本日は大阪で1級キャリアコンサルティング技能検定対策講座を開催します。

2025年度での講座開催初日となります。

ご参加いただく皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

本日の講義内容にも取り入れるポイントの一つなのですが、

キャリア形成支援の現場において、事例指導は専門性の向上に欠かせない重要なプロセスとなります。

これは1級技能検定のテーマにもなっています。

特に事例指導においては「文脈の理解」と「相互の指導関係性」が大きな柱となります。

ここでは、1級論述試験と面接試験に分け、それぞれのポイントを整理してみます。

 

まず、論述試験では、文脈理解を支える事例指導を意識することができると思います。

 

論述試験では、事例相談者が事例指導を受けるためにまとめた事例記録をもとに、

事例指導者(受検者)が支援的にかかわるイメージを持ちます。

 

この場面で求められることの一つに、

表面に現れている相談者の言動や状況を鵜呑みにせず、

その背後にある文脈や背景を深く読み取ろうとする姿勢を意識したいところです。

 

例えば、相談者が転職に悩んでいるという一見シンプルな主訴があったとします。

 

この言葉の背後には「家族の事情」「職場との価値観のずれ」「将来への不安」など、

複数の文脈が交差している可能性があります。

事例指導者は、事例相談者がその背景に気づき、言葉にしていく過程を事例記録から丁寧に捉え(見守り)、

必要に応じて有効だと思える問いかけやフィードバックを想像するのです。

 

事例指導者が一方的に「答え」を示す・与えるのではなく、

事例相談者自身が相談者との面談を振り返り、発見し、考察するプロセスを尊重することです。

※論述でもイメージできるはずです。

 

この発言の背景には、何がありそうか、この時、相談者の表情や語調にどんな変化があったと感じ得ていそうか?

といった事例相談者への問いかけをもイメージして、事例相談者と自身の思考を深める関わりを意識するのです。

つまり、事例指導における文脈理解とは、

「目の前の出来事をどのような意味の連なりの中で捉えるか」

という視点を、事例相談者と共に持ち、言語化していくプロセスになるのだと思います。

 

面接試験においては、指導関係のための信頼関係を築く対話姿勢が重要です。

事例相談者との「本当の関係性」が何よりも重視されるはず。

 

事例指導者としての知識や経験を活かしつつも、それを一方的に伝えるのではなく、

対話を通じて相手の考えや感情を尊重し、信頼関係を築いていくことが求められると考えます。

 

重要になるのが「ペーシング(pacing)」の意識。

ペーシングとは、相手の話すペース、声のトーン、言葉遣い、表情、感情の熱量などに自分を合わせることを指します。

 

これにより、相手は「理解されている」「受け入れられている」と感じやすくなり、

安心して自分の考えを表現できるようになるでしょう。

 

例えば、事例相談者が言葉に詰まりながらも真剣に話しているとき、

事例指導者が落ち着いたトーンでゆっくり応答し、相手の間を大切にすることで、

対話のリズムが整い、より深い話へとつながる可能性が高まります。

 

また、事例指導者は「教える立場」ではなく、

「共に学ぶ立場」であるという意識を持つことも大切です。

「私の経験ではこうでした」と語るのではなく、

「あなたはこの状況をどう捉えましたか?」

と問いかけるなど、専門家同士としての同じステージに立つ対話を心がけます。

 

相手を尊重した関係性は、事例相談者がより自由に、

かつ深く、相談者の理解を深めていく原動力となるはず。

 

文脈理解と関係性構築の双方に共通するのは、

「事例相談者と事例指導者が、専門家同士として向き合う」

という基本的な姿勢です。

これは単に専門用語を使って議論するという意味ではありません。

 

実践の中で得られた経験や、相談者へのまなざしを言葉にする力、

そしてそれを対話によって深め合える関係性があるかどうかが問われるのだと感じます。

事例指導者の立場であっても、

「わからないことがある」「見落としている可能性がある」

と自ら認め、柔軟に相手の視点を受け取ることが、

真の専門性を育てる姿勢といえるのではないかと考えます。

 

事例指導においては、

「見えている現象の奥にあるものに目を向ける力」と、

「相手と信頼を築きながら共に考えていく姿勢」の両方が求められます。

 

論述では言語化と考察、面接では態度と関係性。

そのどちらもが、最終的に相談者にとってよりよい支援を実現するための基盤となる。

 

事例指導を通して、相談者理解の解像度が高まり、

同時に専門家としてのあり方も磨かれていきます。

そのプロセスそのものが、支援の質を深める大切な学びといえるのではないでしょうか。

そうしたことを4月のプログラムで感じ、考えていきたいと思っています。

 

昨年とはまた異なる角度からの考察を深めていく場になるのではないかと考えました。