今朝、来月6月の講座ご案内を行ったところです。

早速お申し込みをいただいた方、どうもありがとうございました。

また参加をご検討中の方も感謝しております。

なお、日程が合わなかったという方は本当に申し訳ございません。

また機会がございましたら、ぜひご参加いただけたら幸いです。

 

さて突然ですが、

人は与えられる情報が豊富にあるほど、

実は認知的な負荷がかかり過ぎるという研究があります。

 

例えば、誰かに何かを教えるとき、

つい「きちんとわかりやすく伝えよう…」と思いがち。。。

みやすい整った資料を用意したり、図やイラストを使って視覚的に訴えたり、

説明をスムーズに進めるために工夫を凝らすこともあります。

これ自体、とても丁寧な姿勢であって、

学びの入り口として大切なことでもあるのだと思います。

 

一方、熟練や指導レベルキャリアカウンセラーやキャリアコンサルタントを目指す方のように、

人の話を深く聴き、意味を受けとめ、

自分の言葉で相手と向き合っていくような専門職においては、

「わかりやすく整理された情報をそのまま受け取る」

だけでは、その人にとって身につかない大切なセンスや力があるのだと感じています。

実際に何が正解かわからないまま、他の人と話したり、自分の考えを探ったりして、

「なんとなくつかめてきたぞ」というような感覚の中にこそ、

本当の学びがあるのだと言われます。

これは私自身も、今そうした学びの真っ最中にいるのだと実感しています。

 

少し事例に触れます。

 

昨年、私が担当した組織内研修でこんな試みをしたことがあります。

 

あえて資料を超シンプルにし、

文字情報も減らし、説明も控えめにしました。

 

代わりに、受講者の皆様にいくつかのシンプルな問いを投げかけ、

グループで話し合ってもらっています。

 

皆、最初は戸惑い、

「何を話せばいいのかよくわからない」「これでいいの?」

といった怪訝そうな表情や声があがりましたが、

それでもジッと皆様を見守っていると、

「ああ…そういえば私はこう考えてたんだな」

とか、

「他の人の考えを聞いて気づいたことがある」

といった声が増えてきました。

 

こうして自己の中にあるモヤモヤみたいなものを言葉にしてみる過程や、

他者との対話の中で視点が広がる体験は、整えられた資料を読み込むよりも、

ずっと深く残るものなのだということがわかります。

つまり、正しい知識をただ覚えるのとは違い、

自分の体験と結びついた実感をともなっているからなのかもしれません。

 

私たちの業界では、よく気づきが大事とか気づきを促すのが大事と言われますが、

実は気づきというのはだれかに言われて「ああ、そうなんだ…」と思うことではないはず。

※これは1級の試験などでも認識が異なることがあると思います。

自分の中から自然に「そうかもしれない」と浮かんでくるものがとても重要なのです。

 

だからこそ、

これは少し余白のある学び、余裕の場が必要です。

 

はじめから完成された答えが目の前にあると、

人はそれをまるで理解したかような気になります。

でも、それはあくまで表面的な理解にとどまりがちで、

「自分の言葉で考える」

という過程を飛ばしてしまっている勿体無さが生じています。

 

キャリアコンサルタントとして人と関わる力を育てるためには、

教科書のようなわかりやすさよりも、

「わからないなりに考え続けること」

「誰かと話す中で少しずつ形になっていくこと」

これを大切にした方が、学びは深くなるはずです。

そうした学び方こそが、実際の事例指導やキャリア面談の現場でも、

必要とされる態度や姿勢につながっていくのではないでしょうか。

 

見やすく整理された資料や、丁寧な解説が役に立つ場面もありますので、

それを否定するつもりは全くありません。

 

ただし、あえて情報量を減らしてみたり、

問いかけの力を借りたり、言葉にならない感覚を扱う時間を設けたりすることで、

「本当に自分の中に残る学び」が生まれることもあるということを理解してもらえるといいなと思っています。

 

刺激の少ない資料を使ったり、

あえて正解を用意しない問いかけを投げかけたりすると、

一見不親切に思えるかもしれませんね。

ただ私の講座はそのようなスタンスを大事にしてきています。

それは「相手の中にある可能性を信じること」とも言えるのではないかと思います。

キャリア形成支援者であれば一度はそんな言葉をなんとなく聞いたことがあるのかもしれません。

 

目の前の人と学びを重ねていくとき、

手元に何も置かない面談、これがとっても重要なことがあるのです。

 

与えもしない、導きもしない、けれど共に考える。

そんな学びの場が、私たち専門職としての基盤を育てていくのだと信じています。