昨日、大阪にて「1級キャリアコンサルティング技能検定」試験対策講座を開催いたしました。

予定通り2025年度の学びをスタートできましたのは、

ご参加いただいた受講者の皆様、

そして多くの関係者の皆様のあたたかなご支援とご協力のおかげです。

年度毎にアップデートされていく講義内容等には、

私自身の学びに加え、ご指導くださる多くの先生方の支えによって形づくられています。

 

これから年内12月に実施される予定の第15回1級実技論述試験、

そして来年2月の1級実技面接試験、その翌月3月、皆様の笑顔が咲くその日まで、

精一杯、受検サポートに取り組んでまいります。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、昨日の講座の中でも少し触れたことなのですが、

例年1級キャリアコンサルティング技能検定試験に皆様と共に挑む過程のなかで、

この実技試験のあり方について、実践的な視点に置き換えながら考えることがあります。

 

ご存じの通り、実技試験は「論述」と「面接」に分かれており、

いずれも高い洞察力と実践的等の力量が問われます。

そして、「論述」「面接」の両方の評価が合格基準を超えて、

はじめて「1級実技試験合格」となる。

ここがこの技能検定試験のひとつの大きな特徴でもあります。

 

いうまでもなく、

学科試験と実技試験は制度上明確に分かれており、

例えば学科試験だけ合格した場合、合格年を含め3年間はその合格が有効とされています。

 

一方で、実技試験内の「論述試験」と「面接試験」は、

それぞれ成績結果が個別記載で出るものの、

合格・不合格はあくまでセットで判断されます。

つまり、論述が合格に達していても、

面接が基準を満たさなければ不合格となる…そしてその逆もまた然りです。

※これがなかなかうまくいかないものです…

と多くの受検者様が苦悩するところなのです。

 

このように形式上は「分かれている」ようで、

実は「一体で評価・測定される」という設計になっている以上、

論述と面接の評価が独立しているとは思えないということが本日の記事内容になります。

 

仮に、論述試験と面接試験が完全に独立していて、両者に相補的な関係がないとすれば、
面接試験の際に、試験官の先生方が論述の結果をまったく知らないという形になります。
その場合、先入観が入らず、かえって公平な評価ができるのではないか、という気もします。

 

ただ、以前から公表されている指導レベルキャリアコンサルタントの試験制度設計に関する資料では、

「論述で測定する項目」「面接で測定する項目」に加え、

「両方から測定する項目」を読み取ることができます。

※参考資料:厚生労働省委託『キャリア・コンサルティング研究会報告書』(中央職業能力開発協会、平成21年)https://www.career-kentei.org/wordpress/wp-content/uploads/2019/12/20houkokusyo.pdf

 

これを読んだとき私の中で実技としての緩やかな納得感と安堵感がありました。

つまり試験制度として指導レベルキャリアコンサルタントに必要な実践力を、

様々な角度から「すり合わせ」や「補完」を意図的に組み込んだ設計だと感じたものです。

試験に向き合う時の準備を含め、その本気度と本物度が自身の中でつながる試験だと思うのです。

合格が学びの通過点でありながらも、合格に向けている勉強の役立ち方が、

現場力に直結する資格だと考えました。

 

試験の制度設計の背景にあたる

『キャリア・コンサルティング研究会報告書』(中央職業能力開発協会、平成21年)では、

実技試験における評価設計がいかに多面的・総合的な視点に基づいているかがよくわかります。

報告書では「学科試験は知識を、実技試験は技能を評価する」と明記されており、

その技能を測る手段として、論述・ロールプレイ・口頭試問の複合的な構成が意図されているとされています。

ここでいう技能とは、単に場面対応のうまさだけではなく、理論を基盤とした実践力や、

支援の意図をもった関わりの裏づけに至るまでを含む、とても厚みのあるものです。

 

論述試験では、事例指導の相談場面を客観的にとらえ、

構造的に整理し、根拠をもって展開を考察する力が問われます。

そして面接試験では、目の前の事例相談者とのリアルなやりとりを通じて、

関係構築力、意図的な働きかけ、気づきを促す力が見られます。

 

重要なのは、報告書においても、

これらは「多面的に評価されるべき一つの技能」であり、

それぞれが補完しあう役割を担っているとされている点です。

 

つまり、制度設計上も

「論述と面接は独立した技能評価」ではなく、

「相補的に構成された一体の技能評価」として設計されていることが明示されているのです。

 

また、論述と面接で共通する評価項目が存在することからも、

論述の内容が面接でどう体現されているか、

あるいは面接での応答に論述の視点がどう活かされているか、

といった観点で試験官が照合しながら評価している可能性は高いと考えられます。

※あくまで私の個人的な見解です。

実際、限られた時間でその人の力量を総合的に判断するには、こうした事前情報の活用は不可欠でしょう。

 

仮に、論述と面接が本当に独立して評価されているならば、

学科試験のようにそれぞれを単独で合否判定してもよいと思うのです。

しかしながら、

現行制度では「実技試験」としてひとまとまりで合格・不合格が決まります。

ここにこそ、「キャリアコンサルタントとしての総合力」を問うという、

キャリア形成支援者の実践力を問う検定試験ならではの思想が込められているように思います。

 

あくまで一個人の見解ではありますが、こうした観点から試験に臨むことは、

単なる受検対策的なテクニックやハウツーを超え、

自らの現場支援実践を見直す貴重な機会にもつながるのではないかと考えます。

 

技能検定試験が目指すところを感じ取りながら、

自身の専門性をどのように統合し、成熟させていくか…

そのプロセスを大切にしたいものですね。