本日は先ほどまで九州大学病院で模擬患者の研修会でした。
後半には、医師学生役と患者役、
そして観察者役の3つの役割をグループで行いながらフィードバックを繰り返すワークを行なっています。
やはり対面でこうしてリアルなワークを他の方々と一緒に行うことは多くの発見があります。
あらゆる現象において事前に準備されたものはひとつもなく、
その場だからこそ偶発的に起こることでもあり、
本当に参加されている人にとっての宝物となる数々の体験があるのだと思います。
明日の朝からは東京へ移動。
都内での仕事と翌日は大学院のゼミと、
なかなかバタバタとしますが、
一つひとつじっくりと楽しんで過ごしたいと思っています。
さて、1級キャリアコンサルティング技能検定の実技(論述・面接)試験に向けた準備では、
目の前の事例相談者への対応、すなわち論述では問題把握や、
ロールプレイ演習の諸々の展開場面に意識が向きがちになります。
しかし、実技試験は例えば事例指導者側のロールプレイの出来等で評価されるものではないはずです。
その場でのリアルな事例相談者と事例指導者との関係性から立ち上がってくるダイナミックな変化等、
その意味づけがどのように扱われているかなのだと考えます。
論述試験や口頭試問を含め、
これら3つの試験プロセスすべてを通して確認されている共通のテーマがあるのでしょう。
例えば「問題を解決したい」といったような思考の傾向や癖、
これを一旦手放す、または、わきに置くことができるかが、
特に大切なポイントにもなるとも言えます。
実務経験を重ねるほど、事例を見聞きした時に
「こう対応するべきだ」
「ここが問題の根本だ」
といった見立てとそれなりの解決策が頭に浮かびやすくなることもあります。
この実務での経験則等が、
1級の試験においては壁として立ちはだかることがあるのかもしれません。
実際、1級実技論述試験の設問には
「相談者が訴えた問題は何か」
といった2級の試験と同様と思われる問いや、
「事例相談者の相談者への対応の問題は何か」
を問う項目が含まれています。
こうした設問に触れると、どうしても
「この相談者にはどう対応するのが正解か」
という思考に引き戻されやすくなります。
はたしてここで求められているのは
本当に相談者の問題解決なのでしょうか。
「相談者が自分の問題を解決するために」
と問われているのだから、相談者の問題を把握することでしょう、明確にすることでしょう、
といった思考にとらわれていると、
この試験ではなかなか難しい結果にもなるのかもしれません。
これは実践でも同じことが言えます。
事例指導者の立場で相談者の状況を把握するのは、
事例相談者の見落としやミスを指摘するためではないはずです。
事例相談者が
「どのような視点で相談者を捉えていたのか」
「なぜその対応を選択したのか」
という、面談の背後にある思考のプロセスを理解するための前提作業なのです。
こうしたプロセスが事例指導には必要です。
相談者の全体像と事例相談者の実際の対応とを照らし合わせることで、
初めて事例相談者自身の関わりの特徴や見立ての傾向に寄り添うことができます。
ここを履き違えていると解答用紙に記述する内容が、
事例相談者の支援に向けた課題設定ではなく
「相談者をどう救うかという解決策」
にすり替わってしまいます。
そしてこのズレは、実はロールプレイにも直結しているように思います。
自身の中にすでに
「相談者問題を解決するための正解ルート」
が出来上がっているため、
その通りに動けなかった事例相談者に対して
「なぜあの時、あのように言ったのですか」
「どうしてそこをもっと深掘りしなかったのですか」
と、問い詰めるような思考が発動しやすくなります。
もちろん、相手を責める意図はなくとも、
相談者の問題を何とかしたいという責任感・使命感みたいなものから起きてしまう現象とも言えるのかもしれません。
1級で求められているのは答えを教えることではなく、
事例相談者自身が自分の面談の癖や課題に気づけるように、共に立ち止まって考える姿勢です。
この意識の切り替えができていないと、
最後の口頭試問でも同様のズレが生じます。
自身の面接を振り返る際
「相談者の問題をどこまで解決に近づけられたか」
あるいは
「事例相談者の至らなかった部分をどこまで指摘できたか」
という基準で面接を評価してしまう傾向があります。
口頭試問で問われているのは、事例指導者としての自身の関わり方を、
どれだけ客観的に振り返ることができているかという部分です。
論述、ロールプレイ、口頭試問は切り離された別の試験ではありません。
「目の前の相談者を支援する立場」から
「支援者の成長を支える指導者」
へと立ち位置を変えることができているかという一つの基準を、
別の角度から確認しているに過ぎないのです。
事例指導の場では、これまで頼りにしてきた
「問題解決の癖」みたいなものを一旦脇に置くこと、
それが、実技試験全体を貫く重要な視点となるのかもしれません。