キャリアコンサルティングを考えていると、
最新の情報収集等に躍起になっていることがあります。
最近流行りの言葉などにも敏感になり、
その意味をあれこれと調べて知識をまとうことに安心感を覚えていくなんてことも。
人の心への支援(キャリア形成支援も心理支援)のあり方について考えるとき、
目の前の関わりが「新しい」のか、それとも過去の延長線上にあるのか、
という問いに向き合うこともあります。
本来ならそんなことはどうでもいいことなのかもしれません。
時代は変わり続け、テクノロジーも進化し、
私たちが生活する環境には常に新しいものが生まれています。
その一方で、人そのもののあり方や根源的なものは、
然程大きく変わらないものだと感じることも多いのではないでしょうか。
キャリア形成支援の現場においても、
「新たな理論」や「これまでにない方法」が語られることがあります。
それが注目されるような世界をキャリアコンサルタント一人ひとりがつくりあげているのかもしれません。
新しいもの、少し先をいくようなおさまりのよい響きのもの、
これらには新鮮さや刺激を感じることもありますが、
実は、それらの多くは過去から受け継がれてきた知見や実践の延長に位置づけられるものであるともいえるのではないかと考えます。
これまで積み重ねられてきた文化的な背景や、
さまざまなキャリア形成支援者たちの経験の中から形づくられたものが、
少し異なる表現や構成を通じて再提示されている、そんなふうに感じます。
本当なら、何か新しい支援のかたちを見いだそうとするとき、
それは決して過去を否定したり置き去りにしたりすることではなく、
これまでの積み重ねに新たな視点や個人の解釈を重ね合わせていくことなのかもしれません。
キャリアコンサルタントが学び続ける理由の一つは、
過去の理論や実践をなぞるだけではなく、それを今の自分の支援等に照らし合わせていくことで、
初めて自分なりの意味を得られるからなのではないかと思うのです。
たとえば、マニュアルに基づいたトレーニングがあったとしても、
それは一つの「型」や「枠組み」を学ぶ場にすぎません。
実際、そのトレーニングを受ける人は皆、それぞれに異なる背景や価値観、
人生経験をもってその場に臨んでいます。
同じカリキュラムの中でも、そこに向き合う姿勢や受け取り方は実に多様であり、
結果として習得される支援のスタイルも、一人ひとりの個性が反映されたユニークなものになっていくはず。
こうした観点からみれば、キャリア形成支援という全ての営みは、
常に「新しいのだ」と言えるのかもしれません。
誰一人として同じ支援者はいません。
そして同じクライエントとの同じセッションは二度と訪れません。
都度、キャリア形成支援者とクライエントの出会いがあり、
その関係性の中で交わされる言葉や感情のやり取りには、唯一無二の意味が宿ります。
いくら、どれほどに理論や方法が整理され体系化されていても、
実際のキャリア形成支援はつねに個別的で、そこには新しい世界が広がっている。
「新しさ」は、革新的な手法や理論によってもたらされるものではなく、
一人ひとりがその瞬間に真摯に向き合い、相手との関係の中に新たな意味を見いだそうとする姿勢の中にこそあるのではないかと考えます。
過去からの学びを大切にしながらも、今この瞬間瞬間の出会いに真っすぐ向き合うこと。
この営みが、結果として「新しい支援」をつくり出しているように思うのです。
私たちが行う一つひとつのキャリア形成支援は、すでに「全てが新しい」。
そして、そのことを各自が心に留めておくことが、
柔軟さや謙虚さにつながっていくのではないかと考えています。