前回に引き続き、

第14回1級キャリアコンサルティング技能検定実技論述試験の問題を活用して、

事例に登場している相談者A自身が問題を解決するために取り組むべきことを考えてみたいと思います。

論述試験問題の「問2」に該当します。

 

なお、論述試験問題では、

(あなたが考える見立てに基づき)という文章が示されています。

 

ここで指す(あなた)とは事例指導者の役割である(あなた「受検者」)となります。

ですから(あなた)がキャリアコンサルタントになるのではなく、

事例指導の実技として事例検討会にならないように考えてみたいところです。

相談者Aの担当者は事例相談者B(相談者Aにとってのキャリアコンサルタント)である。

こうして考えてみることで事例指導の実践における場面がイメージしやすいと思います。

 

前回の記事にも何気なく上記につながる視点を記しています。

 

(なぜ複雑に考える(書いている)のだろう??)

と感じた方がもしいらっしゃったら、

こうした考えもあるのだと、異なる視点からみていただけたらと思います。

 

事例指導者の役割ではなく、

いつの間にか相談者Aを自分自身が担当しているかのような錯覚に陥ることがあります。

自分が相談者Aの担当キャリアコンサルタントになっていることがあるのです。

 

ひとの相談というものは、仮に一見単純にみえたとしても、

時期尚早にわかったつもりになってしまうことはよくないと思います。

相談するひとの立場で感じられると、

一大事だったり複雑でとても難しいことが多いものです。

わかるようでなかなかわかることができない、

だからこそ支援する側は、分かろうとする態度や姿勢が一貫して重要なのだと思います。

そして事例指導やスーパービジョンともなると、

ひと(事例相談者)のケースを事例指導者側の勝手な解釈で見立てるということはゆるされません。

 

事例指導者にとって

(あなたが考える見立てに基づき)

と問われれば、

事例相談者Bの見立てをどのように理解するのか…という視点役割を含めるのが実際です。

先ずそれを踏まえ、事例指導者として、

事例相談者Bに対する育成的な視点を想定しながら、

相談者Aの問題解決のため相談者A自身が何に取り組むべきか…

これを考えていく必要があるのです。

事例検討を実施する場合、その目的等から事例(ケース内容)に注目します。

一方、事例指導では事例相談者に注目することが最も重要です。

 

さらに、この問2で考えてみることには、

相談者Aが一人だけで何かに取り組むわけではなく、

支援者である事例相談者Bの側面的サポートがあるからこそ、

相談者Aが問題解決に向け、適切な行動変容を起こせるのだと思います。

こうした複眼的な視点をもって物事を考えていく過程が、

事例指導の実践に重要な要点となるのだと考えています。

 

1級は、受検者の立場が事例指導者となり、

事例指導の場で、事例指導者(受検者)に相談をしているひとが事例相談者B(相談者Aを担当したキャリアコンサルタント)となります。

相談者Aが(あなた)に相談しているわけではありません。

問1〜問5まで全ての問いについて、この前提で検討してくことが重要です。

 

論述試験も実技であり、また、事例指導の場面において、

受検者が事例指導者としてのキャリア形成支援スキル、指導スキル、コーディネートスキル等を指導レベルキャリアコンサルタントとして備えているのか、

その水準を備える可能性が高いのか、

人間観や思考行動特性等を踏まえ測定しているはず。

ぜひ、実践的な事例指導の場面を想定して論述を考えてみてほしいと思います。

 

一例ですが、

この事例記録に記されている【事例相談者Bの所感】という項目に、

相談者Aが抱えている問題として、

(自分の強みを整理しきれていない、自己の経験の整理が不十分であると感じた)

とキャリアコンサルタント視点で把握されていることが描かれています。

これは事例相談者Bの経験からしても、

採用面接で失敗するケースから学んでいることのようです。

相談者Aの自己PRに対する強い苦手意識に焦点を当て、

話を丁寧に聴きながら家族への想いや置かれている状況を整理し、関係構築に努めた。

面接の失敗も重なり更に自信を失っていて、再就職への不安が強くなっていることから、

事例相談者Bは、(実は、私も苦手で就活には苦労した)と自己開示することで共感的にかかわったことも示しています。

 

要するに、事例相談者Bは、この辺りに相談者A自身の問題があると捉え、

(〇〇してみませんか?)と提案しているわけですね。

先ずは、それが「相談者A自身が問題を解決するために取り組むべきこと」の基礎になるのだと見立てることができます。

一方、それでは事例相談者Bがやろうとしたことを推しているだけになってしまいます。

せっかく事例相談者Bが事例指導を受けに来ているのに、単にやり方を肯定されただけでは残念になってしまうかも。

ということで、

上記の基礎に対し、より善き支援のあり方をプラスαとして考えてみる、

つまり何か改善点がないだろうかと一緒に考えてみることが実践だと思うのです。

 

例えば、

自己犠牲(自分の仕事を後回しにする、帰りが遅くなる等)を払って業務に向き合ってきたときの自分をどのように感じているのか、

そのとき自分で何を優先してきたのか、そんなところを自分で意味付けてみることが取り組むことにもなるかもしれません。

そしてパートナーから言われたこと、結果退職まで決意したことについて、

自分の中でその時々にどんな感情がわき起こってきたのか、

その感情には、どんな自分の期待が隠れていたのか、そうしたことを自己内で振り返ってみることも重要でしょう。

そんな取り組みが、自己の大切にしていたものやあり方につながる糸口を見つける手立てになったのかもしれません。

 

事例相談者Bが(〇〇してみませんか?)と提案したことが間違えではなく、

その内容を事例指導者として言葉にして表現できることで、

事例相談者Bへのフィードバックにつながるはずです。

 

「相談者A自身が問題を解決するために取り組むべきこと」

を考えるときでも、こうした思考過程を踏んでいくことで、

立体的な内容が浮かんでくるのだと実感しています。

 

併せて

「相談者A自身が問題を解決するために取り組むべきこと」には、

様々な境遇の持ち主等との接点を設け、

ライフラインチャートなどを活用した語り合いの場(ワークショップ等)を活かすこともできるでしょうし、

これからの30年間程度のイベント事を家族と一緒に話し合ってみることもよいでしょう。

 

また、自分の経験価値等が労働市場でどのようにみられていくのかという客観的な視点や、

家計をどのように設計していきたいかなどを改めてイメージできる場面をつくることも興味深いことかもしれません。

第14回の問題を確認してみると、

こうしたところは「問3」で記述できることもあるので、

それは事例指導者として事例相談者Bへの支援を整理して考えてみることができるといいですね。

 

第14回の論述問題「問3」で、

「相談者A自身が自分の問題を解決するために活用可能な社会的ネットワーク」

と質問表現が変化したので、

第13回過去問等を使った練習で重ねてきたことから考え方等を柔軟に変化させ、

「問2」で記述できることと、

「問3」で記述できることを明確に分けて表現していくことも大切だと思います。

 

次回の記事では「問3」について考えてみたいと思います。