体現するのは、本当に難しいことです。

 

指導者側にも豊富な経験等があるからこそ、

事例相談者の話を聴いていると瞬時に(こうすればいい)という見立てが浮かんでしまうものです。

その自分の見立てを一旦脇に置き、相手のペースに合わせて探索を支えていくためには、

これまで培ってきた素早く解決に導くという成功的な体験みたいなものを、

少し手放してみる勇気が必要になるのかもしれません。

 

気づかせるのではなく、気づきが生まれる場を支える…

それが気づきを促すということではないのでしょうか。

 

1級への挑戦というものは、新しいスキルや理論、技法を足していくというよりも、

ご自身の指導者としてのあり方や思考の癖を見つめ直す、

とても深くて善き機会であり、考え抜く、問い続ける学習プロセスのようにも思います。

 

何事もこたえはひとつではないと思いますが、

この記事が、今後の指導者のスタイルを考えてみる、振り返ってみるような、

そんな小さな手がかりになれば幸いです。