大学院での研究テーマを深く考えていると、
なぜかどんどんとそのテーマが変化していきます。
あるテーマにとらわれていたためか、
結局のところ、異なる切り口から気になることが出てくると、
元々みてきたテーマの手がかりが、
なんだか意味のなかったような感じに思えてしまう。
実は、意味のない…なんてことはないのだけれど、
だったらもっと近道すれば良かった…などと項垂れてしまうものです。
今回の記事では、私自身の日記として特に書き留めておこうと思い、
今、ノートにずっとシャープペンシルを走らせています。
キャリアコンサルタント、キャリア形成支援者として活動を続けていると、
「共感」という言葉に触れない日はありませんよね。
相談者に寄り添う、事例相談者に寄り添うこと、
これを当然のように求められ、相談の場に臨んでいるのかもしれません。
キャリアコンサルタントに影響を与えるある著名な先生が、
(寄り添う)って言葉、違和感あるんだよなぁ…
と言ってましたが、それはそれぞれの解釈の仕方があるわけです。
人の命を預かる医療業界でも、
また心をケアする臨床心理士さんたちのプロフェッショナルな勉強会の場でも、
「寄り添う」という言葉は自然に使用していることがあります。
要するに、選んでいる言葉の端々に対して、専門家同士でありながら、
意地悪な意見を示すのは揚げ足取りにしかならないこともあります。
そもそも、その先生は、
自分の言動パワー(周囲への影響力)を自覚していないのかもしれませんよね。
お話を戻しますが、
改めて「共感」について問い直してみると、
私たちは本当に「共感」を体現できているでしょうか。
※これは先日、講座の中でも少し話題にしています。
目の前の人が語る悩みや苦しみに対して、
ただ気持ちに寄り添おうとするだけで十分なのか。
キャリア形成支援者同士だからこそ、今一度この問いを胸に置き、
私たち自身のあり方を振り返ることが必要だと感じています。
「共感」とは、相談者の言葉にうなずいたり、
苦しさを代弁したりすることではありません。
もちろん、それらは支援の中で重要な役割を果たしますが、
それだけでは相談者の内面に本当に近づくことはできないのです。
相談者の心にある複雑な思いや背景は、
支援者が自身の体験や価値観だけを基に「わかっているつもり」になってしまった瞬間、
みえなくなってしまう気がします。
キャリアコンサルタントは、自分の理解の限界を自覚し、
その上で「わかろうとし続ける姿勢」を保つこと、
これが真の共感につながるのだと肝に銘じる必要があります。
ときに、相談者から「小林さんに私の気持ちがわかりますか?」と問われ、
真に戸惑うことがあります。
キャリア上の挫折や葛藤、職場での深い孤独、キャリアと家庭の板挟み等々。
こうした辛さや苦しみを、そのまま体験することはできません。
だからこそ「わかる」という言葉を軽々しく使うのではなく、
「今、私はあなたの気持ちをわかっていないかもしれません。
だけれど、わかりたいと思っています。」といった姿勢で対話に臨むことが、
相談者にとっての支えとなるのかもしれません。
勿論、そう言えばいいとか、そのように思えればいい、というわけではなく、
しかし、聴くことしかできない無力さをも大切にすることしかできない。
この姿勢は、私たちキャリア形成支援者が持ち得る最も誠実で、
謙虚なあり方の一つなのだと考えます。
キャリア形成支援の場では、相談者が言葉にしていない本音や、
心の奥にある不安や希望に、どう近づくかが問われることも多いです。
ただ黙って受動的に聴く、ただ相づちを打つ、ただ励ますだけ。
これでは相談者の心はひらかれません。
相談者が語った言葉の奥に、どんな背景や意味があるのかを理解しようと、
必要に応じ、時にはある意味積極的に問いかけながら確認してみる。
その過程で相談者自身も、自分の気持ちや考えに気づき、整理していくことができる場面が生まれます。
「今、どのようなことが浮かんでいるのですか」
「そのとき、どんな思いを抱かれたのですか」
そんな問いかけが、相談者の語りを深め、信頼を築いていくことがあります。
その信頼こそが、相談者に「自分の気持ちをわかってくれる人がいる」という安心をもたらし、次の一歩を踏み出す力になるのです。
(これを問いかけたら、相手が益々その時の気持ちを思い出して辛くなる)
このようなことをいう人もいます。
だからその話題から避ければいいのでしょうか?
確かに、相談者は必ずしも心の内を語る準備ができているとは限りません。
弱音を吐くことに慣れていない方、悩みを言葉にすること自体が苦手な方、
あるいはまだ相談者自身が自分の気持ちをうまく整理できていない段階の方も少なくありません。
そんなときに、無理に(その時の気持ちは?)と、きき出そうとしたり、
善意で励まそうとしたりすることは、かえって相談者を追い詰めてしまうかもしれません。
だからこそ、キャリア形成支援者に求められるのは、
相手が語り出すタイミングを尊重し、今はそっと寄り添うだけにとどめる…
という配慮でもあるのだと感じます。
共感とは、話を聴くことそのものだけではなく、
「聴くことを控える」という選択の中にも表れるものだと思うのです。
「共感」は、支援者の側の努力で完結するものではない。
相談者が「この人なら自分の気持ちをわかってくれるかもしれない」と感じたとき、
はじめて共感は意味を持ちはじめてくる。
「共感を示す」のではなく
「共感に向けて心をひらき続ける姿勢を持つこと」なのだと教えられてきました。
相談者の語る物語に寄り添い、その物語の続きを一緒にみつけよう、
紡いでいこうとする姿勢こそが、キャリア形成支援者の根幹であり、
熟達するほどに大切にすべき姿勢ではないかと考えています。
どれだけ経験を重ねても、相談者の気持ちは決して「わかったつもり」にならず、
常に新たに聴き、問い、理解しようとする。
この姿勢を専門家同士、共通の合意点としてお互いに確認し合い、
支援者同士で磨き続けることが、私たちがこれからも成長し続ける道だと信じています。