1級キャリアコンサルティング技能検定論述試験対策講座の中で、
受講者様が迷う点の一つに、
「問2と問3の解答内容に重複してしまうことがある」
といったものがあります。
今回は、そうした点を踏まえ、問1と問2に引き続き、
問3を考えていく際のポイントとなり得るところに触れてみたいと思います。
問3 相談者A自身が自分の問題を解決するために活用可能な社会的ネットワークは何か。相談者Aの置かれた環境への働きかけについて関係機関や関係者との連携を考慮し、記述せよ。
このように問3では、
「相談者A自身が自分の問題を解決するために」
と記されています。
これは問2においても
「相談者A自身が問題を解決するために」
と問われていて、
解答自体も問2と問3で同じことが考えられやすいのかもしれません。
こんな時、論述の各問の前提条件に立ち返ってみると整理しやすくなるかもしれません。
つまり、1級キャリアコンサルティング技能検定実技論述試験では、
事例相談者Bが事例指導を受けるためにまとめた事例記録をもとに各設問に答えていくということです。
例えば…
問3で問われている「社会的ネットワーク」を考えてみた時、
真っ先に浮かびやすいのは、家族、職場、上司、同僚、友人、地域支援、専門機関…等々。
考えられることを挙げてみるとキリがないくらい色々出てくるかもしれませんね。
そして、それは問2で問われている「相談者A自身が問題を解決するために取り組むべきこと」でも挙げることが必要な場合もあります。
すると、問3で問われている相談者A自身が自分の問題を解決するために活用可能な社会的ネットワークと重なることがあるでしょう。
しかし、なんだかそれでは引っかかる…
問われていることが違うのではないか…
同じことを書いていて良いのだろうか…
こんな風に感じるのではないでしょうか。
先ず、事例の具体的な内容(事例性)に関係なく活用可能な社会的ネットワークについて考えてみたとき、
相談者Aが置かれた環境やリソースを多角的に検討し、
家族、職場、上司、同僚、友人、地域支援、専門機関などの支援の可能性を視野に入れることができます。
また、事例相談者Bが連携することを踏まえると、事例相談者Bの所属等によって、
関係機関や関係者等は当然に変化します。
必要だと考えられるのであれば、
一例として、人事担当者、産業医、福祉窓口、地域諸々の組織(センター等)との連携・橋渡しも活用可能な社会的ネットワークとして考慮することも可能です。
さらに既成概念や枠組みを外し、想定外の越境的な発想も役立つこともあります。
とにかく何を挙げるにしても、
問2の取り組むべきこと、問3での活用できる社会的ネットワーク、
これらに該当するものが重複することが考えられます。
重複した解答がいけない…ということではなくて、
あくまで一例として考え方を下記します。
問3に挙げられることとしては、
相談者A自身が自分の問題を解決するために活用できる社会的ネットワークに、
事例相談者Bが、直接的に介入することができること、
またその介入が相談者A自身が抱えている問題解決に効果的であるかということ…
これらの点が要点になるように思います。
相談者A自身のエンパワメントを軸に、
支援依存ではなく、相談者Aの主体的な活用を促す視点が重要になるかもしれません。
ですから、社会的ネットワークとして挙げていくことは、
事例自体や相談者Aの置かれた環境によっても、
また事例相談者Bの諸活動分野や立場、
そして相談者Aとの接点のあり方等によっても、
その事例記録の内容次第で全て異なるということになります。
悪い例は、
予め組織への働きかけは問3に記述しよう…
などと何にでも当てはまるようにして解答を準備していると、
問われていることから相当ズレてしまうと思います。
ここは気をつけておきたいところですし、
それは試験に対して敬意の欠ける行為でもあると感じます。
このように考えてみると、
問2では相談者A自身が問題を解決するために取り組むべきことを考える際、
先ず、本人自身の認知や感情等の自律的な変化・制御等によって、
自己成長を遂げるための行動変容を期待する内容にしたいものです。
その中にも当然に相談者Aの周囲を巻き込むものがあってもいいと思います。
仮にその周囲を巻き込むもの自体が、事例相談者Bの直接的介入によって効果が期待できるのであれば、それは問3に挙げた方が妥当なのかもしれません。
要するに、事例相談者Bが直接的に介入することが現実的にハードルが高く、
また相談者A自身にとって必要な環境資源なのであれば、それは問2に描くことが自然なのかもしれませんね。
この記事は試験の対策にとらわれない、実務家としての視点からの発想です。
この内容が読者の皆様、1級受検者の方にとってより考えを広げてみるきっかけになれば幸いです。