CVCLABでは今月から、初見事例(CVCLABオリジナル事例問題)を活用し、
1級キャリアコンサルティング技能検定・実技論述試験に向けた準備のギアを少し上げ、
より実践的な学びへと展開できるよう工夫を重ねています。
実技論述試験において、受検者がどのような思考で問題に取り組むかは、
キャリアコンサルタントとしての成熟度を問われる重要な要素だと感じています。
本来、結果としての採点や得点に過度な注意を向けることではなく、
思考の質そのものが問われるべきだと考えます。
ただ、さまざまな思考が影響する中で、例年のことではありますが、
論述模擬試験の準備を通じて、受検者が抱えやすい思考特性について考察する機会がありました。
一例として、
「問4と問5に重きを置いて先に解く」
「問1や問2は2級と同じだから事例相談者Bのことは考えなくていい」
「問3は思いつくものを複数挙げれば得点につながる」
といった考え方が、毎年のように聞こえてくることがあります。
これらの思考は一見合理的に見えるかもしれませんが、
どう考えても1級試験の本質を捉え損ねる危険性を孕んでいると感じます。
まず「問4と問5を先に解く」という戦略についてですが、
確かに第13回・第14回の論述では問4・問5の配点が高く、事例相談者Bの対応に対する批判的考察(否定ではなく)と指導内容が問われるため、重要な設問であることは間違いありません。
一方で、問1〜問3は、相談者Aの問題理解、見立て、支援方針を問うものであり、
問4・問5の論述に必要な前提情報を整理する役割を果たします。
これは実際の事例指導の実践を考えれば、自然な流れです。
問1〜問3を通じて、事例相談者Bへの指導プランにつながる要点が得られ、
Aの状況を深く理解することにもつながります。
つまり、問1〜問3をしっかり掴んでいるからこそ、問4・問5の質が高まるのです。
設問がそうした実践的設計になっているにも関わらず、
配点の高い後半から解くという思考は、指導者としても再考すべき発想かもしれません。
事例全体の構造理解と論理的な展開を意識することが、
より高い事例指導の質につながると考えます。
また、「問1や問2は2級と同じだから事例相談者Bのことは考えなくていい」
という考え方についても、1級試験の本質を見誤っていると言わざるを得ません。
私自身、実践家の方々にこの話題を持ちかけたことがありますが、
「とんでもない」といった反応をされることがほとんどです。
1級試験では、相談者Aの問題理解とともに、
事例相談者Bの対応の妥当性を評価する視点が求められます。
問1・問2も、Bの対応を踏まえたAの問題の捉え方や支援方針を問うものであり、
2級とは異なる視座、セッション構造の違い、さらなる深度と多様な視点が必要です。
事例相談者Bの視点を含めた多面的な分析ができるかどうかが、
1級にふさわしい論述力として評価されるのです。
さらに、「問3は思いつくものを複数挙げれば得点につながる」
という考え方についても、量より質が重視される1級試験においては危険な戦略です。
問3では、社会的ネットワークの活用や環境への働きかけについて、
相談者Aの状況に即した具体性と妥当性が求められます。
思いつきで列挙するだけでは、論理性や関連性が乏しく、当然評価されにくいのです。
Aの文脈に合った支援資源の選定と、連携の具体的な方法を丁寧に考察することが重要です。
なぜそのネットワークが有効なのかを説明できる力こそが、1級にふさわしい論述力になります。
これらの思考特性は、試験の構造や評価基準の理解不足に起因している可能性があります。
1級試験では、設問の配点だけでなく、論述の論理展開と整合性が重視されると思います。また、事例相談者Bの対応を評価・改善する視点が1級の本質であることを理解する必要があります。
さらに、量より質、具体性と妥当性を重視する論述力を養うことが、1級合格への近道となると考えます。
1級キャリアコンサルティング技能士を目指す皆様とともに、
より本質的な視点で論述に取り組めるよう、講座の中でも実践性を深めていきたいと思います。
そしてこの試験は単なる知識の確認ではなく、
キャリア形成支援者としての姿勢と力量を問う場です。
だからこそ、設問の奥にある意図を読み取り、
相談者と事例相談者の両面から深く考察する力が求められるのだと思います。