今夜は日本キャリア・カウンセリング研究会(JCC)主催の
「1級キャリアコンサルティング技能士による事例指導講座」がオンラインで開催されます。
1級論述試験に向けて受講される方が多いので、
試験問題に沿って事例指導の実際をイメージしていくワークを含め、
受検にひとつでも多く役立てていただこうとプログラムを工夫しております。
今夜は、論述問題の問4と問5を考えてまいりますので、
講座にご参加される方は、どうぞよろしくお願いいたします。
皆様にお会いできることを楽しみにしています。
さて、今回の記事では、
1級キャリアコンサルティング技能検定の実技論述・面接試験での、
実際のあり方や姿勢等にも関連してくる話題を取りあげてみます。
まず、キャリア形成支援の現場では、
日々さまざまな言葉の選択とやりとりが発生します。
それは相談者との対話だけでなく、
活動する上での関係者等との人間関係やチーム内の調整など、
支援者自身が関わるコミュニケーションの質も、支援の質に影響を与える大切な要素だと思うのです。
少し具体的な例を出してみます。
これは私が企業様への研修等で扱う話題(チェックインワーク)のひとつです。
たとえば、
「あなたの上司から
『今日、悪いんだけど残業お願いできないか?』と声をかけられたとき、
あなたは都合が悪いとして、あなたが考える対応方法でどのように断りますか?」
というワークです。
読者の皆様は、どのように対応しますか?
現代の若者はコミュニケーション力が醸成されていないから、
簡単に「無理です」「今日は都合が悪いです」と返事をするケースが多い…
と分析されていることもあるようですが、そうとは限らないように感じます。
若者という括りではなく、
どの世代でも類似した対応が目立つこともあります。
その人の性格もあるかもしれませんし、
ご自分の事情をまず最優先しなければならない状況にある時だったりもするかもしれません。
(いや、すいません。家庭の事情があってすぐに帰らなきゃいけないのです。)
といった自分の事情や体調等を理由に断る。
(絶対無理です)
とズバリ言う。
そもそも上司が頼み難いようなオーラを醸し出している。
※態度・非言語でメッセージを送っている感じ。
いろんな現象があります。
それぞれに断る権利があり、
「今日は予定があるので難しいです」
と言うこともできますし、
「わかりました」と引き受けることもできます。
ただ、できればその前に、
上司の言葉の背景にある事情や困りごと、
その気持ちにフォーカスしてみることが対話に必要なのだと考えます。
急な依頼には、何らかの困難や問題、
切迫した状況があるかもしれません。
緊急の業務が舞い込んできたとか、
大事なところで他に頼れる人がいないのか、
あるいはあなたを信頼しているからこそ声をかけてきたのかもしれません。
諸々の背景に思いを巡らせながら、
「何か急な問題があったのですか?」
といった言葉を一言添えることで、
上司が抱えている状況やその気持ちを受けとめることになることもあります。
このような応答は、
人間関係性を深めるコミュニケーションのやりとりの基盤です。
相手から投げかけられた言葉を、
しっかりと音を立ててキャッチしようとする。
そして相手が抱く問題や課題、
そのニーズに応えることをまず考えてみる。
だからこそ代替策を一緒に考える姿勢が自然に発動します。
「明日の午前早い時間ではだめですか?」
「他のメンバーにお声がけはされているのでしょうか。」
といった感じで応じることは、
単なる拒否・断りではなく、
相手への協力の意思を示すことになりそうです。
その上で、
(申し訳ないのですが私は今日外せない予定があるのです)
といったことを伝えていくのが、
良質なコミュニケーションを目指す努力になるのかもしれません。
※(なら早く言えよ!)という上司もいますが…
そもそもそのような態度を示す人は、
人にものを頼む姿勢自体が乏しいのかもしれませんが(苦笑)
キャリアコンサルティングの場面でも同じことがいえるように思います。
相談者が何かを求めてきたとき、
まずはその言葉の背景にある思いや状況を受けとめる。
そして、相談者のニーズに応えるために、
共に考える姿勢を持つ。
面接支援とは、相手の言葉に耳を傾け、
心を寄せ、共に考える営みです。
事例指導の場面であれば、
それは相手が事例相談者となります。
日々の人とのかかわり実践の中で、
こうした応答を磨いていくことはできます。
また、1級論述の事例問題やロールプレイケースを活用する中で、
事例相談者の言葉をどう受け止めるか、
どのように返すかを丁寧に見つめ直すことが、
事例指導の面接支援技法の深化につながるはずです。
お話しは戻りますが、
誰かからの依頼や要望に対し、
逃げるように断ったり、否定的に感じたり、遮断したり…。
このような自己の事情をまず優先して提示するスタイルをとっている場合、
相手の言葉や依頼、その思いに対して、
背景を理解しようとする姿勢につながらないことが多いと感じます。
つまり、相手のことを理解していく機会を失っている…ということになるかもしれません。
どんな場面でも、
その場で相手と一緒に考えるという姿勢を、
どれだけ意識できているかによって対話の質が異なってくると考えます。
事例指導者のあり方は日頃の言葉の選び方や応答の仕方に滲み出てきます。
まず「受けとめる」ことに注力して、
そこから始まる対話が、信頼と共同の関係を育んでいくということを念頭において、
日々の研鑽に臨んでいきたいものです。