今夜は、オンラインで1級キャリアコンサルティング技能検定の実技論述試験対策講座(前編)を開催いたします。

 

7月の前編でのテーマとして、第12回の論述過去問(事例1)を取り上げて進めていきますが、

その実際の学びの中身は、いわゆる「試験対策」の枠を大きく超えたものとしています。

 

過去の設問に答えるという構成に見えるかもしれませんが、

設問自体は、第14回のスタイルに置き換えて考えていきます。

 

また、事例内容にコロナ関連の内容が出てきますが、

事例指導の実技という観点からすれば、

そうした事例の事柄自体にはそれほど影響される必要はなく、

だからこそ今回この第12回の事例1を選んだということでもあります。

 

問い一つひとつに真摯に向き合っていく過程の中で、

私たち支援者自身が「キャリア支援とは何か」「支援における自分の立ち位置はどうか」

といった原点に立ち返るような時間になると思います。

 

たとえば、今回取り上げる事例には、

「家庭との時間を大切にしたい」という価値観の変化と、

仕事人・組織人の中での管理職としての責任との板挟みで葛藤する相談者Aが登場します。

 

これは単に「忙しくて困っている人」という理解では到底済まされないもので、

むしろ人生の方向性を再定義しようと模索しているAの姿は、

今の時代を生きる多くの方の姿と重なって見えてきます。

 

問1では、そのAの言葉の奥にある思いや期待にどう気づき、

どう言語化していくかが問われます。

それも当然に事例相談者Bを通しての捉え方が事例指導者に必要です。

 

そして相談者Aが明確に語っていないことにも目を向け、

声にならない声にも丁寧に耳を傾ける、そのような姿勢も求められるでしょう。

 

さらに問2では、

相談者Aが自分の問題にどのように向き合い、乗り越えていくのか、

これについて考えていきます。

 

ここでも、私たちは安易なアドバイスを提供するのではなく、

A自身がどのように自己理解を深めていくことができるのか、

どんな価値観に基づいてこれからの選択をしていけるのかといった、

より本質的な視点から支援を捉え直していきます。

 

これを事例相談者Bがどのように支援を考えているか、それを指導者が把握するからこそ、

相談者Aにどんな風に動いてほしいか、変容してもらいたいかが見える。

 

事例指導というものは、事例相談者Bの感じ方、考え方があって、

初めて指導者としての見解が膨らんできます。

 

何かを教えることでも、何かを代わりに決めてあげることでもなく、

相談者Aが自分の足で立っていけるように伴走することとは何か。

そのことを改めて事例相談者Bを通して考えさせられる時間になるのではないかと思っています。

 

そして問3では、個人の内面だけではなく、

相談者Aを取り巻く環境や社会的なリソースにも視野を広げていきます。

相談者Aのように、組織や家庭、地域社会など複数の文脈の中で生きる人に対して、

どこにどのようなネットワークや支援資源があり、

誰と連携することでより善き変化が生まれるのか、という視点がとても大切になります。

 

制度的な知識やネットワーキング力ももちろん必要ですが、

根底には「この人のより善い人生に、CCがどう関わるのか」

というポイントが問われていると感じます。

 

今夜の講座で扱う事例は、たしかに過去に出題されたものであり、

文字としては与えられた過去の情報にすぎません。

 

その事例にどう向き合うか、どう考えるかという「思考の深まり」こそが、

試験勉強という範疇を超えて、自身の専門性を育ててくれる学びになるのだと思います。

 

過去問に込められたものを、単なる設問として消費するのではなく、

「今、この場で、支援者としてどう応答するか」

という問いに変えていくこと。それがこの講座の本質であり、

そこに参加者の皆様とご一緒に考えられること、心から嬉しく思います。

 

こうした学びの時間を重ねる中で、

私自身もまた支援者としてのあり方を問い直し育て直すことができています。

一つの問いに対して、多様な意見や見立てが交差し、

そこからまた新たな気づきが生まれていく。

この対話の積み重ねの中にこそ、

検定試験を超えた「実践のための学び」があると感じています。

今夜もまた、そんな深い問いと出会えることを願って、

ご参加の皆様とご一緒できることを、とても楽しみにしております。