今回の記事では、
事例指導やスーパービジョンの場において、
2人の間でケース記録をどのように読みとるかというところにフォーカスしてみます。
例えば、事例指導の初回面接で、
事例相談者が相談したいケースをまとめ事例指導者に学習のための記録として提出してきたとき、
読者の皆様が事例指導者なら以下のどちらの態度を取るでしょうか?
よろしければその理由も含めて考えてみてください。
①事例相談者に対してケースの説明を促す際、先ず事例指導者からケース要点を簡単に読み上げ、その後、事例相談者にケースの詳細を説明してもらう。
②事例相談者に、ケースと自身の考えや面談支援で対応したことなど、その全てをある程度自由に説明してもらう。
これを
(どちらでもいいのでは?)
(やりたいようにやれば?)
(ひとによって違っていていいんじゃないの?)
といった考えは私自身、初学者の頃に思っていたことです。
1級キャリアコンサルティング技能検定実技面接試験においても、
最初にケースの説明を促すことになっていますが、
上記の通り、大凡二つのアプローチに分かれる感じがします。
※事例指導者が預かったケースを一方的に黙読しているなんてシーンもありますが…。
その間、なんともいえない空気が生成されていること等を俯瞰してみるとなにか気づきがあると思います。
私は普段から上記②の態度をとります。
ひとが自分で注意したことを言葉にして語ることには、
そのひとにとっての自己洞察と反省的振り返りの効果を得られることや、
今ここでの自らの感じ方や解釈、その対応の詳細を思い出すこと、
自分の考えや行動を最初から自由に説明することでの批判的思考の活性化など、
様々な学習ポイントがあるといわれます。
この作用を期待するのであれば、
可能な限り余計な影響をこちらから与えない方がよいのです。
つまり、事例指導者が事例相談者のケース記録をほんの少し声に出しても、
相手へ伝わる事例指導者のそのときの声やトーン、
響きや読む箇所などに、事例相談者が余計な影響を受けることもあるのです。
特に初回の場では、事例相談者が自分の視点や感情を自由に表現できることが重要です。
事例相談者がどのようにケースを捉えていて、
どのように支援を試みたのか…
これらを事例相談者の視点からある程度自由に説明できるからこそ、
事例指導者は事例相談者の思考過程や感情的な反応を深く理解することができるのだと思います。
このプロセスによって、
事例相談者自身がケースの課題をどのように解釈し、
どのようにアプローチしたのかを振り返る手助けにもなるのでしょう。
事例指導者を目指すひとがこの相互作用による効果を体験したことがないのは勿体無いことです。
ぜひロールプレイ訓練の場でトライして欲しいものですね。
事例指導では、
事例指導者がケースの要点を先に読み上げることが、
場合によっては事例相談者の自己理解を制限してしまう可能性もあります。
事例指導者からケースの受け止めに関して言語的情報等を先に与えるということは、
事例相談者が自分の解釈を行う前に事例指導者の言葉や表情に影響されることがあるため、
事例相談者の自由な思考を促すことが出来難くなると考えます。
事例指導の目的は、単に問題や課題解決だけでなく、
事例相談者が自己洞察を深め成長するための場であるため自由な表現を促すことが効果的なのです。
事例相談者の立場で事例指導におけるアプローチの違いを色々考えてみたいものですね。
キャリアコンサルタントの実践力向上のためにも、より効果的な事例指導を研究し続けていきたいものです。