1級キャリアコンサルティング技能検定試験のホームページに公開されている
過去問の1級実技(面接)試験実施概要には、
「事例相談者との間に教育指導関係を築き」と記されています。
これは例年、同じように示されている記述内容なので、
恐らく第14回も同様ではないかと想像しています。
興味深いことに「教育指導関係」という表現の意味を、
ぞれぞれの方がどのように解釈しているのか、
この受け止め方や読み取り方、認識のあり方が少し異なってこともあるようです。
今回はひとつの視点から、事例指導における「教育指導関係を築く」ことについて、
記事にしてみたいと思います。
初回の事例指導の場面として、「教育指導関係を築く」ことに注力する際、
事例相談者との信頼関係を最初から構築しようと努力することが必要かもしれません。
特に試験では、ロールプレイ30分間という限られた時間と、
事例相談者の経歴・面談経験(例年であれば相談歴2年という前提)に基づき、
効率的かつ効果的に指導関係を確立するためのポイントを整理してみることは大事でしょう。
※事例相談者に会う前から憶測等で予め決めつけるということではありません。
事例指導者としての態度を可能な限り整えておくという意味合いです。
先ず、事例指導の面接場面では、
事例指導者が「指導」という言葉の響きに慎重さと敏感さを持つ必要があるように思います。
私は個人的に「指導」という言葉は、それほどよい響きには感じません。
事例指導者から、自己紹介等で、
(事例指導の担当をする〇〇です。)
(今日は事例指導を行います。)
みたいなことを宣言されても、なんとなく最初から圧を感じるかもしれません。
つまり「指導」といった言葉を発することで、
相手に何かしらの影響を与えることがあるかも…
ということを想定しておくこと、そのような思いやり等が大事です。
初対面という前提でオープンなコミュニケーションを促すためには、
最初に自身の諸活動上の役割紹介を一般的な用語でわかりやすく表現してみること、
事例相談者に対して負担をかけないようにサラッと簡潔に説明できることがポイントで、
こうした配慮が関係性の構築に意味があるように思います。
何はともあれ、事例相談者の不安や緊張を少しでも和らげることは、
信頼関係の土台になるのかもしれません。
注意したいことに、
事例指導者(受検者)が、初対面の気まずさや相手との壁を取り払うための手段として、
あえて余計なことを話すことがありますよね。
「場を和ませるための話題」のつもりかもしれませんが、
事例相談者は仕方なく話を合わせているだけ…なんていうことも少なくないと感じます。
無理に会話を振りすぎて、相手が不快に感じる場合もあるので注意が必要です。
事例相談者にとってこの面接での目的や期待すること、
これらを負荷がかからないように確認していくことも必要なことかもしれません。
事例相談者が抱えている具体的に問題だと思う点や課題に対する理解を共有し、
事例指導の面接をより有意義なものにするための共通認識を形成することは重要です。
話をきくとき、共感的な態度をとるだけではなく、
フィードバックのバランスが要点になることもあります。
事例相談者が持ち込んだケースに対し、共感的なアプローチを取りながらも、
具体的な困難、その悩みをしっかり聞き、事例相談者の立場での理解を示すことで、
事例相談者が安心し、自分の考えや感じていることを話しやすくなるといいですね。
だからこそ、問題に対する具体的なフィードバックを提供することにつながります。
なお、この段階で過度な批判・指摘や一方的な指導を避け、
課題を共に考える姿勢を持つことが何より大切なことではないかと考えます。
さらには、事例相談者の強みを活かすという視点が最も重要な要点になると思うのです。
ただし、強みといっても、事例相談者は決してそのように認識していないことも多いもの。
事例指導者から押し付けることのないように伝える工夫が必要です。
事例相談者の相談経験を踏まえ、
事例相談者が既に持っている強みや特徴、方針や戦略、
そのスキルに焦点を当て活用方法を共に考えます。
事例相談者が自信を持てる部分を緩やかながらも具体的に共通認識し、
それをケースにどのように反映させるか、
これを一緒に探っていくことが必要でしょう。
ポジティブな強化を行うことは、事例相談者のモチベーションを高め、
自己肯定感を促進するものです。
目標を設定する場合は、事例相談者へ具体的で明確な提案を心がけていくためにも、
実践的かつシンプルさがあることが効果的だと思います。
事例相談者が即実行できるアクションを明確に示すことです。
この時のポイントは、事例相談者に問いかけを行い、自分で考える力を引き出します。
問いかけを通じて、事例相談者が思考の幅を広げ、目指したい方向、
具体的な解決策を見つけられるように課題設定をサポートします。
事例指導のセッションの終わりに、
事例相談者に振り返りの時間を提供することも場合によっては必要です。
「今日の面接のここまでで、どこの部分が有益だったと感じますか?」
などの問いかけを通じ、事例相談者の自己評価を促進したいところです。
必要に応じ、今後のアクションプランを具体化し、
今後事例相談者が取り組むべき事項を確認することもあります。
教育指導関係を築くためには、
事例相談者の自主性・主体性を尊重しながら、実践的な面接を行うことが大事です。
事例相談者の成長を支援するために、
共感、フィードバック、そしてポジティブな強化を大切にしながら進めていきましょう。
ここまで記事にしていることは講座でいつもお伝えしていることでもあります。
頭で理解できても実際に実践することが容易ではないと感じられるかもしれません。
面接全体でうまく振る舞おうとするのではなく、
ほんのちょっとでも、半歩でも一歩でも、持続的に努力を重ねていくことで、
少しずつ善き体験として積み重ねの機会を得られます。
これがあるとき相互的な作用として、
効果的に実践に反映されるものになるのではないかと思うのです。
皆様の1級合格を心から応援しています。