1級キャリアコンサルティング技能検定の実技面接試験において、

(事例相談者役の方から自分から言うことが全て反発された…)

とか、

(なにをいっても黙ったままで非協力的なムードだった…)

といった体験を言葉にしているシーンに出会うことがあります。

 

この現象について

(相手が悪かったよね)

(変なひとに会うのは運もあるかも)

(そういう事例相談者役の設定だったのかもよ)

といった解釈をしていることもあるかもしれません。

 

実はこうしたところに1級の実技のポイントが隠れていることも大いにあり得ると思います。

 

上記のような現象は、

「事例相談者役が悪かった」とか「運が悪かった」という

思い込み等(これを体験した本人は決して思い込みなどと思っていない)によって解釈されがちです。

 

(本当にひどい事例相談者だったんです!)

というような声が聞こえてきそうです。

 

このようなことは実際、心理支援者同士での訓練で多々起こり得ることです。

 

つまり、事例指導者側(受検者)の心理的反応や相互作用が大きな要因だと想定できます。

本来、こうした心理的な動きに気づくことが、

より効果的な面接やカウンセリング技術、

事例指導を身につけるための重要なステップになるのだと実感しています。

 

事例相談者役の人が、反発的な態度や非協力的な態度を示す場合、

事例指導者の人が、無意識のうちにその態度を「相手が悪い」「相談者役が意図的にそうしている」と解釈してしまうことがあるとしましょう。

 

この場合、指導者自身の内面的な感情や思考、

経験を他者に押し付ける心理的メカニズムがあるとされています。

 

例えば、事例指導者が自身の不安やイライラを事例相談者に投影してしまうことで、

「相手が反発している」「非協力的だ」と感じることがあるのです。

こうして実際には相手の態度が必ずしもそのまま自分の感情に直結しているわけではなく、事例指導者の認識や解釈が影響している可能性があると考えることがあります。

 

また、事例指導者が事例相談者の態度に敏感に反応してしまい、

その反応自体を自ら強化することもあります。

 

例えば、事例相談者が黙り込んで非協力的に見えると、

事例指導者は「自分がうまくやれていないのか」と感じたりして、

その思い込みがさらなる自己否定的な反応を引き起こすこともあるかもしれません。

 

結果、事例指導者が必要以上に緊張し、

次第に自分の態度も堅くなり、ぎこちなくなる。

そして事例指導の面接ロールプレイのダイナミクスが悪化することもあるのだと考えています。

 

練習の場から意識して欲しいことですが、

ロールプレイの場では、事例相談者と事例指導者の間で一種の相互作用が展開されます。

これは多くの方が体験しているはず。

 

事例相談者が非協力的であったり反発的だった場合、

その態度は事例指導者に対して圧力や挑戦を与えることになるのかもしれません。

 

要するに事例指導者がその反応にどう対処するかも重要だと感じます。

 

もし事例指導者が「うまくいかない」と感じると、次第に自信を失い、

さらに対応が硬くなり、どこか頼りなさを感じる可能性もあるでしょう。

 

こうした相互作用が続くと、双方の思い込みや誤解が強化され、

事例指導の面接自体が難しくなる場合もあります。

 

 

事例相談者役の方の反応に対して、

「相手が悪い」「設定のせいだ」といった解釈を持つことは、

事例指導者(受検者の方)がその現象について自分なりの納得感を得るための「思い込みの強化」のプロセスなのかもしれません。

思い込みに基づく解釈は、現実の自己の課題を見逃す原因になることがあり、

自己肯定感を高めたり、現実逃避の手段として機能することも考えられます。

 

事例指導者が相手の態度を「所詮ロールプレイだし設定だから」として理解してしまったとなると、

その後の対応やアプローチに学びがなくなってしまうかもしれませんね。

 

事例指導者として、1級受検者として、

事例相談者の方の価値観との向き合い方を工夫していく必要があると思っています。

 

事例相談者のケース理解やその対応には、その人の価値観や経験が大きく影響します。

事例指導者が異なる視点を提示する際、それが単なる指摘や矯正にならず、

事例相談者自身が「どう考え、どう意味づけるのか」を探れるように促すことが求められるはず。

 

また、事例指導者となる受検者の方の自身の自己認識も重要です。

事例指導者がどのように事例指導セッションを進めるかには、

自分自身の経験やスタイルが反映されます。

しかし、無意識のうちに「自分のやり方が正しい」と考えたり、

事例相談者に対して過度に指導的になってしまうこともあります。

それは前述してきた構造等が積み重ねられて、ネガティブに表出しているのかもしれません。

自己の影響を意識し、個々の事例相談者に適した関わり方を模索する姿勢が必要だと思います。

 

こうした訓練を積み重ねていくこと自体が、

1級キャリアコンサルティング技能士としての自己体験にもなっていくのではないかと考えています。