1級キャリアコンサルティング技能検定試験の結果を受け、

例年のように興味深いお話しが飛び込んできます。

昨日の公開セッションのイベントの中でも、

各グループワークで下記の点につながるお話しが

あちらこちらで出てきたこともあるのではないでしょうか。

 

たとえば

「1級キャリアコンサルティング技能検定試験に1回目の受検で受かった」

という結果。

今年も私が知っているだけで数件このお話しをお聞きしますし、

ご縁のある方には「おめでとうございます!」とメッセージをしています。

 

どんな資格試験の話題でも「1回で合格」というのは飛びつきやすい情報に感じます。

 

ただ、少しがっかりすることでもあるのですが、

その周囲の方々が

「〇〇さんがこうやって1回で受かったって!」

という情報を伝播して広めているという現象もあるのが実態です。

 

(本質的に違う!!)

と叫びたいところでもありますが、

私個人的には何気にモヤモヤすることがあります…笑

 

ここまで「1回で受かった」という表現にやや的を当てましたが、

この記事のテーマは合格までの回数のお話しではありません。

 

「準備など何もしないで受かったよ!」

「特に普段通りやっただけだよ。事例相談者には強気でいって大丈夫だよ!」

「ダメなものはダメって言ってやんなきゃ!、指導者なんだから!!」

といった類の情報が飛び交うことです。

 

実に無責任だと感じますし、これは残念なお話し。

 

本当にそれで指導者という役割でよいのでしょうか。

1級に受かったということは、その人自身がスタート地点に立ったということで、

これからもっと勉強をしていくのでは??

と言いたくもなる。

 

特に考えることとして、

「実践の場」と「試験の場」のギャップによるショックを受けている人が多いということです。

 

キャリア形成支援者として

重要なことを実践できていないと思われる人、意識していないように感じる人が、

1級試験において「合格」だったとします。

※架空のお話しですので、仮の話題として読んでください。

 

実際に毎年のようにこうした現象があるとお聞きすることがありますが、

本当かな…とも個人的には感じています。

私の周りにはそんなことを豪語する人がいないので、

ひと先ず架空のネタとしてお聞きしてます。

 

目の前の人を尊重することの大切さを学んできた人にとって、

仮に「人への配慮のない態度の人が1級の資格を取ってしまう」

という現象があったとしましょう。

まるでそのような態度が肯定されたかのようにみえてしまっていて、

それを聞いた周囲の方が何かショックを受ける…なんてことがあったとします。

こういう情報等にキャリアコンサルタントが振り回されたり揺さぶられること自体、

なんだかもったいない感じです。

 

当然に実践と現場というものは「人への影響や関わり方」をリアルに問われます。

ですから、検定試験の求めとズレが生じる点もあるのはわかります。

 

一方、そもそも人に対して繊細で敏感な配慮ができない、しようと努力しない、

または、その態度がきつくてもいい、というような些か独善的な人が、

仮に資格試験に合格したからといって、

「決してその態度が評価されたわけではないでしょ。」

というような説明が自己の中でなされ、

軽くスルーできることを期待したいところです。

 

事例指導者の振る舞いが最初から指摘的、指示的、教育管理の強いタイプの場合、

事例相談者(主体的学習者)のモチベーションを低下させることが考えられます。

人の成長を阻害する可能性があり指導者として適切とは言えません。

 

「自分は普段通りやって〇回で合格した」という言葉、

確かに時々聞きます。

この発言は個人の成功体験に過ぎず、

他者への指導方法として適切であるとは限りません。

むしろ、この発言は、

他者の努力や苦労を軽視し不快感を与える可能性すらあります。

 

重要なのは、資格試験の成功(合格)を過大評価せずに、

あくまで対人援助職としての振る舞いを客観的に評価することができる人が、

キャリア形成支援者として社会に有用な人財ではないかと考えます。

 

私たちキャリア形成支援者は資格や社会的な肩書等に惑わされず、

その人固有の人間性や言動をよく観察し、

相手の価値観を理解しようとして、

必要に応じて自身の価値観にも基づいて判断することがとても大切なことがあります。

 

1級でも2級でもキャリアコンサルティング技能検定試験というものは、

キャリアコンサルタントとしてのあり方、

その人間性の総合的な価値を全て測ることができません。

 

事例指導者の振る舞いというものは、

目の前の事例相談者という個別の学習者の成長に

どのような影響を与えるかを具体的に説明できることが重要です。

 

1級合格を得た経験は確かに参考にはなるかもしれませんが、

その話しを鵜呑みにせず、

自分自身の考えを持つことの重要性を磨きたいところです。

 

人のキャリア形成支援に携わる者として、

「人の行動や考えを尊重していきたい」という考えは決して間違っていませんし、

資格試験に挑戦する際でも、そうしたあり方を先ず大切にしてほしいものです。

 

1級の合格というものはその合格者の人格や指導力を保証するものではない。

それを私たちがわかっていなければ、

この業界での自己研鑽という重要なキーワードの意義がズレるように思います。