本日は5月5日、「子どもの日」です。
昔は、街のあちこちで鯉のぼりが飾られていましたが、
今ではあまり見かけなくなったような気もしますね。
皆様のお住まいの地域では、いかがでしょうか?
また、「子どもの日」といわれますが、
実は最近になって「母に感謝する日」
という意味合いも込められていることを知りました。
いろいろと調べてみると、興味深い発見があるものですね。
さて、今回このブログで取り上げるテーマですが、
実技論述試験問題の本質を問うというものです。
実に壮大なテーマになりますが「正解」に頼る学びからの脱却は常に必要な意識だと考え、
改めて文字にしてみたいと思いました。
1級キャリアコンサルティング技能検定の実技論述試験に向けての準備を重ねていく際、
わりと多くの方が
「どのように書けばよいのか」
「模範解答はあるのか」
「書き方のテクニックを学べば通るのでは」
といった不安や焦り、誤解を抱えることがあると感じます。
これはある意味当然の心理でもあるのかもしれません。
自由記述式、またパフォーマンス課題にも関連する課題ですから、
当然に正解が見えにくく(…というか、正解はいくつも存在する)
ここで何が求められているのか??
に確信を持てないまま対策を講じる人が少なくないように思います。
この1級実技論述試験は、
一つの正解が存在する学科試験や選択式試験と決定的に異なる性質を持ちます。
単に知識や記憶を測るだけでなく、相談者と事例相談者の両者を尊重したうえで、
事例指導者としてどのように関わるかという人間的な資質と構成的な理解力を問うている点にあるのだと思うのです。
例えば、問いを単体で捉え、答えを埋めるだけの姿勢では、
論述試験の本質には到底届かないのだと信じています。
この論述実技試験は、事例相談者が「学習者」であり、
事例指導者としての受検者は教える存在ではなく、目の前の人を育む存在であることを求めているからでしょう。
事例指導者の立場であることをはき違えてしまうと、
事例相談者よりも、常に上位に立つような、どこか見下した視点や、
断定的な書きぶりになり、その段階で評価は著しく損なわれる可能性もあるのかもしれません。
この試験は問いかけに対する単なる応答ではなく、
キャリア形成の対人支援に必要な思考の深さ、相手への尊重、
そして多面的な視野を通じて、何を見て、どう考え、どのように伝えるのか…
という一連のプロセスを包括的に評価しようとする試みだと思うのです。
これはまさにキャリア形成支援の実務における現場力そのものを問うているとも言えます。
一例ですが、
直近での1級論述過去問での問1では、相談者Aの訴えに関して、
事例相談者Bがどのように捉えたのかを起点にして、
Bの思考過程を丁寧に読み取ることが求められるといった考え方は、
このブログで適宜メッセージしてきました。
こうしたところに事例指導者としての思考過程を経て深めていくことが、
初めて、指導スキルに昇華していくようにも思います。
このとき、事例相談者Bの見立てを単に鵜呑みにしたり、
逆に、全否定して自分の見解を押し通したりする姿勢があるとすれば、
それは育成的視点の欠如に作用するのかもしれません。
尊重と洞察・検討のバランスが指導的関与の第一歩なのだと実感します。
引き続き記すと、
問2では、事例相談者Bのキャリアコンサルタントとしての見立てを踏まえたうえで、
事例指導者として、新たな視点や補完的な見立てを組み立てる思考が求められると思います。
単に事例指導者視点の代替的な解決策を土台にして相談者Aが取り組むべきことを提示するだけでなく、
事例相談者Bの視点をできる限り活かしながら、より深い理解や新たな可能性を拓くような思考の広がりが期待されるはず。
相談者Aが主体的に取り組むことができる、現実的かつ段階的なアプローチを、
相互の見立てと矛盾しない形で具体的に示すことが、より良い支援へとつながっていくのでしょう。
このように、問1と問2の考え方を表現することでも、さまざまな刺激が生まれてきます。
日頃の訓練からそうしたことを考え抜いていくことは本当に重要なことで、
付け焼き刃的な感覚で望むことは進化していく機会を逃すことにもなると感じます。
現実に、上記のように試験の趣旨等を多角的に読み解くことなく、
正解が知りたい、模範解答が欲しい、添削して欲しい、
といった要望に応えているかのように、
書き方のノウハウやフォーマットを提供する場や、
指南書的なものが出回っている実態があると伺います。
こうした情報を頼りにすることで一定の安心感を得られることもあるのかもしれません。
果たしてこの安心は対人支援の現場で役立つ学びなのだろうか…
と疑問を抱くことがあります。
人のキャリア形成支援者であることの本質とは、
「問いを持ち続けること」「自分自身の枠を点検し続けること」だと考えます。
試験である以上、ある程度の形式や論理的な構成は求められるのかもしれませんが、
現場で支援を実践するうえで大切なのは、そうした形式の裏側にある
「相手の尊厳をどう見つめ、どのように共に成長を描けるか」であるはずです。
1級の技能検定試験は、
そうした指導者としてのあり方を見つめ直す絶好の機会でもあり、
例えば、論述の書き方を学ぶのではなく、
自身が「どう考え、どう在るか」を深く問う時間として捉え直してみることも面白いものです。
形式にとらわれた解答ではなく、自身の中にある支援者としての哲学を、
文字化する機会として、共にこの論述試験と向き合い味わっていきたいものです。