突然ですが、限られた時間の中で、一定の水準の成果物を求められている際、
生成AIに諸々の作業をさせていくなど、昨今の生成AIの著しい進化によって、
あらゆるシーンでその活用が促進され、応用されていることは言うまでもありません。
誰でも生成AIは気軽に活用できますし、使わない手はないでしょう。
生成AIは、論理的で説得力のある文章を短時間で提示してくれるため、
例えば、1級キャリアコンサルティング技能検定の論述試験対策等においても、
参考資料として活用するには便利です。
なお、学習支援に活用する際には著作権への配慮が欠かせません。
過去問など著作権があるものを、許可なく生成AIにアップロードして読み込ませることは問題になります。
安全に使うためにも、この点はしっかり意識しておきたいところです。
ここで記事に示したいこととして、この生成AIの便利さが、
本来の論述力の本質的な育成を妨げる可能性があると感じているという点です。
特に、論述試験は、限られた時間の中で、自己の言葉を丁寧に紡いでいく力が必要です。
その瞬間でのフラグの立て方や瞬発力等、
日頃から生成AIに頼るほどに鈍くなっていくのではないかと危惧しています。
論述試験において求められるのは、単なる記憶や知識の再現ではありません。
自身がその場でリアルに事例を読み、何を感じ、どう考え、それをどう表現するか、
このプロセスが肝心です。
このプロセスの中で生まれる「節目節目の一言」は、
まさに自分の内面から搾り出された言葉の積み重ねであり、
その体験がひとつでも多くあるかないかで、解答の質は大きく変わっていくはず。
どこかでみた参考書的な情報や過去の模範解答から得られた表現と、
自分自身が考え抜いた末に生まれた言葉とでは、
読み手に伝わる深みがまるで違うはずです。
この違いを雲泥の差だと私は実感します。
生成AIを使えば、確かに「それらしい」文章はすぐに手に入ります。
ただ、それはあくまで外部から与えられた言葉であり、
自分の中から湧き出たものではありません。
論述力とは、言葉を選び、構成し、伝える力であり、
その根底には「自分で考える力」があります。
生成AIに頼ることで、この「考える力」が削がれてしまうとすれば、それは本末転倒。
この記事をここまで読んでくださった方、
この記事では生成AIの活用が悪いと言うメッセージを発したいのではないのです。
例に挙げた通り、
1級キャリアコンサルティング技能検定実技論述試験の受検を前に、
試験対策能力を向上させていく、また、その学びの過程において、実践力を向上させていくためには、
まずは、何よりも自分自身で十分に考え、言葉を紡いだ後、さらに寝かせて寝かせて、
そこで改めて生成AIの解答や著名な先生の模範解答と照らし合わせてみる…
こんな工夫が、自分の思考の癖や不足点に気づくきっかけになるのだと考えます。
そうした使い方であれば、生成AIは有益な学習支援ツールとなり得るでしょう。
そもそも最初から生成AIの解答や考え方を頼りにしてしまうと、
自分の考えを深める機会を失い、結果として論述力の根幹が育たなくなってしまいます。
ここで大切にしたいのは、
「自分が事例を読んで感じること、考えることは、誰にも真似できない」ということだと思います。
これは、論述試験に限らず、キャリア形成支援の現場でも同様なのだと言いたい。
キャリアコンサルタントがクライエントの語りに触れ、
何を感じ、どう応答するかという一瞬一瞬の判断は、
マニュアルや模範解答では一切代替できません。
だからこそ、自分の脳で処理しながら言葉に発し、またなお表現する言葉を修正していく、
そんな力を育てることが、支援者としての成長にもつながるのだと思います。
最近では、生成AIを使って高得点の模範解答を手軽に得ようとする傾向が強まっています。
それが「正解」にみえることで、自身の考えよりもその解答を優先してしまう風潮が生まれているといいます。
生成AIがそうした模範的解答をタダで簡単に提供できる
これに少しでも頼っているキャリアコンサルタントが存在するとするならば、
それこそ、近い将来、その活動は生成AIで十分になるのではないかと想像します。
それを使っている人自身が、
知らぬ間に自分の力を鈍らせていることに気づいてほしいと思います。
論述力とは、場と時間を使い自己を育てるもの。
自分の言葉で考え、表現することの積み重ねが、
試験本番で手書きで記述するというハードルを超える糧になります。
生成AIはその過程を補助する存在であって代替するものではないのです。
そして、生成AIはヒントをくれる存在かもしれませんが、
そもそもヒント自体を自分でひらめき出す力を磨くことのほうが重要。
解答表現を形にするのも自分の感性でしかありません。
自身の言葉を大切にする姿勢を持ち続けたいと強く思うのです。