事例指導者やスーパーバイザーの役割のひとがスキもなくユーモアも感じられないような場合、
面接場面等で気を遣ってしまうことがあります。
見方を変えて極端な表現をすると、
1級キャリアコンサルティング技能士という役割のひとは
「すごいひとでなければならない」
といった認識をしている場合、
1級面接試験のロールプレイでそのような雰囲気を出そうと、
長々と自己紹介していることもあるのかもしれません。
例えば、
私が事例指導者役を担っていて、
事例相談者から、
「今回、小林さんからの指導によって、
私の面談の癖みたいなところに気がつきました。
もっと早く小林さんに教えてもらえばよかったと思います。」
と言われたとしましょう。(架空のお話しです。)
一見よい関係性に思うこともあるかもしれません。
一方、私と事例相談者の関係性の中で無意識に上下関係性みたいなものが形成され、
事例相談者は私によく思われようと反応しているのかもしれない…
こんな見立てもできるかと思います。
こんな時、
事例指導者は自分に傲慢さがあったのではないか…
と気付くことが大事な気がします。
キャリアコンサルタント同士の関係性の中での力動を意識してみることです。
事例指導者と事例相談者の間では、
立場の違いや知識、経験のギャップ等から、
意図せず「上下関係」が形成されやすいこともあります。
事例相談者から上記のような発言が出た場合、
事例相談者が本当に気づきを得たのか、
あるいは、
事例指導者への迎合や期待される反応をしただけではないのか…
こうしたことを冷静にみることが求められます。
常に自問する姿勢を大切にしたいところ。
今の発言は、事例相談者の真の気づきなのか、
その場で「良い学習者」と見られたい意識からなのか、
無意識のうちに事例指導者が上下関係を強化するような態度を取っていなかっただろうか、
こんな自問です。
「もっと早く教えてもらえればよかった」
という事例相談者の言葉は感謝のように聞こえます。
事例指導者がそれをそのまま鵜呑みにして受け止めると、
事例指導の価値を過剰に評価し、
事例指導者が自己を正当化する要因になる可能性があります。
事例相談者が自らの力で気づきを得る機会を奪っていなかったか?
こんな風に考えてみることも大事ではないかと思います。
「そう感じてくれたことは嬉しいけれど…
実はあなた自身がその気づきを得る力を持っていたのかもしれませんね…?」
といったフィードバック等を通じ、
事例相談者の主体性を尊重する態度が求められます。
事例相談者が
「指導のおかげで気づきを得た」と過度に感じるのではなく、
事例相談者が「自分で考え、気づき、行動できた」という主体性を感じられるように促すことの方が大切なのです。
「どうしてそう感じたのか」
「その気づきはどんな場面で役立ちそうか」
という感じでしょうか。
事例指導者が無意識に「教える側」という権威的な態度を取ってしまうと、
事例相談者は正解を求め事例指導者に依存する可能性もあります。
「学習者中心」の環境づくりとして、
事例指導者として「教える」よりも、
「事例相談者が学べる環境を作る」ことを意識したい。
こうした環境があることで事例相談者が自由に気づき、
自身のプロセスを主体的にコントロールできることがあります。
「事例指導者の傲慢さ」を防ぐためには、
事例相談者の主体性を尊重し、
事例指導者の関わりが事例相談者に与える影響を謙虚かつ客観的に見つめる姿勢が必要です。
また、事例指導を「教える行為」ではなく、
「学びをサポートする行為」として位置づけることで、
事例相談者との関係性を柔軟且つ安定的に保つことができるのだと考えます。