1級キャリアコンサルティング技能検定実技面接試験における「口頭試問」について、
ひとつの考えを記事にしたいと思います。
事例指導のロールプレイセッションが終わった後、改めてその振り返りを行うことは非常に大切です。
試験においても口頭試問という形で、
ロールプレイを振り返る時間が10分間あります。
この振り返りをどう行うかが、事例指導者、
及びキャリアコンサルタントとしての自己成長に大きく影響します。
ですから、その人(受検者)が持つ認識や思考行動特性をみるためにも、
口頭試問という形式で、ある意味測定されている要素もあると想像します。
この振り返りの際、自分のパフォーマンスやスキルの「出来不出来」にだけ注目してしまうことがよくあります。
もちろん、自分の技術を向上させることは大切ですが、事例相談者との相互作用を意識し、
自分が事例指導者としてどのようにその関係を築いていったのかに焦点を当てることもそれ以上に重要です。
今回は、事例指導の振り返りにおける「自己評価」の視点と「相互作用」の視点の違いについて、
どのように思考や行動が異なるのかを書いてみたいと思います。
振り返りの方法が事例指導者として、どのように成長に繋がるかを考えてみましょう。
最初に、振り返りをする際、事例指導者(受検者)が自己中心的になりがちな場合。
つまり、
「自分がうまくできたか、できなかったか」という評価に偏ってしまうことは、
セッションの過程を踏まえると自然な反応かもしれません。
一方で、ここだけに注目してしまうと、肝心の「事例相談者との関わり」が見過ごされがちになりそうです。
相互的な視点からの振り返りができる場合、
事例相談者とのやり取りにおける自分の行動が、
相手にどんな影響を与えたのかを具体的に振り返ることができると思います。
事例相談者がある場面でどのように感じ反応したのか、
その反応をどう受け止め、次にどう生かすか…といったことを考えることが、
事例指導の面接をさらに深めるために重要です。
そして自己中心的な振り返りになっている場合、
どうしても自分のパフォーマンスや言動に焦点が当たりがちです。
「もっとこうすればよかった」「この部分は失敗した」といった内省が主になってしまう。
しかしこの視点だけでは、事例相談者の考えや思い、反応に対する理解が浅くなってしまうかもしれません。
事例相談者の立場を踏まえ、相互での関係性を意識しながら考えることで、
事例相談者の反応や感情の変化に気づきやすくなり、その影響を深く考察することができます。
例えば、事例相談者が一瞬黙ったとき、
それは自分の質問が重すぎたのか、
あるいは何か深い気づきがあったのか。
その瞬間を事例指導者としてどのように受け止めるかによって振り返りの質が変わります。
最後に、
フィードバックなどを観察していて感じることですが、
振り返り作業において、自己を守るために「自分はうまくできた」という肯定的な評価を過度に求めてしまうこともあるようです。
自分の中で
自分の失敗を認めたくない…
自己評価が低くなるのが怖い…
といった感情が影響することがあるのだと感じます。
成長志向を持ち、
事例相談者との実際の相互作用を見直すことで、
失敗をも貴重な学びとして受け入れることができるようになりたいところ。
これは指導レベルキャリアコンサルタントとしての必要なスキルでもあり、レジリエントな耐性でもあるのかもしれません。
事例相談者との関わりの中で、自分のどんな言葉や態度が相手の支えになったかを振り返り、
その反応にどう対応すればさらに善き関係を築けるのかを考えることが成長に繋がると考えます。
自分の行動がどんな影響を与えたのかを理解することで、
次のセッションでより効果的に関わるためのヒントを得ることができるのです。
振り返りは自己成長のために欠かせないプロセス。
一方で、その方法にはいくつかのアプローチがあり、
自己中心的にならずに、相互作用に焦点を当てた振り返りがより豊かな学びに繋がるはずです。
もしロールプレイや口頭試問等の録音音源がある場合、
自学振り返りでそれを再生してみた際、
自己評価だけに終始してしまうことが確認できるようであれば、
少し立ち止まって、事例相談者との関わり方を意識してみると面白いと思います。
自分が指導者としてどんな影響を与えたのか、
相手がその影響をどう受け止めたのか、
そして気づいた学びをどう次に活かすのかを考えることでさらに成長できるはず。
事例指導もキャリアコンサルティングも、
単なる知識習得や技術向上だけでなく、
相手と信頼関係を築き上げていく唯一無二の過程でもあります。
この過程をより善くしていくための第一歩として、
適切な振り返り・口頭試問やフィードバックの訓練等を有意義に活用して欲しいと思っています。