1級キャリアコンサルティング技能検定試験合格には、
事例相談者役の方と事例指導の面接が成立する関係性の質が影響することがあると思います。
※事例相談者との関係性など影響ないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが…。
特に事例指導の実践演習を観察していると、事例指導者役と事例相談者役との間で、
しばしば「空中戦」とも表現できる非生産的な対立が生じることがあります。
この「空中戦」になる事態を心配し、
予めあれこれとやり方、対応方法を模索し練習しているケースもあります。
厳しい表現として、「一体誰をみているのか?」
と問われることにもなりかねません。
また、事例相談者の相談者に提供した面談のアプローチに対し、
事例指導者が一方的に異なるやり方(指導者として正しいと考えるやり方)を示唆するのはいかがなものでしょうか。
当然に対話が衝突的になり、結果、実質的な学びの場として機能しなくなる現象があり得るでしょう。
今回の記事では、この「空中戦」の問題を取り上げ、
事例指導において建設的な学びの場とはどんなあり方がありそうか、
また事例指導が効果的に機能する場合等を少し触れてみたいと思います。
そもそも「空中戦」という表現ですが、
事例指導者と事例相談者との間で問題解決に向けた有意義な対話がなく、
互いに主張をぶつけ合い、結局どちらも納得できないまま、
事例指導のセッションが終了するという、何とも嫌な感じの現象を指します。
事例指導者が事例相談者に対して、
「その方法はうまくいかない」「こうすべきだ」
という形で一方的に考え、それを指摘することが原因となり、
事例相談者は自己防衛的な態度を取ることになる…。
結果、両者は相互理解に至らず、対立的な空気が生まれる。
このような状況では、事例指導の面接効果が機能しなくなり、
事例相談者は自分のアプローチを深める機会を失い、
事例指導者は指導的な立場に偏りすぎて、
支援的な関係を築くことができなくなります。
事例相談者が持つカウンセリングアプローチに対する独自の視点や、
そのアプローチ自体が否定されると、
事例相談者の自信や成長が妨げられる可能性もあります。
事例指導という営みは単なる指導や指摘の場ではなく、
事例相談者がキャリアコンサルタントとして専門性を深めるための学習の過程です。
事例指導の本質は、事例相談者(キャリアコンサルタント)が、
自分自身の強みや限界を理解し、
相談者との関係性をより善くするために必要なスキルや考え等を身につけることにあります。
この過程では、事例相談者が持つ疑問や困難を共有し、
それを探求することで新たな視点を得ることが大切です。
事例指導者が一方的にアドバイスをするのではなく、
事例相談者がどのような思考プロセスを経てそのアプローチを選んだのかを理解し、
その背後にある意図や感情を掘り下げていく姿勢が必要です。
事例指導は、単なる方法論の指導に留まらず、
キャリアコンサルタントの個人的な成長を促すための「対話」の場であるべきなのです。
事例指導の面接は、単なる技術的な指導の場ではなく、
事例相談者が自己の成長を促進するための貴重な学びの場。
事例指導者が一方的に「正しいと考える方法」を押し付けるのではなく、
事例相談者の視点やアプローチを尊重し、
対話を通じて共に学んでいく姿勢が求められます。
「空中戦」をできるだけ避け、
建設的な事例指導の場を実現・提供するためには、
事例指導者自身の聴く力や問いかけの技術、共感的な態度が不可欠なのです。
そうした安全性の高い場だからこそ、事例相談者は、
自らのキャリアコンサルタントとしてのアプローチへの考えを深め、
より善き支援を相談者へ提供できるように考えられるのだと思います。