本日は日本キャリア・カウンセリング研究会(JCC)主催の1級キャリアコンサルティング技能士による事例指導「6月講座プログラム後編」がオンラインで開催されます。※講師は私(小林)です。


JCCでのオンライン講座は募集定員数が20名様でありながらも、

実際には10名様以内での開催がほとんどです。

特にこの6月は前編および後編共に各回6名の受講者様ということで、

基礎的なプログラムコンテンツ(情報全般)を通し、

受講者様各自の感じ方や考えを共有できる時間をより多く取ることができると思っています。


講座を受講いただける方はどうぞよろしくお願いいたします。


さて、今回の記事は、

1級キャリアコンサルティング技能検定実技論述試験問題の最新過去問における問5について考えてみます。


問5 問4で挙げた事例相談者Bの問題だと思うことの中から優先するもの一つを取り上げ、事例指導(またはスーパービジョン)における具体的な指導内容を記述せよ。


この設問で受検者の方々が気になる点は、


問4で示した対応の問題についてどこに優先順位をつけるべきか…

またそもそも優先するものというのは何がポイントになるのか…

さらには(またはスーパービジョン)という言葉に何か意味があるのではないか…

具体的な指導内容とはどこまでを指すのか…


概ね上記のようなところかと想像します。


優先順位を考えるときにざっくりとした理屈でいえば、

基本的態度→関係構築→問題把握→具体的展開

といったフレームが浮かぶかもしれません。

※勿論、もう少し掘り下げ、より具体的なフレーム要素をイメージしてもいいと思います。


しかしこの法則的なところから指導者視点で優先順位を考えてしまうと、

その失敗しているほとんどのケースポイントが、

例えば、

関係構築の作る力が弱いか、維持する力が弱いか…


だから相談者が自由に言葉にできていない…

相談者を理解するステップが踏めていない…

といったようなパターンになりそうです。


なぜなら、面談が失敗する原因のほとんどが関係性の欠如によるものという研究データなどもあり、

これは実にわかりやすい点です。

しかし、それを優先順位にしたところで、

実技として事例相談者の学習の動機づけに本当につながりやすいでしょうか。


私は現場で考えていることのひとつに以下のようなことを考えます。


先ず優先する指導テーマを決定する際には、

事例相談者Bの主体性と事例指導を受けようとした動機につながる

「気になっていること」

「モヤモヤしていること」等を起点に検討し、

事例相談者Bの語りにある違和感や迷いを丁寧に拾い内省の種とします。


事例指導の目的は、

事例相談者Bのキャリア形成支援者としての成長と、

その成長を通じた今後の相談者への支援力向上にあります。


ですから、事例相談者Bの主体的な自己省察、実践力向上、理論的理解を促すことにあり、

単に原理原則とか技法や知識、技術的なことだけでなく、

事例相談者Bにとってのキャリア形成支援者としてのあり方に踏み込んだ視点も重要です。


事例相談者Bが事例で気になっていた箇所を活用し、

対応の振り返りや対話分析を通じて学びへの動機を高めていくことが必要です。


事例相談者B自身のその時の言葉の選び方や自己の姿勢の変化を検討し、

具体性を持たせた指導内容を記述することが求められるはずです。

※私の考え方です。


事例指導者の視点から問題点を頭ごなしに指摘するのではなく、

事例相談者Bの意図や選択の背景を汲み取りながら、

代替的アプローチや問いかけを用いて支援のあり方を再構築できるよう支援することが肝要でしょう。


また、今回の体験が今後の他事例における効果や改善点にどう影響するかを共有

事例相談者Bが自ら内省し、今後のあり方を調整できるような支持的支援を行うことが総括として重要となります。


さらには、キャリア形成支援における事例指導セッションは単一的な活動ではなく、

事例相談者の成長段階に応じてその性質を変化させていくことができます。


初期の具体的な問題解決等から、事例相談者B自身の認識の深化、

そしてスーパービジョンという学習ステージの昇華へと至るこのプロセスが期待できます。

事例相談者Bの専門性だけでなく、人間としての深みを育む重要な機会となり得ます。

こうした理解を事例指導者(受検者)が体験できていることで、

(またはスーパービジョン)といった設問にも柔軟な対応ができるかと思われます。


これらの点を踏まえ、論述試験対策としては、

単に正解を導き出すだけでなく、

その思考プロセスを深く掘り下げ、多角的な視点から事例を分析し、

自分(受検者)なりの見立てを構築する訓練を積むことが成功への鍵となるのだと思います。

またこれは対策に留まらず、実際の現場で役に立つ考え方にもなるのではないでしょうか。