本日と明日の2日間、
横浜会場にて「1級キャリアコンサルティング技能検定試験対策講座」を開催いたします。
本日は少し広めの会場をご用意しておりますので、
定員は10名様でございます。
なお、明日はより小規模な会場となるため、定員6名様での開催となります。
早いもので2025年度もスタートから約2ヶ月が経過しようとしています。
CVCLAB主催の1級対策講座も第2回目(No.2)のプログラムに入りました。
4月に第1回を受講された皆様も、
少し時間をおいて、あらためて事例指導の実践と実技検定試験との関係性について、
ご自身なりに整理・熟考を深めてくださっているのではないかと感じております。
今回の講座がさらなる理解への深化と実践力向上につながるよう丁寧に進めてまいります。
本日、明日とご参加いただく受講者様、どうぞよろしくお願いいたします。
さて本日のブログ記事ですが、
実は「事例を把握したいとする危うさ」というタイトルにしようかと迷いました。
ただ、それを伝えたいと思うあまり、
指摘していく方向に文章が偏るのは面白くないと考えて、
それを反省しタイトルを変えています。
キャリアコンサルタント同士で行う事例指導の場面において、
いつも考えていることがあります。
それは、事例指導者が事例相談者から事例(ケース)の内容をきき取る際の態度や姿勢に関するものです。
多くの場合、事例指導者は事例相談者の話を丁寧に聞いているようにみえます。
ただ、観察し続けていると、もしかしたら情報収集に終始しているのではないか…
という疑問がわくことがあるのです。
たとえば、事例相談者が置かれている状況や心情、
キャリア形成支援者としての悩みに寄り添うのではなく、
なぜか事例そのものの外形的な情報を把握すること、
これが主たる目的になってしまっているようにみえることがあるのです。
こうしたアプローチでは、事例指導の場が効果的に作用するには不十分だと考えます。
それは表面の情報を収集し、事例指導者自身の知識や経験、
既知の理論に当てはめて解釈しようとする姿勢になり得ます。
事例指導者のそうした態度や姿勢は、本来その場で生まれるべき、
深い対話や良質な学びの機会、それらが損なわれてしまう危うさがあると思うのです。
理論や枠組みに基づいた理解を行うこと自体は決して悪いことではありませんが、
それが主軸になってしまうことが多い。
ですから、そこからこぼれていく微細な情報に付随する想い、
事例相談者自身が言語化できていない感覚や迷い、
このような「生きた情報」が軽視される可能性が高くなります。
キャリアコンサルティングの基本姿勢には、
相談者に対する共感的理解や、自己決定の尊重といった重要な要素がありますよね。
これは、単に相談者の発話内容を聞き取るだけでなく、
その言葉の奥にある思いや意味に心を寄せ、対話を通じ、
相談者自身の気づきや内省を促すことが求められているということです。
この原則は、キャリアコンサルタント同士の事例指導の面接場面においても、
同様に適用されることなのだと思います。
つまり、事例指導者が事例情報を聞き取ることに重点を置きすぎると、
事例相談者が本来抱えている葛藤や課題の本質を十分に掘り下げることが難しくなるかもしれません。
事例相談者は「この指導者に合わせてわかりやすく説明しよう」とか、
「必要とされる情報を整理して提示しよう」といった思考になってしまい、
自分自身の内面に向き合うプロセスが阻害されることさえあります。
これは事例指導者が気を遣わせてしまっている、というか遣わせすぎてしまっている…
といいましょうか。
このような状況では、事例指導が目指す「学び」や「自己成長」にはつながりにくくなるのかもしれません。
また、事例指導者が自らがよって立つ理論に基づいてケースを解釈しようとすると、
自動的にその理論に合致しない情報や事例相談者の語りを軽視する傾向が生じることがあります。
これは「理論による解釈の限界」を意識していない場合に起こりやすい落とし穴。
もちろん、理論は支援を構造化するための大切な道具であり、
有用なフレームを提供してくれる存在です。
一方で、それにとらわれすぎてしまうと、個別性が高く、文脈に依存する、
実際の相談現場における多様性や複雑さを見失ってしまうリスクがあります。
目指す事例指導の現場とは、事例相談者が自身の経験を深く振り返り、
そこから何かを学び取っていくプロセスを支援する場であるはず。
単なる問題解決や知識の伝達ではなく、事例相談者自身の内省を促し、
新たな視点や気づきを得ることを支援する対話のプロセス。
これこそが質の高い事例指導の本質だと考えています。
キャリアコンサルタントの継続的な成長にとっても重要な要素ではないかと思います。
事例指導者が真に支援的な姿勢を取るためには、
自身のきき方や態度、姿勢を常に省察するメタ認知的な姿勢が求められるはず。
それを磨き続けていくことで、
「私は今、単に情報を集めようとしていないか」
「この問いかけは、相手の内省を促すものになっているのか、自己満足ではないか」
といった自問を通じ対話の質を高めていくことが可能になりやすい。
加えて、
事例相談者がより深く自分のケースを考えられるような問いかけを、
意識的に行うことも大切なのかもしれません。
キャリアコンサルタントとしてお互いに高め合うためには、
単なる情報交換にとどまらない「関係性に基づいた対話」のあり方を再認識することが大事なのだと痛感します。
事例指導の面接の場は、キャリアコンサルタントとしての力量を深め合うための貴重な時間であると同時に、
事例相談者自身が自らの専門性と向き合い、主体的に学んでいくことを支援するプロセスであるのだと考えています。
その意味で、事例指導者には「きく力」だけでなく、
「寄り添い、引き出し、共に考える力」が求められるでしょう。
このような視点に立ってこそ、
キャリアコンサルタントとしての支援的態度をより深く実践し、
プロフェッショナルとしてお互いに成長できる場を築いていけるのではないかと考えます。