1級キャリアコンサルティング技能検定の実技試験において、

事例指導者(受検者)は、ある意味、学術的な側面・視点に注意する必要もあるのだと思います。

 

面接試験時間が30分間であり、初対面での事例指導の面接という設定に基づき、

その時間、二人の関係性を通じ、両者にとって効果的な場となるアプローチが重要です。

 

(そりゃ当然だよ…)

といった声がきこえてきそうな感じですが、

そうした結果になっていないことも意外と多いのではないでしょうか。

 

最初に必須となるのは関係構築と信頼の確立だと考えます。

 

初対面での事例指導場面では、

最初の数分間から最後まで信頼関係を築くこと、維持することが重要です。

信頼がなければ、事例指導はオープンに自己開示されることが難しく、

事例指導の効果が減少します。

 

特に事例相談者が置かれている立場や状況を受け容れ、

その人が体験していることを理解しようと集中できることで、

事例相談者に安心感を与えることにつながりやすくなります。

 

事例相談者がどんなことを予め用意していたとしても、

事例指導者としての態度や姿勢に共感性があることを、

その現場で示すことができるのが人間観でもあり、そのスキルにもつながります。

 

先ずはとにかく話を聴くという姿勢を重視し、

無理に何か方向性や答えを出そうとせずに、相手の話の流れに耳を傾けましょう。

特に、事例相談者独自のサインや感情の変化、反応にも敏感であることが求められます。

 

なお、時間が無限にあるわけではなく、

30分間という枠組みが、事例相談者にとっても特別な場と器であること、

これを事例指導者は自覚し責任をもつ必要があります。

 

最初に事例相談者が抱えている悩みや問題等を簡潔に確認し優先順位を見立てます。

これにより、どの点に焦点を当てるべきかがある程度明確になります。

それは事例相談者が主体性をもって決められていることが重要でしょう。

特に、事例相談者が述べた重要な点(気にしている点等)を大切にして、

要点を絞って面接を行い、できる限り特別な時間の中で目的に向けて集中できるように心がけます。

 

ときには事例指導者として、

学術的なバックグラウンドに基づいたアプローチを示すことも効果的なことがあります。

※事例相談者との関係性等でそれぞれ異なります。

 

事例相談者が提供してくれたケースに対し、

適切な理論的フレームワークや、実証的なアプローチを使い、

フィードバックを行うことが、お互いに理解を促進し発展させていくこともあるのです。

※人によっては、そうしたアプローチを当然に嫌うひともいます。

…というよりは、そういう対話ができる関係性になっていないということでもあるのです。

 

ここでも注意したいことに、

事例指導者から何かの理路的なフレームに該当する理論名や方法論を一方的に説明し、

その考えの枠組みで進めることを押し付けることはよろしくないでしょう。

※これは訓練の中で意外と多く観察されるシーンでもあります。

 

理論としての解説ではなく、

事例相談者が抱えているケースを考えてみる際の、

現実、実践的な思考の整理のひとつとして活用できればいいのであり、

事例相談者が抱える問題等に関し、

心理学的な知見や理論、キャリア形成に基づく理論や考え方等を踏まえ、

極自然に実践に置き換えた場面を提供していくことが有益なこともあるのです。

 

理論名や学者名、方法論的なものを事例指導者が懸命に解説している時間、

これが無駄になることもあり、

結局、目の前の事例相談者をみていないことにもなり得ます。

 

そしてこの記事の最後に、

事例指導の目的を明確にすることも重要だという点を挙げます。

 

ただし、事例指導者が単に安心したいがために、

粗い解釈のまま時期尚早に面接目的を一致させようとすることは、

慎み深さに欠けているように感じられてしまうこともあるでしょう。

 

事例指導は、

相談に来てくれた事例相談者自身のスキルや理解等を深め成長を図るための支援です。

事例相談者の職業的な能力開発の場でもあり、

例えば、問題解決において、事例相談者の自己の思考プロセスを確認し、

その改善策を共に見つけることです。

要するに、単に結果を求めるのではなく、この過程での学びを重視するのです。

 

だからこそ、事例指導者からみた評価や結果ではないこと、

これを事例指導者自身が理解しておく必要があります。

 

上記に示したような心がけを実践するには、

具体的で建設的なフィードバックの方法をよく考えておく必要があります。

事例相談者へのフィードバックは、

ポジティブな点と改善点をバランスよく提供することが求められます。

フィードバックによって、事例相談者が受け取る印象が大きく変わるため、

丁寧且つ慎重に行うべきです。

 

お互いに認識・感覚的な測定が合うフィードバックが必要で、

なるべく抽象的な表現を避け、具体的な例や行動に焦点を当てると、

事例相談者も理解しやすくなります。

決して批判的でなく、成長を促すフィードバックを行うこと、

そして改善点を示すような際は「より効果的になりそうか」という視点で言葉をかけていくことが望ましいと思います。

 

以上、個人的な見解ではありますが、

事例指導者の面接(ロールプレイ等)での心がけに注目して考えてみました。

参考になる点がございましたら、実践的に取り入れながら考えてみてください。